ハーフタイム
さて、結構長いこと戦っている。
間に間に水分補給などもしているが、お茶をしてもいいような時間さえ過ぎているはないだろうか。
昼食も侘しかった事を考えると、2人の集中力も限界が近いだろうと思う。
「2人はストーンゴーレムを倒したいでござるか?」
問うと。
「当然。」
「当たり前よ。ここまで来て助けてなんて言うつもりは無いわ。」
うーん。しかし、ギルディートはようやく腕の一本を切り取ったところだし、マリッサは相変わらず頭の無い胴体を殴り続けている。
このままだと、夜になってしまいそうだ。
「ちょっと休憩を入れないでござるか?」
ギルディートさん、舌打ちっすか!?
「どうやって休憩なんて入れるっていうのよ。
私は敵が“こんな”だからいいけど、ギルディート・・・言い難いわね。
ギルは5体も相手にしているのよ?」
ついにギルディートが略されてしまった。
ガク、とよろめいたのはツッコミをする余裕も無いのだろう。
「それは拙者が“これ”で何とかするでござる。」
スキル:結界
一定ダメージを食らうまで破壊できない壁である。
結界って忍者のスキルとしてどうなのか?という疑問もあるが、できるのだから仕方が無い。
ちょいちょい、とギルディートを手招きし、結界の中で休憩を取る事にした。
「これって、もしかして攻撃し放題なんじゃないかしら?」
結界の外を見て、マリッサが呟く。
「向こう側が見えるだけの壁だと思って欲しいでござる。一定ダメージで破壊されるのでござる。
内側から攻撃してもダメージが蓄積するだけでござる。」
ようやく「ござる」にも慣れてきた。
これで、こいつらの中では「仮面」の人とか「ござる」の人とかそういう認識になるだろう。
人を覚える時、その特徴から覚えるって言うもんな。
「ギルは通り抜けたわよね?」
「味方の出入りはできるでござる。ただ、味方の攻撃に関しては通り抜けないんでござるよ。」
そのギルディートだが、床に突っ伏している。
おいおい、よくそんな地面で横になれるな。
体力的にきつかったのだろう。
「なぁ、お前、リフレって知ってるか?」
「!?」
頭上の耳が緊張でピーンと立ち上がったのがわかった。
やばい、この耳、ギルディートの耳と同じ仕様だ!
慌てて耳を押さえる。
「し、知らない。知らない人でござる。」
「「・・・・・・・。」」
何だその疑いの眼差しは。
どこにそんな要素があった?どこに接点を感じたんだ?
何故そう思ったのかを聞きたいが、すっ惚けるしかない。
俺はリーフレッドを知らない。OK。
「俺は『人』だなんて一言も言ってないんだが。」
「!」
誘導尋問?!
やべェ!こんな姿をしてるなんてバレたら羞恥で死ねる!
どうしたらいい?!どうしたら・・・。
「安心しろ。リフレには黙っておいてやるからよ。」
「わかってるぜ」って顔でうんうん頷くギルディート。
・・・・・ほ? えーっと、何か勘違いしていらっしゃる?
よーし、このまま全力で乗っかったら、うまく誤魔化せるんじゃなかろうか!
「黙るも何も、リフレが差し向けたんじゃないかしら。」
こっちはこっちで何か別方向に勘違いしてらっしゃる?!
どっちだ?どっちに合わせたらいい?!
いや、こっちを見るな!
ちょっと待て!今、何か考えるから!
俺は耳を両手で隠したまま考える。
本人だとは思われていないが、リーフレッドとの知り合い、だとは思われてる。問題はその関係性か。
敵路線は話がややこしくなさそうだし、味方にしても「何らかの伝手がある」と思われても厳しいものがある。
何しろ、俺の体は1つしかないのだ。「あの猫耳に頼ればいいじゃない。」とか言われたら困る。
どうしたらいい?思い付かない!
2人は、水を口に含んだり、細かく刻んだ干し肉を噛み締めたりしながら、俺の様子を観察している。
マリッサが表情とかで人の考えを読む洞察力があるし、ギルディートの勘もやばい。
下手な受け答えをすれば、墓穴を掘ってしまうだろう。
そうこうしている内に、結界の外の様子が変わっていた。
ストーンゴーレムの攻撃で、2体のゴーレムが潰れて復活したのだ。
結界のHPの減りが早くなってきた。
俺が2つ目の結界を張る。1つ目を破壊し終えたゴーレムズが、再び2枚目の壁を殴り始める。
そういえば、ストーンゴーレムは倒したいって言ってたけど、その他はどうなんだろう?
「ちょっと攻撃頻度が多くなって、結界のもつ時間が短くなってきたでござるよ。
ギルディートは、ストーンゴーレム以外の4体のゴーレムはいらないでござるか?」
念の為、聞いてみた。
ここまで来たら、自分で全部片付けたいんだろうな・・って思ってたら、
「いらねぇよ!当たり前だろう?!」
ギルディートに目を剥いて怒られてしまった。
倒しちゃいけないゴーレム4体なんて邪魔以外の何者でもなく、神経は使うし本当にやり辛いらしい。
いや、鍛錬になるかと思ってだな・・。
「じゃぁ、4体は引き受けるでござる。さっさと倒して家に帰るでござる。
じゃぁ、結界は解くでござるよ。戦闘準備をするでござる。」
2人は水筒などを仕舞い、武器を手に取った。
なんとか誤魔化せたらしい。よかった。
さて、後半戦、スタートだ。
「強引に誤魔化したのよ・・。」
ばれてーら。