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警備隊員、困惑する(仮)

俺達は、国境警備隊。

巷じゃ「戦争派」だとか言われているようだが、別に戦争をしたい訳じゃない。

むしろエルフォルレの肥沃な大地を狙う他の大陸の奴らをけん制し、戦争など起こさせないのが俺達の仕事だ。


と、最近まで思ってたんだが、どうも巷の噂の方が正しいらしいと、最近になって感じるようになった。


と、いうのもだな・・。


現在、我が国は、非常に危うい局面に立たされている。

少なくとも、戦争派と呼ばれる派閥が「戦争をして他国から資源を奪わなければ」という声を上げるのを咎める事ができない程度には。


まず、謎の疫病の発生。上層部で国政を担っていた者達が次々と倒れ、調査をした者も、まるで口封じに遭ったかのように倒れた。

その倒れた上層部が、たまたま(・・・・)戦争派とは敵対する勢力ばかりであった為、戦争派の勢いは強まった。

幸いにも治癒魔法で完治したり、症状を抑える事ができたのだが、治療に当たっていたヒーラーも次々と疫病に侵される。

頼みの綱であった聖女様も亡くなった。

「疫病を恐れる必要は無い」という演説の直後だった為、しばらくは教会が隠ぺいしていたようだが、それまで精力的に活動していた聖女様が突然、沈黙したのだ。

そりゃ、すぐにバレるに決まっている。

この疫病にはいくつかの法則があり、その法則の1つが「治療する者がかかりやすい」だ。

他にも、有力な物から眉唾なものまで、例えば「魔法使いがかかりやすい」だの「戦争派がかかりにくい」だの色々囁かれているが、とにかく、教会のヒーラーが次々と倒れた。

そして、疫病の歯止めが効かなくなった。


交易・国境の断絶。

幾つかあった、他国との交易ルートが潰れた。

魔物モンスターの発生、がけ崩れ、事故、その他もろもろ。

1つ2つならともかく、すべて潰れたのは怪しいとしか言いようが無いが、十数年に一度、少しずつ潰れて行った。

最初のうちは復旧も早かったが、上層部がうまく機能しなくなり、復旧は遅れた。

それで済めば良かったのだが、まるで復旧を妨害するようにモンスターが増えたり、対処しようとした冒険者が野盗に襲われたりと、不幸な事故が続いた。


国に活気が失われ、他国の陰謀論が囁かれる中、それでも消えなかった噂がある。

「本当に他国の(・・・)陰謀なんだろうか?」



事の発端は、エルフ族の少年が「“人喰ひとぐらい”を討伐したので報酬を出せ」とギルドに申請した事から始まった。

持ち込まれたのは、ドラゴン系モンスターと思われる黒い腕。

状態が悪く、しかも腕では死んだかどうが分からないので討伐証明にならない。それがギルドの見解だった。


だが、情報は共有された。何しろ、ドラゴン系モンスターの腕だ。

あれを単独でどうにかするなど、レベル100を超える伝説級の人物だけであろう。


そして、ほぼ同時期に、“人喰ひとぐらい”の片腕の無い身体が発見された。

やはり、“人喰ひとぐらい”は討伐されていたのだ。


そして、討伐したとされるリフレという人物に対し、監視が付くようになる。

容疑は「他国のスパイ」。

実際、ちょくちょく姿を消す怪しい人物である事には間違いなかったが、同時に疑問も沸いた。


人喰ひとぐらい”は、航路復旧を邪魔する厄介な魔物モンスターだった。

それが倒されたのだから、普通は、それを喜びこそすれ、監視を付けて動向を探ろうとするのは些かおかしいのではないだろうか?

仮にスパイだったとして、“人喰ひとぐらい”の討伐などするものだろうか?

敵性勢力であれば、我が国の疲弊はむしろ望むところであるはずだ。


そして、明らかに嘘をついているエルフ族の少年に、討伐の成果を持っていかせようとする動きは、あからさま過ぎてドン引いた。

まぁ、これは裏事情を知っている奴だけなんだろうけど、えぐい。

何しろ、一度「討伐証明にはならない」と突き返したはずの“ドラゴン系モンスターと思われる黒い腕”を、「これが証拠だ」と言い出すようなものだ。


少年と少し話をしてみたが、戦闘経験はほとんどない。それらしく振舞っているが、戦闘員ですらない。

口八丁なところがあるが、ドラゴン系の討伐など想像もつかないらしく、必死にそれらしき言葉を探して繕うも、荒のある展開で二転三転する。

突っ込んで聞けば嘘に嘘を重ねて何度も自爆し、話を聞けば討伐は嘘だと誰もが確信しただろう。


それを「ぽっと出のヒューマン族に、あの“人喰ひとぐらい”を討伐できるはずがない」とか。

どっちがぽっと出なのか、ちゃんと調べて言ってるのか?

いや、絶対にろくな調査などしてはいないだろう。



で、そのヒューマン族、リフレだ。

コランダでクィーンフォレビーの討伐に手を貸し、ギルドに高額の素材を複数卸し、実績は十分。

確かに、急に現れた感はあるが、他の大陸にでもいたんだろう。

そういう意味ではスパイ疑惑も間違っているとは思わない。

だが、それだけでは無かった。


例の疫病の特効薬を持っていたのだ。


怪しい。怪しいが、逆に何故ここで怪しまれる事をする?

恩を売り付ける為か?何か取引をしようというのか?

それとも、薬自体になにか裏があるのか?

憶測ではどうしようもない。


効果は本物だ。

どこまで真実かは不明だが、上層部の生き残りが、命を繋いだという噂もある。

ここへきて、虫の息だった権力者が息を吹き返す事は、敵性勢力なら大問題だろう。

狙いが全く分からない。


薬の成分に関しては好きに分析して良いと言うし、むしろ材料があれば作れるからと材料の収集をギルドに依頼したという話があるが、どこまで本当なのか分からない。


ともかく、やっている事だけで言うならば、善人どころか英雄なのだ。


だが、上層部から下った命令は

「リフレを非常に危険なスパイと断定する。次回の討伐にて、かの者の傘下に入った冒険者と共に討て。」

という事だった。


理由はどこにも書かれていない。

しつこく問うた者は、今回の任務から外された。


リフレ。確かに怪しい人物だが、俺達の上層部もかなり怪しい。

何が正解で、何が不正解なのか?何が正義で、何が悪なのか??


分からないまま、俺達は任務へと向かった。

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▽お知らせ▽

◆高頻度で最終ページ《(仮)タイトル》は書き込み中。
加筆・修正により、内容が倍以上増える事があります。
たまに前ページの内容を見て加筆する事もあります。

◆後追い修正の進行状況:現在152ページ。H.30 5/5

◆作者が混乱してきたので、時間がある時にタイトルに日数を入れます。
あとがきに解説も入れていくつもりです。いや、無理かもしれん。
がんばるー(棒読み)

▽ぼやき▽
3月には書き終えるつもりだったのに、5月になってもまだ序盤ってどういう事だ?
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