しばしの休憩
「・・・・・」
俺は、広場の中央に盛られた土の山に突っ伏していた。
もう、色々と限界であった。
2人は解体というか、クロゴッキーの死骸を始末している。
クロゴッキーの触覚は長くて感度が良い為、魔術系の道具や術式の媒介になるんだそうだ。
外骨格と呼ばれる表皮も初心者の装備素材として売れるらしい。
マリッサが解体してくれると言うので、即刻「絶対にいらない」と返答した。
2人で分け合ってくれ。そして、その残骸をどこか見えないところへ捨ててきてくれ。
あの後、奮戦の甲斐あってクロゴッキーを殲滅した俺達は、再び部屋に踏み込んだ。
そこには、まだ残党がいたが、マリッサとギルディートが対処してくれた。
奴らの糞や、共食いで死んだらしいゴッキーの残骸で部屋は汚らしく、こもった空気が臭い。
気分が悪かったが、探索してみると、ゴーレムの眠る穴があった。
卵と幼虫でびっしりだったので、トーチで燃やしているところだ。
俺は全部燃えてしまっても構わないよ。
残念な事に、まだ時間はあるし、遺跡に清掃スタッフを呼ぶというわけにもいかない。
異世界に清掃業者があるのかどうかは不明だが。このまま探索続行かよ・・・。
そろそろ家に帰ろうよ・・そう言いたいが、まだ日は高いし、アイテムを消費したわけでもない。
もうGはあれで終わりかもしれないしな!(願望)・・もうGはあれで終わりかもしれないしな!!!(切望)
・・・・・。
奴ら、どうして平気なんだ?
ここで出現する主なモンスターは
・ゴーレム系 (遺跡の守護者みたいな感じ?マッドゴーレムが多い。)
・カフ系 (ミイラっぽいやつ。ドッグカフ、キャットカフという犬型や猫型も存在する。)
・クラポリーム (植物?カビ菌か何かかもしれない。俺的には要注意モンスターだと思う。)
・フシムシ (ムカデっぽいやつ。絶対に遭遇したくない。)
・クロゴッキー (Gっぽいやつ。絶対に遭遇したくなかったが、既に・・・。)
といった感じだ。モンハウのメインはマッドゴーレムのはずなんだが。
部屋によってはボスっぽく他のゴーレム系やカフ系が混ざる事もあるけど、基本、モンハウはマッドゴーレムのはずなんだが!
虫なんかは、時々遭遇するだけだったはずだ!どうなってんだ?
そういえば、槌キャラのイベントではフシムシと戦う描写も出たな。
溢れ出てくるのは虫なのか??嫌すぎる!!!
しばらくすると2人が戻ってきた。
早かったな。もっとゆっくりしても良かったんだぞ。割とマジで。
アイテムボックスはいっぱいになってないか?大丈夫か?・・・そうか。大丈夫なのか・・・。
とりえず、値のいい触角だけアイテムボックスに回収し、他は遺跡の中で手に入れたアイテム次第で持ち帰りを決めるのだそうだ。
膨大な量なので持ち帰るのが大変だが、触覚だけなら軽くてアイテムボックスの容量を食わないのだそうで。
「どうせ夜になったら町に戻るから、色々置いて来たのよ。まだまだ入るわ。」
・・・さよか。
初めて会った時のマリッサは、荷物がほとんど持てなかったからな。
でも色々入れたままで良かったのに。ほら、冒険はいつも何が起きるかわからないからさ。
「俺はマリッサとはレベルが違うからな!多少の荷物なら持てるぞ。」
得意そうに胸を張り、耳をピコピコさせるギルディート。
さすがは荷物持ち。俺は、絶対に持つ気はないけどな。
悲報は続く。
「自警団の人に会って、話をしたわ。
解体に来てくれるみたいなのよ。ダンジョン探索に集中できるわね。」
まーじーかー。
あの人らの虫耐性はハンパ無いからな。食うぐらいだ。
・・・・・まさか、Gは食わないよな?
解体をさせてお茶を濁して帰るのは無理だったかー。
帰れないなら仕方が無い。空気の良い外で作戦を練っておこう。
基本的には俺が先行してターゲット・・つまり敵の視線を集め、敵意を俺に集中させる。
いけそうならそのまま進み、きつかったら退く。
状況に応じて、2人に援護してもらって敵を殲滅する。
まぁ、さっき経験したそのままの流れだな。
で、扉が開いた理由だが、遺跡のトーチを差す窪みが仕掛けになっているのだろうと考えられた。
仕掛けが違う可能性もあるが、とりあえずあの窪みと同じものを探してみる事にしよう。
「でも、あのトーチって引っこ抜けなくて、回収できなかっただろ。
予備もあったみたいだが、あんなところに放置してたら壊れてるかもしれないし、足りないかもしれないだろ。どうすんだ?」
あの窪みにトーチを嵌めると、遺跡の何らかの作用が働くのか、炎の質が変わる。
熱を帯びず、周囲を明るく照らすだけのアイテムに変化するのだ。
その代わり、まるで遺跡の一部になってしまったかのように取り外すことができなくなってしまった。
あと、Gの卵などを燃やしてるトーチが1本、遺跡に残されている。
「トーチならまだある。」
ゲームの時は消費アイテムだったからな。燃料なんて存在もしなかった。
使った瞬間1つ減り、時間が経つと効果も切れる、バフみたいなアイテムだった。
だから、普通に買い溜めしてある。いざという時に切らすとイラッとするアイテムだからだ。
マリッサに1つ渡し、自分の分も取り出す。
「はぁ?」
気持ちはわかるが、あるものは仕方が無い。
しかも、現実と化した世界では減ってしまうアイテムでもないのにサブキャラ達も漏れなく沢山持っている。
だって元々消費アイテムだもの。
今は燃料もあるし、本体も普通に売っているので、使ったら無くなってしまう薬系アイテムと違い、ケチる必要が全く無い。
ギルディートが物欲しそうな顔をしていたので渡しておいた。
「馬鹿なのよ。トーチを補充しに戻る、と言えば帰れたのに。馬鹿なのよ。」
あの、マリッサさん?聞こえてますけど。