俺の名は
まず、俺の(キャラの)名前がリーフレッドだと知って、ギルディートが驚いていた。
あとマリッサも驚いていた。・・・・・おい。
「そういえば、そんな名前だった気がするのよ。」
あのなぁ。
目を逸らすマリッサに、ここぞとばかりに呆れの視線を送る。
俺の名前がネームがリフレになってしまった原因は、間違いなくマリッサにあると思う。
ステータスを見ても、未だに名前の部分は“*****”と表示されているので、名前とネームはイコールではないっぽいのだが。
そういえば、コランダで大剣キャラの名前を知ってるのはマリッサだけかもしれない。
そのマリッサも忘れてるくらいだ。
俺に対する認識は、“リフレ”か、“イナゴの人”か、裏では“全裸の人”とか呼ばれているかもしれない。・・・鬱だ。
「で、実はリーフレッドもキャラ・・ハンドルネーム・・通じそうにないな。うーん、そう、あだ名みたいなもんなんだ。
そのせいでネームがちゃんと出ないのかもしれないな。」
2人が顔を見合わせた。なんだよ。
「じゃぁ、・・本名は何なのかしら。」
ああ、そうなるよね。
ゲームで本名を名乗るのはNGだったが、ここではいいだろう。
しかし、改めて名乗るのは照れるな。
「俺の名前は 松崎 良伸だ。
ただ、こちらの名前は普段、使ってないから、呼ばないで欲しい。」
釘を刺すのも忘れない。変なプレイヤーに、先に情報を掴まれたりするかもしれない。
それによって起こる弊害は未知数だが、情報は武器だ。
できるなら、隠しておいたほうがいい。
「マツザ・・・?」
「リフレはリフレでいいのよ。普段呼べないなら、覚える意味が無いわ。」
マリッサさんってもしかして脳筋・・・なんでもないです、はい。
うん、名乗ったらなんかすっきりしたな。
キャラ名っつっても、偽名みたいなもんだからな。
まぁ、2人は覚えられてないみたいだけど・・。
「で、どうして本名がネームに出ないんだ?」
キャラ名が表示される設定だからじゃないでしょうか。って通じないだろうしなぁ。
詳しく聞いてみると、どうもCCしている間は名前が[???]となっているらしい。
しかも、それにはサブのリーフレッドも含まれる。
と、いうのも、
「最初に会った時は、名無しかと思ったんだよ。」
とギルディートが発言したので、ほぼ間違いないと思う。
盗賊襲撃の時にも[???]になったし、鍛冶の時もそうだったみたいだ。
ニャンコロノフも同じように見えるらしいが、関連性は確信されているものの、同一人物だとは思われていないようだ。
ちゃんと検証してみたいが、CCについて話すのは完全にバレてからでいいと思う。
とにかく、この世界の人間はキャラ名=本名なので普通に表示されるが、俺はキャラ名≠本名なので、何らかのバグ的な事が起きてるんではなかろうか?というのが、俺の判断だ。
そのバグがどう作用して俺のネームがリフレになってしまったのか、というところまでは考察が至らなかったが。
「いや、そもそも、お前は世界からどう認識されてるんだ?」
???????
質問の意味がわからない。
なので、どう答えていいのかわからない。
どこが分からないのかさえ分からない数学の問題に頭を悩ませた事があったな。
分からないところを言えと言われても、もう全部分からないとしか言いようが無い。
あんな感じだ。答えるポイントすらない。
「・・世界からどう認識って・・?」
要するに、丸ごと分からないという意味だが、さすがに学校で質問した時のように自習を命じられる事はないと信じたい。
「・・・・・。」
その真横に伸びた耳は初めて見たな!
当たり前だが、良い方の反応ではなさそうだ。
・・・・・。
おい、何か言ったらどうなんだ?
「世界の常識から外れ過ぎると、認識外になるのかしら・・?」
なんだか分からないけど、酷い謗言を吐かれた気がする。
マリッサを見るが、真顔だ。冗談とか軽口じゃなく、真面目に言ったらしい。
いや、だってこの世界の常識なんて知らないもの!
「軽い冗談だと思って聞いてくれて構わないんだけどさ。2人は俺が別の世界から来たって言ったらどうする?」
「納得するわ。」
即答かよ!ってか納得って何だよ?
普通、頭がおかしいんじゃないかとか、馬鹿な事を言い出したぞコイツ的な反応が返ってくるだろ。
納得しちゃうのかよ?え?これってこの世界の標準だったりするの?
「リフレは、精霊なのか?」
どうしてそうなった?!
あー、そういえば、精霊って別の世界にいる、とか言ってたっけか?
「別の世界から来た存在」ってなると、こっちの世界の常識では精霊になるわけだ。
それが一番納得のいく答えなのかもしれないが、俺は精霊でも無ければ魔法使いでもない。
あ、CCすれば魔法使いにはなれるな。
元の世界の常識上、30までDTで魔法使い、40までで賢者で、いずれ妖精か仙人になるんだっけ?
あれ?これ常識か?
「違うよ。普通の人間だよ。」
・・・・・。
おい、斜めから見ても、見えるものが変わったりしないぞ。
危ないから移動中に首を傾げるのはやめろ。
そこそこの速度出てるから!電柱にぶつかるから!電柱無いけど。
・・・俺の頭の上でスザクも首を傾げてないか?真似しても何も出て来ないぞ。
「とりあえず、リフレが何者かは置いておいて、『普通』って何なのか勉強し直す必要があるのよ。」
「勉強する必要があるのはリフ・・・マツザコ?の方だよな?俺たちの方が普通の側なんだよな?
とりあえず、コイツには常識から教えていかないと。」
雑魚言うな。俺は松崎だ。
あと、普段はその名前で呼ぶなって。
色々話し合う必要性を感じたが、とりあえず、この話はここまでだ。
なぜなら、ノルタークの町が見えてきたからだ。
さすがに徒歩は早いな! ・・・・・あれ?
いいんだよ。徒歩の方が馬車より早くたって。
俺達は冒険者だからな。な!