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宝箱の中身

「・・・・・・。」


まばゆいばかりの黄金の前に、俺達はただ立ち尽くしていた。


「分配しないでござるか?」


だが、いつまでもこうしていたって仕方が無い。

俺が2人を促すと、ギルディートが難しい顔をして振り向いた。


「お前は途中参加だからわからないだろうけどな、昨日まで一緒に攻略してた奴がいるんだよ。

むしろ、そいつがメインで攻略してた、と言っても過言じゃない。」


ほう、俺に気を使っているわけか。

そんなん、この部屋を攻略して宝箱を開けた2人でパパッと分ければいいのに、って訳にはいかないんだろう。

それに、さすがに俺もちょっと欲しい。でも、今のこの俺が言うのは不自然だな。


「とりあえず、持ち帰って相談したらどうでござるか?」


「っつっても、最低限分配を決めておかないと、後でもめるだろうが。」


2人は、宝箱の中身を取り出し始める。


「うっ??」


一瞬、ギルディートが妙な声を出していたが、思ったより重かったらしい。

そんなに重いのか?と思ったが、マリッサが慎重に受け取っているあたり、重いのだろう。

それは、所謂いわゆる、金の延べ棒であった。インゴットとも言う。

ただ、俺の想像してたインゴットってのはプレートなんだけど、これはどっちかっていうと棒に近いというか。

俺の思っているインゴットとは、ちょっと違うよねって感じだ。


「これ、多分、全部同じ重さなのよ。規格化されているわ。」


「そりゃ分配も持ち運びも楽でいいな!」


出した黄金が横一列に並んでいく。

かなりの数が入っているな。


「それよりも、持って帰れるかしら。」


「・・・それは俺も心配していたところだ。」


どういう意味かと尋ねたら、重すぎてアイテムボックスに入りきらないかもしれない、という事だ。

いくら金属とはいえ、こんな“ちょっとデカイ文鎮”みたいなヤツが、そんなに重いわけ・・・


「重ッ?! ・・・でござる!」


なんだその、生暖かい眼差しは・・。

なんだこれ、想像の倍は重い。いや、下手したらもっと重いぞ?


「これ1本で1キロぐらいあると思うのよ。」


1キロぉ?いや、だってこんなサイズよ?そんなにデカくないというか、むしろ小ぶりだよ?

例えるなら、そうだな。500円玉が50枚の束を持ったことがあるだろうか。

あれが結構重いんだが、500mlのペットボトルくらいの長さに延長したとしよう。

その重さを想像して見て欲しい。わりと重いはずだ。

そんなイメージになるくらいの大きさの延べ棒(・・・)なわけだが。

体感で、その倍ぐらいは重い気がする。これが1キロか?


「ところで、あなた、さっきから元気がないようだけど?」


マリッサさんの視線が、俺の頭上に注がれている。


「!」


俺は、慌てて両耳を隠す。別に残念だなんて思ってないよ!金塊だよ金塊!

いやーロマンだなぁ!そう、ロマンだよ!

謎の剣とか、古文書こもんじょとか、魔道具とか、そういうんじゃなかったからって、残念だなんて失礼なこと思ってるわけないじゃないですか!


そして、全ての金塊が出し終わったようなので、俺は宝箱を移動させてもらった。


「なんで移動?」


と2人は不思議がっていたが、俺は、このレリーフの刻まれた石材に、どうも見覚えがあるのだ。

そして、邪魔な箱がなくなり、その全貌が明らかになる。


「・・・・・・・っ!!」


ワープポイントじゃん、これ。

さっき、乗っても何の反応も無かったけど、ワープポイントじゃん!


これ、動かせないかな?うぐぐ、動かせないな。

動かせるようにできていないのか、STRが足りないのか・・・。


「もしかして、これ(・・)が欲しいのかしら。」


思わず、我を失いかけた俺に、マリッサが話しかける。

しまった、分配の最中だった。

これは欲しい。ものすごく欲しい。でも、貴重なものだからな。

譲ってくれ、と言って譲ってもらえるものでもないだろう。


「・・・・・。」


それに、欲しい、といっても、このキャラで受け取るわけにいかない。

確かに欲しいのは俺だが、俺が普段使っているリーフレッドで受け取らないと、後々まずい。

俺が答えかねていると、マリッサが俺の目を見て尋ねる。


「黄金よりも?」


「・・・・・・・。」


まるで内心を見透かすようなマリッサの目と、目が合う。

動揺するな。俺には仮面がある。仮面が・・・ッ?!

マリッサの手が、仮面に掛けられていた。


スキル:隠れ身っ!


仮面を剥がされる前に使ったスキルが間に合うも、マリッサの手に仮面が残っていた。危ねぇ!

マリッサの手から、仮面を手繰たくる。この女、油断も隙もあったもんじゃねぇな!!


俺は、扉を開けて外へと逃げ出すのであった。



さて、外へと飛び出した俺だが、暗くなっていて驚いた。

遺跡の中は、トーチのおかげで明るく、時間の感覚が狂いそうだったからだ。

俺は、周囲を確認してリーフレッドにCC(キャラチェンジ)し、トーチを取り出した。

良い感じの場所選んで、飯を食う事にした。


とにかく、腹が減った。

アイテムボックスの中からサンドイッチとスープを取り出し、頬張る。

空腹の胃に染みるようだ。


・・・・・。


そして・・。


「いつからそこにいた。」


いつもの奴である。

何なんだ?そのお前の勘は?PT組んでないんだぞ。

遺跡の近くはゴキを解体したから嫌で、例の体を洗った川のある場所まで来てるんだぞ。

しかも、町とは反対方向なんだぞ、こっちは。


「食べ終わりそうになったあたりからだ。」


つい今しがた、って事か。


「色々話したいことはあるんだが、重要な問題があってな。頼むから、着いて来て欲しい。」


そう言われ、立ち上がる。

マリッサの姿が無い。何かあったのか?


「あ、重要っつっても、怪我をしたとかそういう問題じゃない。

でも、リフレの力を借りたいんだ。」


何だろう。ささやかな不安を胸に、俺はギルディートと共に遺跡に向かうのであった。

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▽お知らせ▽

◆高頻度で最終ページ《(仮)タイトル》は書き込み中。
加筆・修正により、内容が倍以上増える事があります。
たまに前ページの内容を見て加筆する事もあります。

◆後追い修正の進行状況:現在152ページ。H.30 5/5

◆作者が混乱してきたので、時間がある時にタイトルに日数を入れます。
あとがきに解説も入れていくつもりです。いや、無理かもしれん。
がんばるー(棒読み)

▽ぼやき▽
3月には書き終えるつもりだったのに、5月になってもまだ序盤ってどういう事だ?
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