拙者と某と俺とリフレ
2人を結界に残し、まず、俺にヘイトの向いていないゴーレムを潰していく。
もちろん、ストーンゴーレムは除く、だ。
やり方は簡単。
とりあえずマッド、アース、クレイの3ゴーレムは胸の辺りにコアがあるので、そこら辺目掛けて連続してクナイを放てばいい。
サンドゴーレムだけは、不定形生物状態になっていて、何処にコアがあるか分からない。
体の隅から隅までをローリング作戦で吹き飛ばしていく。
そう、奴ら、まるで銃弾でも食らったみたいに吹き飛ぶのだ。爽快感があって面白かったりする。
くそう、何でクノイチなんだ・・。何でニンジャとかシノビじゃないんだよぉ・・。
で、全部の俺にタゲが完全に向いたゴーレムから、数を減らしていく。
時々、首無しゴーレムがこっちに向かってくるので、蹴りを入れて方向転換させる。
せっかく上手く管理してるのに、ここでゴーレムズに攻撃を食らって、元通りにされたくない。
4種類全てが1体づつになったので、隅に移動して2人に呼びかけた。
「じゃぁ、結界を解くでござるよぉ~。」
何故か、2人は苦い顔で顔を見合わせると、武器を構えた。
言いたいことがあるなら言えよ。言ってみろよ。ちゃんと聞くから。
マリッサの方は相変わらずだが、休憩を挟んだおかげか、少し元気になったようだ。
ギルディートの動きは明らかに変わった。まぁ邪魔な4体をこっちで引き受けているので当然である。
わりと苦戦せずにもう片方の腕を斬り飛ばしたのだから、舌を巻く。
で、俺の方に問題が発生した。
「せっかくの2人の活躍が集中して見れないでござる!」
このキャラ、AGI(速さ)は高いものの、DEF(防御)があまり高くない。
紙防御とまではいかないものの、格下からの攻撃だって通る。
それに、ゲームのようにAGIがいくつだから何%の確率で攻撃が当たらなくなる、という仕様ではない。
ちゃんと避けなければ当たるのだ。
それを考えると、わりとギルディートって頑張ってたんじゃね?
ストーンゴーレムには、大技らしいものがあり、大きく仰け反って両腕を繰り出してくる。
そのモーションを取った時、ギルディート側のゴーレムはひっくり返った。
そりゃそうだ、両腕が無くなって、バランスが大きく変わっているのだ。
「・・・・・。」
起き上がろうともがくストーンゴーレムは、まるで電池式のロボットの玩具のようだった。
多分、頭脳が単純なのだろう。
「どうすんだ、これ。」
もしロボットだったら爆発を心配したろうが、ストーンゴーレムが爆発したなんて話は聞いた事がないし、大丈夫だろう。
「腕の付け根から胸に向けて貫いたらどうでござる?
某の知識が確かなら、そこなら装甲を避けてダメージが与えられるでござる。」
「某って何なんだよ!」
しまった、拙者だった。
キャラ設定が定まってないと難しいな。拙者、拙者・・と。
しかし、陸に上がった魚のように動き回るストーンゴーレムに、何だか攻撃をしにくそうにしている。
下手に突き刺すと、剣も折れそうだしな。
「いっそ、脚も斬り飛ばしたらどうでござるか。」
「鬼かよ!」
こいつはツッコミを入れにゃ気が済まんのか?
ギルディート側の敵は、もはやまな板の上の鯉。あとは料理されるだけの状態である。
さて。マリッサの方はと言うと・・・。
「ていっ」スキル:粉砕
時々スキルを放ちながらも、頭のあった場所を撲りまくっていた。
入るかどうか分からないダメージで関節を狙うより、このまま罅の入った部分を狙ったほうが手っ取り早いという考えだろう。
結局、最後はここを壊すわけだし、マリッサの|与ダメ《敵に与えられるダメージ》を考えると、それは正解だったのかもしれない。
罅が大きくなり、気のせいかストーンゴーレムの動きも鈍くなってきているように見える。
そして何より・・
ガンッ・・!
荒削りではあるが、敵の攻撃を受け流す事にも成功している。
すさまじい成長であると言える。
だが、問題も発生していた。
「ていっ!」スキル:粉砕
クリティカルが入ると共に、槌からミシリ、という嫌な音がした。
武器の耐久限界が近いのだ。
うーむ。
アイテムボックスから装備補修キットを取り出す。
これは耐久度を回復するアイテムで、PT戦闘中など、町に戻って武器を修理するのが惜しい時に使用するアイテムだ。
ただ、これ、どう使うか分からないんだよな。
結界を使い、マリッサ側のストーンゴーレムを閉じ込めてみた。おお、こういう使い方もできるんだな。
檻に閉じ込められたゴリラのようにウロウロと歩き回り、時折、何も無いところに攻撃をしている。
自分に襲い掛かってきているゴーレムズも同様に閉じ込め、自分だけ脱出。
ゲームではこんな使い方は出来なかったはずなんだが・・何これ、超便利。
「何のつもりなのよ。」
攻撃を中断させられたマリッサは不機嫌そうだ。
「ああ、これの使い道が分からないのでござるが、武器の補修に使えるはずなのでござる。
マリッサ殿なら、使い道を知っていると思うので、渡そうと思ったのでござる。」
装備補修キットを渡す。
「・・・・・。これを使えと?タダで?」
頷く。もし使えるなら、そのミシミシ言ってる危なっかしい槌を何とかして欲しい。
「これ、何レベル武器か知っているかしら?25レベル武器なのよ。」
それがどうかしたのだろうか。
俺が首を傾げていると、マリッサは深く溜息を吐くのであった。
「あなた、リフレと同じ匂いがするのよ。」
?!
マリッサさん、獣人でしたっけ??