ストーンゴーレム戦
装備補修キットの使い方は超簡単だった。
これの外見は、白くて四角い・・・豆腐のような外見の、硬い金属のような謎物質である。
こいつ、割り箸か、某ウエハースチョコの菓子のように、真ん中できれいにぱっくり割れるのだ。
その割れた部分に謎の文字が描かれており、その謎の文字の部分を武器・防具に押し当てると、まるで溶けるように吸い込まれていき、武器・防具を再生していく。
やり方を実演して見せてもらう代わりに、情報料として提供すると言ったら、渋々使って見せてくれた。
良かった。リアル化した以上、変な手順とか増えてたら面倒だと思ったけど、めっちゃ簡単だった。
なんとなく軸の歪んでいた槌がしゃきっとして、薄汚れた感じも取れた気がする。まるで新品だ。
「もう使ってしまったのだから、後で返せと言われても困るのよ。
貴方が言ったのだから責任は持って欲しいわ。あと、残りの半分はギルに使わせてほしいのよ。」
ふむ。
確かに、剣でストーンゴーレムはきついもんな。
それにしても、これも残りの半分は使える仕様とは経済的だな!
さて、ギルディートの剣は2本あるわけだが、どっちの剣の方が耐久がヤバイだろうか。
ぱっと見、薄汚れてるのは左側かな?
「右手に握ってる方に使うのよ。左はまだ大丈夫だわ。」
・・。
マリッサに内心を読まれるのは慣れた方がいいのかな?
仮面、仮面・・・ちゃんと付いてるよな。
俺たちのやり取りを聞いていたギルディートが剣を差し出す。
あ、俺がやってみていいの?じゃ、失礼して・・・。おおっ、これ面白いな!
「それで、こいつを早く出して欲しいのよ。」
あっ、ストーンゴーレムを結界から出すのを忘れていたな。
えっと、片方だけの結界を解除、と。そんな事ができるのか?うーん・・・。あ、できた。
さて、ゴーレムズの結界のHPはまだあるし、2人の奮戦を見守るとしましょうかね。
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わりと時間食った。
クラポリーム戦が無かったから身綺麗にする必要が無いものの、夕飯を食べてもいいような時間帯だろう。
日差しも入らない遺跡の中なので、確実では無いが、俺の腹時計は訴えている。
飯を食わせろ、と。
だって、俺、昼飯食ってないんだもの。よしを。
先に止めを刺したのはギルディートだ。
ストーンゴーレムがひっくり返ってから、しばらく攻撃が消極的になっていたが、しばらくしたら思い直したように再開した。
関節部分から胸部に向けての突きを試みたが、最初は硬い装甲と、ピチピチと陸揚げされた魚のように動き回る体に苦戦していた。
弾かれたり、剣を持っていかれそうになったりして随分とヤキモキさせたが、だんだんと精度を増し、関節部分にヒットするようになるのに時間はかからなかった。
当てられるようになると攻撃の深さと剣を引く速度を上げていき、ついに、コアを砕いたらしき音と共に、ストーンゴーレムは沈黙した。
そこからは、マリッサの戦いぶりを一緒に観戦した。
ポップコーンでもあれば良かったのだが、リーフレッド以外にマトモな食べ物の持ち合わせのあるキャラはいない。
リーフレッドだって、さすがにポップコーンは持ってないわけだが。
結界で作った椅子に並んで座るあたり、こいつの図太さに関心すればいいのか、呆れればいいのか。
一度、うっかりゴーレムズの結界のHPを切らしてしまい、奴らが飛び出してきたが、それ以外は無問題だ。
群がるゴーレムズと隅っこに移動し、結界を発動して俺だけ出てくる。奴らが取り残される様はなかなか楽しい。
それからギルディートが隣に座ることはなかったが、それも無問題。うん。
マリッサは、ひたすらに槌を振り下ろし続け、罅を徐々に広げていった。
パラリ、パラリと破片が落ち、衝撃がコアに伝わったのか、ストーンゴーレムの動きが徐々に鈍くなっていく。
これだけの文章では伝わらないだろうが、これを、ずっとずっと、繰り返していたのだ。
ノーダメージ、1ダメージを延々とだ。
餅つきや畑仕事のようだが、本業でもここまで必死に長いこと振るい続けることはないだろう。
そして、罅は広がり続け、ついに、ビシリという音と共に特大の亀裂が入る。
「てぇいっ!!」スキル:粉砕
気合と共にマリッサの放ったスキルはクリティカルヒットし、バギリ、という音と共に腕の付いていた片が崩れ落ちる。特大の亀裂はそのまま断面となった。
コアが露出する。
「ていっっ!!」スキル:粉砕
連続のスキルにより、ついにコアが砕かれた。
マリッサは、息を切らせながらストーンゴーレムの動向を窺っていたが、完全に沈黙したのを確認し、槌を地面へと付けた。
こうして、ストーンゴーレム戦は終幕を迎えた。
まぁ、
ビキ・・・ バリン
「おぃぃいい!後ろ!後ろ!」
まだゴーレムズが残ってるんですけどね。
丁度いいタイミングで結界のHPが無くなったようだ。
スキル:隠れ身
「ちょっ」
「きゃぁっ?!」
ターゲットが2人に移り、綺麗に2体づつに別れる。
「さぁ、ボス戦も終盤、頑張るでござる!」
俺が2人にエールを送ると
「うるせェ!浸る時間をよこせオラァ!」
「リフレと同じタイプなのよ・・空気を読むのを求めるのは諦めるのよ・・・。」
2人は元気良く(?)、残りのゴーレムと対峙するのであった。