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穴掘り

俺が近くの岩場から戻ると、穴掘りは地味に進んでいた。

露出している遺跡の様子からその大きさを予測し、地面に線を書き入れる。

両サイドのギリギリに土を残したいが、それをすると、俺達が出るまでに崩壊したら出られなくなる。

それだけは避けなければならない。


ある程度のデメリットは、それ以上のメリットで補う形で完成図を思い描く。


思ったより大きな遺跡でも融通が利くように。

溢れたモンスターが、好き勝手な方向に逃げて行かないように。

戦闘になってもきちんと動けるように。

そして、扉を塞げるように。


土は、近くにまとめて置いてある。

遠くに運ぶのも手間だし、万が一の事態になれば、埋め戻すのが正解だと思う。

そして、俺も加わった。


かなり深いところまで掘ると、掘った土を外に出すだけで重労働になった。

掘るのは俺が一番早いようなので、途中から、2人には土の運搬をお願いした。


ひたすら掘って、2人が土置き場に土を運ぶ。休憩する。線を書き足す。

そんな作業を続けて、夕方。


「入り口、みたいね。」


扉が見えてきた。

まだ土が残る円型の広場と、切り立った崖のような周囲。

ここから、この穴の外に出るには、なだらかな登りの一本道を通らないといけない。


うん。

予想よりも精巧で大きな遺跡だったが、だいたいの外観はグラフィック通りだった。

そりゃ、グラフィックの家の大きさとか明らかに小さいもんね。遺跡だって小さかったんだろうね。

イメージと実際の商品・・・もとい、実物の違いに驚かされるのは今に始まった事じゃない。


上部が露出した遺跡の扉を前に、2人ともそわそわと落ち着かない。

まぁ、遺跡はロマンだからな。わかるわかる。


「お疲れ。じゃぁ、一旦埋め戻して町に帰るぞ。」


俺が言うと、2人はポカンと口を開けて振り返った。

あれ?俺、なんか変な事言ったか?


ここはキャンプを張るところじゃないのか、とか、中を覗いて見るところじゃないのか、とか反論はあったが、


「2人とも、本当に大丈夫なのか?ダンジョン検索の準備をして来たのか?

体力は?これから夜だけど、不足の事態を対処できるのか?」


と問い詰めると、2人共すっと目を逸らしたので、軽く埋め戻して岩で蓋をした。

まだ殆どが土で埋もれている上に、こんなのが扉の上に乗ってたら開けることはできないだろう。

そもそも、中のモンスターは遺跡が掘り進んでいる事なんかわからないはずだし。


「本当に、帰るんだ・・・。」


何やら恨めしげなギルディート。

帰るよ!だいたい、俺はキャンプ用品を仕入れていない。

こんな所で寝られるかぁ!状態である。探偵小説なら死亡フラグだが。


それを言うと、雨風を凌げる準備くらいはしてあると言われたが、それだけじゃぁなぁ。

これから帰れば宿で寝られるというのに、何故体力を使って固い地面で寝なきゃいけないのか。

キャンプをしたことがあるが、道具が揃っててもわりと大変なのに、適当な準備でなんてとてもじゃないが許容できない。

帰れるんだから、帰ればいいじゃない。


「この時間なら、自警団が勝手に掘りおこして中のモンスターを出す、なんて事も無いだろうしな。」


そう言うと、マリッサが体ごと視線を逸らした。

ああ、この間の騒ぎを思い起こしたのか。町の事だから責任でも感じてるのか?

それに訝しげな視線を送るギルディート。


「早く帰らないと、寝る時間が遅くなるぞ。

明日も来るつもりなら、さっさと帰って鋭気を養え。」


そう言うと、ようやく切り替えた顔をした。


「・・キャンプより、ここの往復の方が私には辛いのよ。」


悪いが、戦力外マリッサのその訴えは聞き入れる事ができない。

絶対にこいつら甘く見てるからな。それに、俺は布団で寝たいのだ!


さて、このダンジョン“風の遺跡”だが、レベル帯は30~50といったところか。

ギルディートは戦力になるだろうけど、装備がボロボロだし、耐久度は大丈夫か?と不安になる。

マリッサはレベル18と言っていたし、レベルが2つ3つ上がったところで戦力外だ。


うん?待てよ?

レベルが2つ上がったら20。もう5つ上がれば・・・ギリ戦力になるんじゃね?


いや、死ぬ。死んじゃうから。

俺は、自分の思い付きを振り払うように頭を振った。


帰り道も、ギルディートはダフの英雄譚えいゆうたんを語り続けた。

俺は楽しく聞いていたが、マリッサは面白くなさそうだった。

俺の表情を読んだのか、


「すごく胡散臭いのよ。」


と一言漏らしてギルディートと喧嘩し始めてしまった。

まぁ、よく知らん奴の英雄譚サクセスストーリーなんてのは基本的に胡散臭いものなんじゃないかなぁ、と俺は思うのだが。


マリッサは家に帰り、ギルディートは野営の準備を始めた。

いやいやいや。

せっかく町まで戻ったんだから、宿に泊まろうぜと言うと、金があまり無いとの事だった。

なるほど。それで装備もボロボロだし、あっちでも野営しようとしたのか。


ギルディートを宿に押し込み、装備を外してもらって剣を借りた。

防具はともかく、剣ぐらいは耐久度を回復しておかないとな。

単純に耐久度を回復するアイテムがあるのだが、使い方がわからない。

それに、さすがに2人守るのはきつそうだし、強化も兼ねてピカピカにしてやんよ。

めちゃくちゃ渋られたので、俺の剣を引き換えに渡しておいた。

盗まねーよ。修理してやるっちゅーのに。


こいつが夕飯に夢中になっている間に宿を出る。

ようやく鍛冶の検証ができるな!

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▽お知らせ▽

◆高頻度で最終ページ《(仮)タイトル》は書き込み中。
加筆・修正により、内容が倍以上増える事があります。
たまに前ページの内容を見て加筆する事もあります。

◆後追い修正の進行状況:現在152ページ。H.30 5/5

◆作者が混乱してきたので、時間がある時にタイトルに日数を入れます。
あとがきに解説も入れていくつもりです。いや、無理かもしれん。
がんばるー(棒読み)

▽ぼやき▽
3月には書き終えるつもりだったのに、5月になってもまだ序盤ってどういう事だ?
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