2日目:またつまらないものを狩ってしまった
俺の知っているTFFは2Dマップだ。目線は固定。北は常に上だし、南は下だ。
古参プレイヤーともなれば、スクリーンショットを見ただけでだいたいどこなのかわかったりする。
しかし、この世界は現実だ。植物も、土も、空も、全てがリアルだ。ゲームとはまるで違う。
どちらを向いたら北とか都合のいい世界じゃない。
カーナビよろしくマップ機能を確認しながらじゃないと、自分がどっちを向いて歩いているのかもわからない。
自分中心にマップが表示され、ある程度の拡大・縮小はできるものの、町から離れればマップ外になる。
つまり、何が言いたいかというと・・・・・
「迷った。」
マジでここどこよ?
ゲームの世界で買い込んだ帰還の札が山ほどあるので、さほど困りはしないが、焦らないわけではない。
初心者時代から持っている「捨てられないアイテム」である筈の地図を取り出してみたが、ゲーム時代のように現在地が表示される事はなかった。
念じてみたり、光に透かして見たり、内なるパワー的な物を送ったりしてみたが、何も起きない。
街や道の描かれた、ただの紙である。
土が見えていて道に見えなくもないところを歩く。
人が歩いてできた道なのか、獣道なのかも分からないが、少しだけ歩き易いのだ。誤差の範囲だが。
あと、ゲームよりもモンスターとのエンカウント率が低い。
30時間ほど歩いて一度、虫型のテントというモンスターを倒して以降、再び遭遇するまで1時間近くかかったと思う。
テントとの戦闘は一瞬だった。
ボーリングの玉みたいなのが向かってくる→「なんか出た!」と驚き、防ごうと剣を構える→ズバッ(通常攻撃)と斬れる→テント死亡、という流れだ。
グミーはグラフィックと比べて違和感はさほど感じなかったのだが、さすがに虫系モンスターは少し気持ち悪かった。
素材というか、真っ2つにカットされた死骸に触りたくなかった程度には。
何かに使えるかもしれないので、拾ったが・・・
アイテムの収納についてだが、ゲーム上はアイテムウインドウと呼んでいた。
ウインドウから出す、という表現も何だかおかしい気がするので、仮にアイテムボックスと呼称することにしようと思う。
とりあえず、モンスター素材は所持限界いっぱいになるまでは全て収納していこうと思う。
モンスターの分布はゲーム時代と変わっていないようだ。
しかし、生態に違いがあるのかもしれない。
「・・・・・・・。」
ブーン。ブブブブブーン。
多分、威嚇されてる、この、妙に大きな蜂達に。
サイズは先ほど遭遇したテントと変わらない。
ボーリングの玉とか、バレーボールとか、サッカーボールとか、そのあたりの大きさだ。
あらやだ、キモイ。
進むと増える。退いても増える。
どこに巣があるかわかれば避けて通るんだけどね?
相手はフォレビーというミツバチ。
序盤の金稼ぎにうってつけの相手で、ドロップは勿論蜂蜜だ。
蜂蜜は、HPポット(小)程度の回復もするし、回復アイテムや調理アイテムの素材にもなる。
上級者が狩るほどは良い値段は付かず、高く売れないが、安定してHPポット(小)と同じくらいの価格で売ることができたはずだ。
しかし、ゲームでは可愛いグラフィックだったけど、こいつらもやっぱり虫なのよ。
キモイ。触りたくない。
なので、できれば穏便に済ませたかったのだが。
「イタッ。・・・うん?」
頬にちくっと痛みを感じて、攻撃されている事に気がついた。
ダメージは・・・食らってないか、この瞬間に自然回復したか。
しかし、こいつらに触れられた覚えはなく、刺されるはずがない。
よくよく見ると、近くに飛んで来て、お尻をピッと動かすモーションの後に何か飛んで来ている。
何かって毒針なんですけどね。
こいつら、刺してこないと思ったら中距離タイプかよ!
どうも、弓矢や弾丸と同じような仕組みらしく、何度でも飛ばして来やがる。
攻撃されてるんじゃしょうがない。
相手が穏便に済ませるつもりなら、俺だって手を出そうとは思わなかったさ。
目の前のフォレビーを撃つ。撃つ。撃つ。
スキル:弾丸嵐!
目の前のフォレビーが粉々に吹き飛び、木々の枝がボロキレのようになり、地面がめくれ上がった。
明らかにオーバーキルだ。これでは環境破壊だし、素材も拾えない。
CC:リーフレッド
俺は群がるフォレビーを一閃した。
・・・・・。
またゲームと違うところを発見した。
虫って尻と胴体が離れても生きてるのね…。
とても気持ちが悪いです。
あと、通常攻撃ってゲームだと単体攻撃だったんだけど、2匹目以降も剣が届けば普通に攻撃が通るみたいだ。
いや、当たり前といえば当たり前なんだけどさ・・・。
こうなるんではなかろうかという当たりをつけてCCしたわけだが、正解だった。
で、倒しては死骸を回収していると、近くの藪から追加フォレビーがたくさん現れたよ!
そこに巣があったのか!そりゃ、ここをウロついてたら攻撃してくるわけだ。
でも殺っちゃう!
蜂蜜ゲットしたいんだもん!
今度は体当たりまでしてくる。好戦的だ。
どんだけ居るんだよというぐらい大量のフォレビーを倒したが、序盤のモンスターなだけあって経験値は微々たる物だった。
ログ、と念じると経験値が入っている様子がわかる。
経験値を2手に入れました。
経験値を2手に入れました。
経験値を2手に入れました。
これがずらーーーーっと並んでいる。
ちなみに、レベルが上がると適性レベル以下のモンスターからの取得経験値が下がるのでこのザマだが、序盤は60くらいの経験値がもらえたはずだ。
人を見つけると攻撃してくるアクティブタイプのモンスターなので、レベル上げおいしい、獲得アイテムおいしい、クエストもあるので3度おいしい人気モンスターだった。
アクティブタイプとはいえ、ここまで群がられた経験はゲームでも無かったのだが。
そして、実際に群がられてみて思う事は、ミツバチだってただの虫って事だ。
人気モンスター?虫なんですけど!
可愛らしいグラフィック?リアルなんですけど!
当たり前なのだが、瓶の状態の蜂蜜なんてドロップしなかった。
アイテムドロップ方式じゃないのか?それとも、普通に巣を採取しないといけないの?
やっぱりゲームとは違うんだなぁ。よしを。
で、湧いてくるフォレビーも少なくなってきたので、フォレビーの巣にお邪魔してみる事にした。
木の根の下か・・・。
スコップとか気のきいた物は持ってないので、大剣をスコップ代わりにざくざく掘り進む。
武器をこんな扱いしていいのかとも思ったが、さすが250レベル以上しか装備できない武器なだけあって丈夫だし、植物の根だろうが石だろうが、刺せば通るので使い勝手は悪いが問題ない。
そしてようやく到達。その一部を大きく露出させる。
俺を出迎えたのは巨大な蜂の巣。
何層にもなっているそれは、確かにテレビで見た事のある蜂の巣そのものだ。
これを適当にカットすればいいのか?この辺をもらおうかな?
そして、さっそく切り出そうとした俺に「コンニチハ!」するのは巨大な幼虫。
「ぎええええええええええええ!!!」
俺は今日2度目の絶叫を上げたのだった。
-解説- 読み飛ばしOK!
2Dって?:平面画像。3Dは立体画像となる。
スクリーンショットって?:ゲーム、PC上での写真。はいチーズ。
モーションって?:動き、動作。
アクティブタイプって?:ゲーム上で、“プレイヤーを見つけると”攻撃してくるタイプのモンスターの事をアクティブモンスターと呼ぶ。逃げ回っても、どんどん集まってくるので大変な目に遭う。
逆に、“プレイヤーが攻撃しない限り”、もしくは“攻撃しても”攻撃を返して来ないモンスターの事を、非アクティブモンスターと呼ぶ。モンスターの横を素通りできる。
アイテムドロップって?:RPGゲームにありがちな、モンスターを倒すと一定確率でアイテムを落とす方式。何でモンスターがこんなもん持ち歩いてんだ?とか、そんなモン持ってたら使えや!とか、そういうツッコミどころ満載なアイテムを持ってるモンスターが結構いる。
テントって?:森に生息する天道虫型モンスター。適正レベルは5~10くらい。体当たりくらいしかできない。
フォレビーって?:森に生息する蜂型モンスター。適正レベルは15くらい。ミツバチとスズメバチの特徴を併せ持つ。
自然回復って?:何もしなくても起きる回復。座る事で回復が早まるゲームが多い一方、自然回復自体が存在しないゲームも多くある。