重量限界
遺跡に戻ってみると、マリッサが宝箱を運び出していた。
さっき並べてたのを見たところ、30本くらいあったよな。
1本1kgって言ってたから、3人で運べば30kg、2人でも45kgか。大したことないな。
まさか、重くて持ち帰れないって事もないだろう・・・なんて思っていた時期が、俺にもありました。
ギルディートが、
「アイテムボックスに入れずに持ち帰れるわけないだろう?
どれだけ悪目立ちすると思ってるんだ。一本70万~100万Dの代物なんだぞ。」
なんて言うもんだから、
「アイテムボックスに入れたら良いじゃないか。」
って返したら、
「入るかボケェ~~~~~~!!」
…と、めちゃくちゃキレられた。
計算してみた。
確かアイテムボックスの基礎重量は“レベル×STR÷100kg+10kg”だから・・ギルディートはレベル60でSTRが60なら46kg。
そこから装備重量を引いた重量までは入るのか。
で、風の魔道具、キャンプ用品、その他もろもろを持ち歩いている、と。
「・・・ギリ、いけんじゃね?こう・・荷物を担いだりとかすれば・・」
「色々捨てればいけるかもな!!!」
マジか。まぁ剣2本とか武器だけで重量取りそうだしな。
魔剣士タイプなら、そこまでSTRに振ってない、というのもあるだろう。
あ、クランの魔道具は他にもあるのか。そりゃきついわ。
ってか乾燥の魔道具あったなら貸してくれても良かったんじゃないか?
マリッサの場合、30レベルまでは補正が付いてて、STRが低くてもSTR30分の補正が付く。
レベル25・・いや、思い切って30と仮定しよう。その方が計算楽だし。
・・・・・。20kgまでしか入らないのか!少なくね??
装備は・・ああ、槌が重いのか。あと、色々持ち歩いてるもんね。
荷物を絞ったって話は一体どうなったんだ?
え?俺?基礎重量で600ぐらいだったかな。計算が面倒だから切り捨てるぞ。
だいたい、この世界に来てからステータスの数字が見れなくなったから、正確な数字なんて覚えてないし。
えー・・・250×250のー・・で・・・635kgだな。
「・・・・・ファッ?!」
何それ?え?これ車とか丸ごと入っちゃうってことか?
ってか基礎重量って、一応「その人が持ち歩いても体力を消耗しない重量」って設定だったよな???
[重さ:600]と現実に感じる600kgの重みの違いに驚いてしまった。
「何だよいきなり。」
「いや・・・現実を噛み締めていただけだ・・。」
しかし、乗り物アイテムとか妙に軽かった気がするけど、こっちでの扱いってどうなってるんだ?
そりゃ、ゲームでは乗り物がスロット圧迫したら本末転倒なんだろうけども・・。
ちなみにこのアイテム重量、イベントや課金で増やせたりする。
この世界にそんなものがあるのかは不明だが。
マリッサから宝箱を受け取る。
あれ?入ってるの少ないな?
「これでもようやく引きずってここまで来たのよ。残りは中に置いて来たわ。」
という話なので、遺跡に入った。
で、宝箱に全ての金塊を収納し、アイテムボックスへ。
「私の苦労は何だったのかしら・・・。」
そこ、ぼやかない。
ワープポイントも回収しておこう。
・・・・・・。
うん?入ったけど・・・何故か体に重みを感じる。
集中してみると、いつもは青いアイテムボックスの枠が黄色になっていた。
そろそろ重量限界か。
そして、
・ワープポイント×2
×2 ?! あれ、2つ重なってたの?
ラッキーーーー!
これで、遠距離の移動が楽になるね!
・・・どこに設置するかは決めてないけどな。
しかし、困ったな。アイテム整理しないとまずい。
色々考えてると、じーーーーーーーーーーっとこっちを見ている2人に気が付く。
「・・・。どうした?」
色々と問い詰められる予兆はあった。
いよいよか、と身構える。
「何でもないのよ。」
「ああ、なんくるないのさ♪」
ギルディート、お前は何キャラだ。そして絶対それ間違ってるぞ。
さて、回収するものも回収したし、早く宿に帰ろう。
そして、いつも通りに扉を閉めて埋め、岩を収納して乗せようとした時に、アイテムウインドウが赤くチカチカッと光るのが見えた。
収納できない!
仕方なく、ワープポイントを取り出して岩を収納した時、マリッサがボソリと呟いた。
「貴方も人間だったのね…安心したのよ・・。」
おいおい。・・ギルディートも頷いてんじゃねぇ。
しかし、俺が近くにいなかったらどうするつもりだったんだ?
こいつら、ちゃんと考えて動いてるんだろうな?
ワープポイントを仕舞い、コランダの街へと向かう。
そして、その間、不自然なくらいに遺跡の話題が出なかった。
問い詰められることも無く、宿の食事の話題や、ディアレイやノルタークの話など、雑談としか言いようのない話ばかりが続く。
これは・・俺は「遺跡はどうだった?」とか聞くべきなんだろうか?
聞いた方が自然なだけに、誘導されている気もしないでもない。
どう考えても、わざと話題を避けている。
・・・・・・・。
ギルディートの耳を見る。
落ち着き無くピコピコしている。
マリッサの方を見る。
いつも通りだ。・・くそ、何を考えているのかさっぱりわからねぇ。
もう一度ギルディートを見る。
「!?」
こいつ、耳を隠しやがった・・・?
なんだ?2人共、何を隠してるんだ?
そのニヤニヤは一体何なんだよ?!?
くそ・・問い詰めたいが、墓穴を掘るような気がする・・・。どうしたらいいんだ。