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朝風呂

翌朝。


「コケコーーーー!」「ケコーー!」


こいつのおかげで目が覚めた。

朝日を見たらとりあえず鳴き声を上げないと気が済まないの?

まだ眠いんだけど。


甘えてくるな。臭いんだ、お前は。


外を見ても明けたばかりじゃないか。

時間はそこそこあるな。


とりあえず、だ。

俺はたらいを持ち上げる。


「コ?」


「出かけるぞ。近くの水場でお前を洗う。」


部屋を出ると、宿に人の気配は無く、薄暗い。みんな寝てるんだろう。なんか寂しいな。



宿の外へ出て、スザクを歩かせる。


宿で洗って大騒ぎされたら、たまったもんじゃないからな。


スザクはビクビクと俺の足元から離れようとしなかった。トラウマか。


西の門から出た俺は、南に向かった。

西の平原の南側には川があるのだ。コランダより下流なので、迷惑がかかることは無いだろう。多分。

途中、何度かスザクを置いて行きそうになり、「コケ」「コケ」と呼び止められた。

悪かったよ。


たらいに水を張ってみたが、冷たい。

俺はレベルのおかげで多少の冷たさは問題ないが、マリッサも寒がってたし、スザクも冷たかろう。

石を積んで釜を作り、鉄鍋とトーチを使って水を温める。


水を触って温度を確かめる。こんなもんだろう。

熱かったら水を足そうと思っていたが、適温だと思う。


たらいにお湯を少しだけ移し、鍋とトーチを片付ける。

鍋にお湯が残っているが、アイテムボックスに入れておけば冷めないからな。

そして石鹸を出す。昨日、俺が使ったそこそこの奴だ。

あんまり良いのを使ってももったいないし、泡立ちの無い石鹸では汚れが取れたかどうかわからない。


俺は、若干、火を見て腰が引けていた様子のスザクをむんずと掴み、お湯に押し込んだ。


スザクは最初こそ抵抗を試みたものの、すぐに大人しくなった。

害のあるものではない、と判断できたのだろう。やはり頭がいい。


しばらく体にお湯を馴染ませた後、石鹸を泡立て、スザクに擦り付ける。

と、ほのかにそこはかとなく漂っていた匂いが、溶けてほどけたように立ち上る。っさ!ものすんごく、っさ!

泡が一瞬で消えていく。お湯で流し、再び石鹸を泡立ててスザクに擦り付ける。

泡が消えていく。お湯で流し、再び石鹸を泡立ててスザクに擦りつけ、お湯を入れ替える。

・・・繰り返すのが面倒くさくなって、直接スザクに石鹸を擦りつけた。

ペット用に買い足したブラシを使ってジャブジャブ洗う。


頭は石鹸水の付いたタオルで何度か拭いた後、丁寧に濡れタオルで拭き取った。


・・・。

なんか、俺に変な匂いついてないよね?


朝風呂は入念にやろう。

いや、今ここで入っちまうか?


見回してみたが、視線を遮れるものが何も無い。

今度、そういうものも買い足しておこうと思う。


あと、トーチと大容量の鍋とたらいか桶があれば風呂に入れるな。

鍋だけでも地面に穴を掘ればもしかしたら・・・。


久しぶりにメモ帳に書き足す。


スザクは綺麗になったと思うのだが、茶系の雄鶏なので、イマイチわからない。

タオルで水分をできるだけ取ってやり、トーチの火を付けてやる。

火が怖いようだが、すまん。俺は乾燥の魔道具を持ってないんだ。


使った道具はスザク用としてまとめてアイテムボックスに入れる。

他のと混同しないようにしないといけないからな。


まだ乾いてないが、トーチに近寄らないため、乾かしながら帰る。

今日も晴れているし、そのうち乾くだろう。

帰り道も相当ダッシュさせたので、町に着く頃には水気が飛んでいた。

うん、毛色も明るくなったし、ふわっとしたんじゃないか?



西門に戻ってくると、ぽつぽつと人が起き出して来ていた。


挨拶をしながら、宿に向かう。


うーん、ここまで、全裸事件に触れてきた人はいないんだよなぁ。

気にしてるのは俺だけなのか、それとも完全に禁句(タブー)なのか。

・・・後者のような気がする。


宿に戻り、勝手にスザクを部屋に入れたことのお詫びをしたら、これからスザクを部屋に入れる許可をもらった。

桶に入れて歩く必要もないってさ。


で、スザクは町に入ると、俺の傍を離れようとはせず、トイレ、風呂、食事とどこまでも着いて来た。

何故か体を洗ってる時に、何も入ってない桶に身を沈める仕草をして見せたので、風呂が気に入ったのではないかと思う。

間違ってないんだが、それは俺が入りたいんだよ。


臭くなくなったので、俺が接触をそれほど嫌がらなくなったせいか、肩に止まってみたり、頭に乗ってみたりとやりたい放題だ。

コミュニケーションを取ってるつもりなのか?



外に出ても着いて来るつもりのようなので、西の平原でグミーと戦わせてみた。

グミーは、おそらくTFFで最も弱いモンスターだ。

フラウワという、攻撃さえして来ないモンスターもいる事はいるが、あれは植物枠でノーカンでいいと思う。

最低限、逃げたり身をかわしたりできないと困るので、動きを見たかったのだ。

・・・泥仕合だった。

HPポットを使ってスザクのレベル上げを試みようとしたが、いつまで経っても戻ってこない俺の様子を見に来た2人に止められた。


「馬鹿なことをしていないで、遺跡の謎を解き明かすのよ。」


「そんな暇があったら攻略を進めるぞ。」


チッ、これだからPT(パーティー)プレイは・・・。

おっと、長い事ソロでやっていたせいで、協調性が失われているようだ。

メンバーと協力。PT大事。うん、気を付けねば。

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▽お知らせ▽

◆高頻度で最終ページ《(仮)タイトル》は書き込み中。
加筆・修正により、内容が倍以上増える事があります。
たまに前ページの内容を見て加筆する事もあります。

◆後追い修正の進行状況:現在152ページ。H.30 5/5

◆作者が混乱してきたので、時間がある時にタイトルに日数を入れます。
あとがきに解説も入れていくつもりです。いや、無理かもしれん。
がんばるー(棒読み)

▽ぼやき▽
3月には書き終えるつもりだったのに、5月になってもまだ序盤ってどういう事だ?
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