表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
427/430

ピカー!!ズバー!!って(仮)

ォォオオン ォォオオン ォォオオン


暗いような、明るいような、境界線のような場所。

深い眠りのような、優しいまどろみのような、不思議な感覚。

安らぎのような、切なさのような、そのどちらでもない感情。


パチリッ……ッ


頭から背中にかけて、電気が走ったような感覚と共に覚醒する。


眠っていた?


そう、眠っていたらしいが、気が付いたら摩訶不思議な空間に体育座りのようにして収められている。

なんとなく、安心できる空間にいるような気がしていたが、頭の回転が戻ってくると共に、自分が抱いている間隔よりも不味い状況ではないか?と思えて来る。


気泡。

俺を包んでいるのは、シャボン玉か水中に浮いているような、謎の物体が構成する空間だ。

籠った周囲の音や、上から降り注ぐ揺らめく光、そして極めつけは泳ぐ魚にサンゴ。

目に映る光景は、ここが海の中であることを如実に表していた。


俺は、昨日の戦闘で油断し、クラーケンに捕獲された筈である。

この謎の泡に包まれ、水の底へと沈められていったのは覚えているが、身体の水気が追い払われて暖かくなり、そのまま眠ってしまったのでそこから先の記憶は無い。

間抜けだが、精神攻撃・・・おそらく、敵意を失うとかそういうものを食らって、味方だと誤認したという事なのだろう。

そこまでは分かるが、その後、俺が何故生きているのかが分からない。


敵の大きさ、再生力。どう考えてもレイドボスだ。

俺一人が太刀打ちできるものじゃない。

が、敵の攻撃がかわせて、自分のダメージは最小限で、一方的に攻撃ができ、回復する余裕さえあった。

下手に状況が良すぎただけに、勘違いしてしまったのだ。

・・・まぁ元々はどうしても倒そうという意図はなく、引き付けてどこかにおびき出そうと思っていたのだが、やれるだけやってからと粘ってしまったのが不味かった。


これまでの状況は置いておくとして、今の状況だ。

この気泡の中は呼吸ができ、服は乾いているが不快ではない程度に湿っぽい空気。気泡の壁を叩くと驚くほど柔らかく、だが弾ける気配はない。

膜なんてないみたいに水でしかなく、にもかかわらず、突っ込んだ手も服も全く濡れない。

ならば脱出は容易かと思えばそうではない。

抜け出そうとすると、気泡部分は俺の頭から胴体にかけてを覆いつくし、手の先と足が気泡の外に出たようになるのだが手足で水をかけども全く推進力にならない。

まるで宇宙空間に放り出されたように、ただ同じ場所でジタバタするのみである。


現在のキャラクターは補助キャラのクランベールである。

正直、胸さえ無ければこちらの方が元の体形に近いのだから悲しくなる。

CC(キャラチェンジ)をしてスイバを起動し、強引に突破する事も考えたのだが、思い留まっているのには理由がある。

状況の把握ができていないのもあるし、果たしてスイバに効果があるのか不安に思ったのもある。

気泡の周囲に、攻撃に使われた触手とは別の触手のようなものが張り巡らされていて、強硬手段を取ると不味いような気がしたのも事実だ。


だが、自分が生かされているあたり、クラーケンに敵意は無いんじゃないかと思ったのだ。

いや、最悪の可能性として、既に卵を産み付けられているとか、要するに危害を加えられた跡である可能性も――


『そんな事はしないからの?!』


ビクッ!!


後頭部をはたかれるような感覚で、声が聞こえる。

声?声というより・・・自分の心の声が、自分の考えとは全く関係のないところで流れているというか。

これは・・・


『そう、念話じゃ。』


「…まさかとは思うが、クラーケンか?」


『うむ。』


クラーケンの話す(?)ところによると、先ほどの身体を電気が走ったような感覚は、念話の接続ができた事で発生したらしい。

その後、俺に負担がかからないように、俺が状況把握に勤しんでいる間にゆっくりと調整していたのだが、どうも俺の思考が悪い方に流れだしたのを察して声を掛けたのだという。

俺が声を出さなくても会話できるが、あんまり弱かったり瞬間的な思考までは読み切れないそうだ。

あと、色々調整でき、クラーケンに性別はないというので、落ち着いた女性の声に変更してもらった。

俺の意思とは関係ないとはいえ、頭の中で一人漫才をやっているような感覚が嫌だったのだ。


簡単な状況説明の後、大船を襲って騒がせたことを詫びられた。


「・・で、一体俺に何の用だ?」


大事だとは思うが、詫びる事が目的で捕獲されたとは考えにくい。

何故なら、相手は広い海を生きる異生物。人間関係に悩む必要なんてないからだ。

そして、理性のある存在である以上、意味も無しに船を襲ったり、人をさらったりしないだろう。

・・・ペットや家畜として、という可能性も無きにしは――


『そんな事はしないと言うておるではないか!』


泡の外からピウ、と悲し気な音が聞こえた。

クラーケンさん近くにいるんすかね?!

いや、状況的にいるとは思うんだが、見渡す範囲には見えないんだよね。

とりあえず勝手に思考を読まないでくださいお願いします。あと要件を話してもらいたい。


『ああ、そうじゃの。実は恥ずかしながら、わしの身体に寄生虫が巣食っておっての。

追い出そうにも、身体の肉の中を泳いで逃げ回り、いつの間にか繁殖しおって手が付けられんようになってしもうた。

今のところ生死にかかわる問題では無いがの、強張って動きにくいわ、痛いわでかなわんのじゃ。

奴らが死んだり気絶したりすれば追い出せんじゃがの。

・・・という事で、あの“ピカー!!ズバー!!バリバリー!!”ってやつで、わしの身体の中の寄生虫を追い出すのを手伝ってくれんかの??』

※クラーケンは精霊獣のような存在です。人化しません。のじゃロリでもありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
▽お知らせ▽

◆高頻度で最終ページ《(仮)タイトル》は書き込み中。
加筆・修正により、内容が倍以上増える事があります。
たまに前ページの内容を見て加筆する事もあります。

◆後追い修正の進行状況:現在152ページ。H.30 5/5

◆作者が混乱してきたので、時間がある時にタイトルに日数を入れます。
あとがきに解説も入れていくつもりです。いや、無理かもしれん。
がんばるー(棒読み)

▽ぼやき▽
3月には書き終えるつもりだったのに、5月になってもまだ序盤ってどういう事だ?
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ