平原のカンク達
この岩石地帯は、基本的にはアクティブモンスターがいない。
かといって安全地帯か?というとそうでもないのだが。
マリッサが何やらそわそわしていたので釘を刺す。
「何か原石でも出てこないかって、めったやたらとその辺を叩くなよ。
ロックグミーならともかく、フォンダンロックが居たら洒落にならないぞ。」
両方とも、その辺の岩に擬態しているモンスターだ。
この岩石地帯では宝石の原石を掘ることができるのだが、最初のひと掘りでこいつらに当たると、攻撃を仕掛けてくるのだ。
ロックグミーは、毎度おなじみグミーの仲間である。
グミーは各地にいて、だいたい“なんちゃらグミーのかけら”というアイテムを落とす。
何気に、そのグミー系は量が必要な代わりに、使えるアイテムの素材なので、どこへ行っても売れる。
こいつはロックグミーのかけらを落とし、これを素材にしてガラス系のアイテムを作ることができたりする。
問題はフォンダンロックだ。こいつ、パッと見はグミーに似ているが、別物だ。
なんとなく美味そうな名前に騙されてはいけない。
こいつの中身は溶けた岩石・・・つまり溶岩なのだ。これを、出会いがしらに吹きかけてくる。
俺は、初めての原石収集で即死した経験がある。
「わ、わかっているのよ。行きに荷物を増やすようなヘマはしないわ。」
・・・・・。
帰り道は気を付けないとな。こいつ、やらかしそうだ。
岩石地帯を抜けて、藪や細い木のポツポツ生えた平原地帯に出る。
緑が少なく、地面が見えているが、もうちょい進むとこれが草原になる。
ここは鳥系モンスターが出るのだが、こいつらも非アクティブ・・・。
この間、狩ろうとしたら逃げられた。
あと、植物系モンスターと、スカンクみたいな小動物系モンスターが居るはずだ。
この間来た時は、植物系モンスターに用はなかったんだよな。
「あ、何かいるわ。」
[ミーアカンク]
こいつは巣に近付かなければ安全な小動物だ。小モンスターとでも言えばいいんだろうか。
ちょっと大きいリスというか、尻尾がもふっとしていて可愛かったりする。
そんな奴らが巣の周りで和気藹々とじゃれ合っているのだ。フラフラッと寄って行ってしまう気持ちもわからないではない。
「おい、あまり近付くな。そいつら、見た目によらず相手をするのはきついぞ。」
俺に言われてマリッサが立ち止まったが、遅かった。
ジャッ、ジャッという鳴き声で、奴らのリーダーが出てくる。
[ガスカンク]
こいつがヤバイ。
いや、ゲーム上はただの状態異常だったが、絶対ヤバイ。
「距離を取れ!とにかく離れろ。あと、こっちに逃げて来るな。」
「?」
まさか、マリッサはこいつの危険性を知らないのか?地元だろう?
ギルディートを見ても、きょとんとした顔をしている。
「何もしなければ怖いことはないぞ。そんなに警戒する必要は無い筈だ。」
・・・。そう、なのか?
フォレビーみたいに襲ってくることは・・って、あっちはアクティブモンスターか。
こっちは非アクティブ。警戒のし過ぎか・・・?
「きゃぁあああああああ?!?」
「あ。・・・・・あーあ。」
とか言ってる間に、マリッサが威嚇攻撃を食らっていた。
集中して見ると、状態異常:酩酊の表示が付いている。
俺の時は麻痺と混乱だったな。
そして、動けないマリッサに近づけない男2人。
だって、ねぇ。
今の所、それ以上の危険があるわけじゃないし、近付いたら巻き添え食らうじゃない?
「な、・・なに・・ こ れ ・・・ ・・。く・・、臭・・・・・ 。 」
マリッサがフラフラ逃げて来るけど。付いてきてるから!
ガスカンクさんが、一緒に来てるから!!!
「マリッサ!待て!それ以上近付くな!俺達は巻き込まれたくない!」
そう、こいつ、威嚇に猛烈な臭気のガスを吹き付けるのだ。
しかも、しつこい。
効果はランダム。
確か、暗黒、混乱、気絶、麻痺・・・だっけか?
俺は混乱の状態異常から抜け出せずに、巣のミーアカンクに突撃して、ガスカンクさんを3体出し、ガスだらけになってクラメンに救出された事があった。
しばらく、“屁の貴公子”とか“臭気の使い手”とか呼ばれていたさ。
別に大剣だから苛められてたって訳じゃないんだからねっ。
マリッサはずんずん近付いてくる。
「おい、逃げるぞ、ギルディ・・・あれっ?」
ギルディートどころか、スザクさえも遠く離れていた。
これは・・・三十六計逃げるに如かずってところか?
「リフレは逃げたりしないわよね?助けてくれるわよね?」
怖いよ、マリッサさん。
というか、ガスカンクさんが強烈に怖い。
「すまん、マリッサ。健闘を祈・・・・」
「フッ!」
速っ!!?!?
残像???
いつの間に俺の後ろに・・ってか何今の。
「ジャァァアアッ!!」
えっ、ちょっ、まっ・・・
・・・・・・・・・・・・・ッ
っぐ
ァ
・・・
「 ォ ァ ア゛ ・ ・ ・ 。 」
目に沁みる・・・?!
何これ・・ 臭いとか、そういうレベルじゃ・・・
タイヤに腐った揚げ物脂をかけて首に巻いて火を点けてもここまで臭くないと思うというか、
臭さが、濃い・・
まるで空気が壁になったみたいに吸い込めない。
い、息ができな・・・・
・・・助け・・
「 ウ ォ ォェッ ・・・ 」
俺の目の前は真っ暗になった!・・・