とりあえずの決着(仮)
何か悪い事をしてしまっただろうか?とでも言いたげに挙動不審なスザク。
いや、今回の件はアルデリックが悪い。
もしスザクのせいにされそうになっても、断固として抗議するぞ。
それにしても、スザクはどこまで状況を把握してるんだろうか。
鳥って目が良さそうなイメージがあるけど、地上の鳥にも適応されるんだろうか?
鳥目って言葉もあるし、暗いからあまり見えてないのか?
閃光も、もしかしたら直に見てしまったかもしれない。
見た感じ、しっかり歩けているように見えるが・・。念の為、後で浄化をかけてやろう。
今は・・・ちょっとCCできる状態じゃないからな。
スザクを落ち着かせがてらモフっていると、俺の心も落ち着いてくる。
さて、これからどうすべきだろうか・・・・・。
護衛の人が我に返る。そして、周囲の状況を把握した瞬間、
「うわぁ・・・・・。」
まさに、困った上司が最大限にやらかしたのを見た部下の反応をした。
というか、汚物を見るような目をして顔をしかめていた。
まぁ、事実として汚物なので、当然の反応である。
部下なんだからやれよ、というのも可哀想な話ではあるが、こいつの汚したものの後始末も、こっちじゃやりたくないし、誰かにやらせたくもないぞ。
こっちの船に乗ってた奴のゲロとは違う。
ある意味、敵対していた嫌な人物の、自業自得の行動の結果である。
責任者を探してウロついていた冒険者が、アルデリックの護衛が、職人が、次々とこちらを発見して集まって来て、異臭の根源に気付き、甲板に避難する。
甲板に避難した奴らは向こうの船の異常事態に気付き、野次馬をしたり指示を求めて来たりする。
俺の指示は「むやみに騒がずとりあえず待機。できれば船室で。」、あと酔ってなさそうな冒険者にマリッサ達を探して呼んでくれと頼んだ。
俺の指揮力なんぞ、中小企業の中間管理職程度。こんな異常事態に対応できる筈もない。
副船長は、俺がスザクをモフりだす前に我に返り、船長の所に行くと言ってこの場を後にしている。
アルデリックと行動をしていた護衛の人には現場保存に協力してもらい、補佐の人が来たら指示に従うようにと頼んだ。
そちらの事ははそちらで、という事だ。つまり、この件で助けたりしないという意味だ。
まぁ、引き摺って動かされても大迷惑なので、ある程度の手助けはするつもりがあるが、最低限だな。
向こうの船への対応は、火災の様子を見て、手助けが必要そうなら行く準備はあったが、すぐに火は消し止められたようだ。
この船における代表者という代表者が甲板に集まり、情報交換をしたが、大した情報は得られなかった。
そして、補佐的な人が鬼族の商人から携帯トイレ的な物を購入し、携帯トイレの中身の猫砂みたいなものを撒いたり、褌を買って衣服の上から巻き付け、その上からタオルを巻き、さらにローブを巻いて臭い物に蓋をしにかかる。
その際、転がされたアルデリックが目を覚まして癇癪を起したが、補佐の人に淡々と状況を説明され、周囲を見回して自分の痴態を悟り、大人しくなった。
状況説明の最中、一瞬、俺が抱えているスザクに鋭い眼光を向けたが、補佐の人が顔面を掴んでいたのでびびった。
あの人、怒らせちゃあかんタイプや。
そして、俺は次々と衝撃的な報告を聞く羽目になる。
救護室での買収行為があり、買収された振りをした冒険者が渡されたアイテムを職人に見せて裏を取り、告発してきた。渡されたのは、大規模な攻撃魔法を誘導する装置。
他にも、同じものを仕掛けようとしていた調査員が捕縛されていたり、仕掛けられた装置が回収されたりしていた。
驚いたのが、調査団の船に乗り込んでいたらしき、メンバー外の者が2名、捕縛されていた事だ。
潜入専門の人員らしく、最初は顔を隠していたらしいが、今は武器と一緒に怪しいものは取り払われている。
この2名の運が悪かったのは、鬼族の商人が釣りを初めてしまい、いつまで経っても潜んでいた小舟の傍から離れなかった事。
1人は正面から突破を狙い、もう1人はそいつに気を取られたところを不意打ちをするつもりで待機。
速やかに排除して、他に目撃者のいない状態で潜入する予定だったようだ。
捕まったのだが口を割らない為、推測となる。
後に明かされる事だが、予想以上に鬼族の商人が強く、しかも仲間の商人たちが思った以上にいた為、即座に捕縛されたようである。
「忍者ごっこしてた。あ、かくれんぼみたいなやつね。」「暇だったんだよ。船旅ではよくある事だ。」「味方を釣るつもりだった。敵が釣れるとは思わなかった。」これがその時活躍した商人達の弁である。
ちなみに、鬼族はかくれんぼと言ったが、内容はサバイバルゲーム、通称サバゲーに近い。
「鬼ごっこ」と言うと、鬼族の人達は侮辱されたように怒るので、報告書では「高度なかくれんぼ」と書かれている。
そうとは知らず、サバゲーの舞台に飛び込んだ潜入部隊は、敵味方に分かれていた鬼族の集中攻撃に遭い、捕まった後で「そういえば誰だコイツ?」となったらしい。
そして、捕縛された後も「切っても切っても解けない縄」に苦戦し、隠し持っていた縄抜けの道具は全て取り上げられたという。
鬼族の人達、何やってんの???
ともかく、調査団が交渉や真っ当な調査をする為に派遣された訳ではない、という事が分かった。
わかった、というか、分かってたんだけどね。
調査団員は、事情を知る者・知らない者問わず全員拘束された。
暴れたりするもの以外は形式的な捕縛で、反抗的な者とそうでない者の収容部屋を分けた。
何しろ12名いるからね。一部屋だとちょっと暑苦しい。
汚ぶ・・アルデリックと潜入部隊は同室だ。
反抗的だった奴は、別室にしてくれと何故か口が軽くなった。
着替え?気になるなら自分で用意しな。あったとしても味方用しかありません!
と、言いたいところだったが、多めに配置した見張りから臭いと苦情が出た為、汚れたものを収納させた。
奴の下半身は今、下着すら着けていないタオル・ローブ装備だ。
ちなみに褌は拒否したし、衣服の上から着けていたやつは汚れていたので、一緒に収納されている。
本人が拒否したんだから、仕方がないよね。
拷問とかは全くしなかったんだけど、割と素直に応じるものが多く、聞き取りは順調に進んだ。
むこうの船は・・・ポンコツ兵器、もといインスタントウエポンを仕舞っておかなかった、こっちがやらかしてしまった扱いかと思ったんだが、詳しく聞くと、そうでもないようで・・・。




