遺跡1階層のボス
助太刀が入った事により目に力を取り戻した2人は、ストーンゴーレムに果敢に挑んでいた。
しかし、ダメージが思うように通らない。
それもそのはず、マリッサはレベルが足りてないし、ギルディートの武器は(+3)が付いているとはいえ、レベルに合った武器じゃないのだ。
武器の(+3)についてだが、補正+1に付き10%の攻撃力上昇が付く。
ギルディートの武器だが、レベル40程度の装備だったので、レベル分の攻撃力・・剣の場合は“斬”や“突”が40くらいだったはずだ。
この辺は、ドロップの場合は個体差があり、武器によってだいぶ差があるのだが、「良い武器か否か」の判断基準にもなっている。
元の攻撃力が40の場合、+3の補正が付いているので、52の攻撃力となっている。
で、だ。ギルディートはレベル60くらいじゃないかと俺は思っている。
なので、“斬”60程度の武器を持っているのが適性だ。足りていない。
その上、ストーンゴーレム・・つまり相手は石だ。相性も悪い。
相性の問題があっても、レベルや装備でゴリ押しすればダメージを押し通すことができるが、ちょっと悪い条件が重なってしまったように思う。
ストーンゴーレムは、高くてもレベル50程度の筈なので、なんとか頑張って欲しいところだ。
「あっ!」
マリッサが声を上げる。
マリッサが攻撃していたストーンゴーレムが、ギルディートを襲っていたアースゴーレムを叩き潰したのだ。
祭壇から丸いものが降ってきて、アースゴーレムを復活させる。
そのうち一体が俺に向かってきた。2体はマリッサ、ギルディートには1体。
チラッ、と俺の様子を見るギルディート。
ここで1体倒せば楽になるんだけど、引き受けてくれるかな?という眼差しである。
こいつ、案外現金な奴だな。
「拙者は助けないでござるよ。倒しても構わないが、倒したらこいつをお前に擦り付ける。・・でござる。」
「ていっ!」スキル:粉砕
マリッサは心配なさそうだな。
ギルディートも同じ判断をしたらしい。
そして、自分に向かってきているアースゴーレムに攻撃を加えはじめる。
ちょ、倒しても擦り付けるっつってんだろうが。
やってみろ、って事か?
しばらくして、ギルディートはアースゴーレムを倒し終え、他3体の攻撃を掻い潜ってストーンゴーレムに攻撃をし始めた。
「ていっ!」スキル:粉砕
マリッサも2体目を倒せたみたいだな。
「ていっ!」スキル:粉砕
ついで、とばかりにストーンゴーレムにもスキルを放ったが、ガギィン、と硬質な音がして顔をしかめる。
手がしびれたらしい。
てなわけで、俺はギルディートにアースゴーレムを擦り付けに動く。
ギルディートを挟むような感じアースゴーレムと対峙し、
スキル:隠れ身
姿を消してみせた。
「ちょっ?!」
俺を追いかけていたアースゴーレムは、目の前に居たギルディートにターゲットを移す。
さっきまで4体でも頑張ってたんだから、何とかしなさい。
「ちゃんと擦り付けると言ったでござるよ。ほら、集中して頑張るでござる。」
喋ったことでスキルが解けて姿を現した俺を、恨めしげに見てくるギルディートだが、昨日まで楽してたんだから、その分の苦労はすべきである。
さて、問題はマリッサだ。
槌は相性のいい武器なのだが、いかんせん、レベルが足りてない。
ダメージを与えられていないし、与えられても1とか。稀にクリティカルが出るが、クリティカルは攻撃力を倍化したはずだから・・。
今のマリッサがレベル25として、適性攻撃力も25前後。クリティカルで50になるから・・・適性レベルの通常攻撃が入るのと同じくらいのダメージが通るわけだ。
これが続けば倒せそうなものだが、低確率で一撃だけ入る、というハードモードだ。
「何かしら。アドバイスがあるというのならありがたく受け取るのだけれど。」
アドバイスねぇ。
さっきから、捥げた頭のあった部分を集中して狙っている。
罅が入っているし、脆そうに見えるのだろう。
「他のゴーレムと違って回復しないんだから、焦ることはない。
多分、関節の方が弱いと思うから、腕を捥いで弱体化を狙ってもいいかもしれない。
ただ、レベルが足りてないから、攻撃が通るとも言えないんだよな。」
ジロ、と胡散臭げな視線を送ってくるマリッサ。
なんだよ。マリッサまで味方だと思ってくれないのか?俺だって傷付くぞ。
「『ござる』は何処に行ったのかしら。」
「…!でござるッ。」
ごまかせたかな?誤魔化せてないだろうな。
俺のアドバイスを実行に移したのは、ギルディートだった。
スキル:刈刃一輪
関節を狙った一撃だが、関節を守っていた石を砕くに止まる。
さすがに切断、とまではいかないか。
あと、“ゴーレムは機械系なので、電撃系のスキルを叩き込む”なんて話もあるが、ゲームでも出てきてないし、この世界でもそれができるか分からないので言う必要は無いな。
電撃系のスキルなんて持ってないだろうし。