表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/430

一夜

鶏の丸焼きは、野趣やしゅあふれるというか、濃い味がしてなかなか美味かった。

薄めに付けられていた塩が、完全に肉の味に負けていたので、塩を足して食った。

ちょっと硬かったが、噛めば噛むほど味が出てくるというか・・・。

パサッとした堅さではなくジューシーで、何に例えたらこの美味さが伝わるのか悩むほどだ。

やわらか~い肉だけが美味いってわけではないんだよな。

ってか、本当に硬かった。あごが疲れてしまった程だ。


それに加え、もの欲しそうに見てる子供達に負けたのもあり、肩に乗るスザクの圧力に屈したのもあり、俺は半身の鶏のさらに半分程度しか食べることができなかった。

それでも、そこそこのボリュームがあったけどな!


婆さんとの話は、ある程度付いた。

まずは、俺が個人で頼む、採取と解体の依頼を受けてもらうことから始める。

薬草の類が山ほど欲しいし、解体はできないからな!

で、何も植わってない畑があるようなので、できそうなら薬草の畑を作ってもらおうと思っている。


この畑、麦の畑にしようと思って種籾たねもみを買ったらしいんだけど、1つも生えて来なかったんだってさ。

金は無くなるし、食料は尽きるし、散々だったとか。ツイてないにも程があんだろ!


ある程度こなせるようなら、武器を無料で貸し出してレベル上げを行い、冒険者として登録してもらう。

要望があり、見込みがあったら、貸与武器を無利子で売ってもいいと思っている。

貸与武器を粗末に扱ったら、さすがに弁償だ。

世の中、「レンタルだから」という理由でモノを粗末にできるやからがいるからな!

将来的には、ギルドで日銭を稼ぎつつ、俺からの依頼も受けるという形でWin-Winの関係を築こうと思っている。

目当てはグミーのかけらだ。

あれ、自分で集めるのすごく面倒だし、その上、この世界のモンスターの湧きが少ないから、絶対に集めるの大変だと思うんだよね。

もし、安定供給の目途が立つというのなら、これほどありがたいことは無い。


しかし、近くで聞き耳を立てている男達に気付かない振りをしながら話すのは、すごく疲れた。

奴ら、俺がそっちを見ると、蜘蛛の子を散らすように逃げていくんだもんな。


で、何故か子供達と仲良くなり、奥様達に囲まれて(俺が用意した)料理を取ってもらいながら、夜はけ。

料理も酒もわずかしかない宴会は、まるで蝋燭ろうそくの火が消えるかのように唐突に終わったのだった。


就寝の時間。

案内されたのは、長老の婆さんの庭・・もとい、家だった。

ぎのボロ布・・・屋根が、心持こころもち他の家よりも大きい気がする。


おい、ギルディート。家の中にテントを張るな。失礼だろ。

家? 家・・だよ。うん。ほら、屋根があるだろう?

ってか、いいな、テント。俺も欲しい・・・。


婆さんの寝床にあった布と同じものを渡される。

ってか、これ“同じもの”ってか婆さんの布団じゃねぇか!(色んな意味で)使えるかよ!

自分で使ってくれ。


ギルディートは自分の野営道具があるみたいなので、問題はないらしい。

スザクは専用の桶とタオルがあるので、いつもと大して違いは無い。

マリッサは野営の準備など全くしてなかったとの事なので、俺の予備のマントを渡す。

そこそこ良いやつだし、下手な寝具よりも地面のガタガタが気にならなくていいんじゃないか?

と適当な言い訳ではあるが、無いよりはマシだろう。


同じ空間で寝るわけだが、部屋というか、壁が無いので、「同室・・・!雑魚寝・・・?!」みたいな緊張感は全く無い。

仮に何か事案が起きたとして、外から丸見えである。

究極のセキュリティと言えるのかもしれない。・・どちらかというと極限、か。


そういえば、ここは町じゃないので、結界が無く、装備はそのままである。

装備を外してアイテムボックスに入れれば、町と同じように寛げるのだろうが、ほぼ外のこの集落でそんな勇気は無い。

自分の装備しているマントを体に巻き付け、空き瓶にタオルを巻いたものを枕にして就寝。


・・・・・。


うん、地面は土だし、パイプ椅子より柔らかい気がする。


・・・・・・・。


過ごしやすい気温だし、真冬とか真夏じゃなくて良かったな。


・・・・・・・・・。


・・・。


って、寝られるかぁあああ!!


ほぼ屋外じゃねぇか!

ギルディートがテント出したのもわかるわ!

風が吹き抜けてるし!

一部、星まで綺麗に見えちゃってるし!


あれ?マリッサもう寝てるのか?

酒飲んでたもんな。


ギルディートも?

・・・野営には慣れてるんだっけ。


・・・・・・・。


駄目だ、眠れる気が全くしねぇ・・・。


かといって、プライベート駄々漏れなこんな場所で倉庫整理もペットの面倒も見られないし。


適当にどっか出たらいいんだが、さすがにさっきまで盗賊してた集団のアジト(?)にこいつらを残すのはどうかと思う。

それに、なんとなく良い感じに信頼感を得た気もしないでもないが、外に出たら不審がられないかな?というのもある。


うーん、どうするべきか・・・。


とりあえずトイレかな。

集落の外れに、トイレスペースがあり、利用しようとしたものの落ち着いて用を足せそうになかった。

しっかりと布を張り巡らされている女性用はともかく、男性用の開放感ときたらマジ全開。

今ならいてるだろうし、トイレに行って来たら眠れるんじゃなかろうか。

二人を起こさないよう、そっと立ち上がった時だった。

ギルディートの耳が、ピン、と立った。


「・・・・?!」


起こしてしまったのか?それとも、元々起きてたのか?


こいつの行動パターンからして、まず付いて来るだろう。

俺の行き先はトイレだ。

そこで遭遇するのは非常に気まずい。


「ただのトイレだから、付いて来るなよ。」


一言残し、トイレに向かう。


・・・・・。


付いて来てないよな?

毎回、後方の確認は怠ってないんだが、気が付いたらいるんだよな。

今回もしついて来てたら、トイレにまで着いて来た変態としていじり倒してやる。

まさかと思うが、スキル:隠れ身を持ってたりしないよな。


集落の外れ。

肥溜めの並んでいるそこは、一応フタはしてあるものの、においが酷い。

手作りレンガ風のトイレだが、素朴とかそういうものではない。ただのトイレなのだ。


これがある程度溜まると、落下防止程度に丈夫なフタが敷かれ、そのまま肥溜めになる。

だが、トイレの方が敷かれていないので、うっかり落ちる者もいるらしい。


初対面の相手と会話が続かないのはわかるが、食事時にやめて欲しい会話であった。


とにかく、細心の注意を払って用を足す。

うーん、トイレが怖いって歳でもないんだが、なんかこう別の怖さがあるな。

さて、臭いし、時間も遅いし、さっさと戻って寝るとしよう。


「?!」


気配を感じ、振り返る。ギルディート、ではない。

もっと気配が薄いのに、まるで存在を主張するような・・


「コ・・ コッコ・・」


スザク(おまえ)かーっ!


それは予想してなかったわ。


スザクはいつかのように、ひし、と脚にしがみ付いてくる。

なんだ?どうした?

ってか、俺さっきまで滅茶苦茶くっさい所にいたんだけど、臭くないのか?


鶏が夢を見るのかは分からないが、嫌な夢でも見たんだろうか。

スザクを頭に乗せ、宿にしている空き地・・じゃなかった、婆さんの家に戻る。

うん、異常は無いな。


その日のスザクは何故か桶に戻るのを嫌がった。

横になりたいんだが、自分の寝相が良いのか悪いのかもわからない。

気が付いたら押しつぶしてました、とか、怖すぎる。

俺が胡坐あぐらをかくと、スザクは丁度いいとばかりにそこに収まり、俺の膝で眠ったのだった。



・・・ってか、俺の睡眠時間・・・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
▽お知らせ▽

◆高頻度で最終ページ《(仮)タイトル》は書き込み中。
加筆・修正により、内容が倍以上増える事があります。
たまに前ページの内容を見て加筆する事もあります。

◆後追い修正の進行状況:現在152ページ。H.30 5/5

◆作者が混乱してきたので、時間がある時にタイトルに日数を入れます。
あとがきに解説も入れていくつもりです。いや、無理かもしれん。
がんばるー(棒読み)

▽ぼやき▽
3月には書き終えるつもりだったのに、5月になってもまだ序盤ってどういう事だ?
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ