野生の思考は単純である(仮)
もうGWが終わってしまうのか・・・。
4連休、殆ど休んだだけで終わったが、久しぶりに続きを掲載できるくらいまで体力が回復できて良かったのか・・・な・・?
あとは有給取って、免許の更新(?)をして、6月中に取りきらないと厳しい教習を受けて、また免許の更新の為に有給取って・・・。
これから繁忙期だってのに、どうしてこんな事に・・・orz
さて、詳細(?)な作戦は聞いた。
盾職の立て直しの為に、HP回復ポットの提供もした。
俺が一応リーダーだったので、“俺の許可が無いと使えない”分の共有ポットも解放された。
まぁ、俺を待たずに使いだすところだったらしいから、これは団体行動におけるポーズみたいなものである。
討伐参加者の殆どが個人で持って来たポットを使い切り、商人さんも持ち寄った回復アイテムの販売をしてくれてはいたものの、所持金などの問題もあって満足に使うことができなかったらしい。
それだけに戦闘員からは、やたらと感謝されたのだが、共有ポットを用意したのは俺ではなくてギルドだし、許可なんてポーズに過ぎないのだから、持て余してしまう。
それでも、一部は精神的なダメージから立ち直る事ができず、戦力外になってしまったが、危うく死ぬところだったのだ、致し方ないと言えよう。
長物の武器を持ち合わせていなかった者や破損した者は、バリスタの矢が提供されており、戦意もまずまず。
俺がいない間の戦闘で、商人さんの魔道具や職人さんの作ったバリスタ系の武器が活躍したらしく、あの気まずい雰囲気も無くなっていたのだ。
鬼族の商人さんや、ドワーフの職人さんは元気そのものだ。その勢いに負けるまじと、戦闘員も頑張っているのだろう。
半分虚勢であろうとも、とりあえず立ち直った盾職がいるのはデカい。
反撃の準備は整った。
甲板では、一体倒したおかげで減った襲撃に、2パーティーを3つに分けたらしい数名の戦闘員で対処していた。
盾や盾のような板を持って待ち構え、突っ込んで来たら、それを放り出して逃げる。
そのタイミングで可能なら反撃をするといった感じだが、現状維持が精いっぱいだったようだ。
体力的にも精神的にも、そろそろ限界。お疲れ様という事で、交代要員と一緒に奥に引っ込んでもらった。
戦闘要員以外は、まだ元気なのでそのまま頑張ってもらう。
小型の船に乗って行ってしまった人員もあり、そんなに人員は多くないのだ。
俺が甲板に立つと、ブラゴンは見定めるかのように上空を旋回した。
足元の確認。濡れた床でも、足裏のスパイクが効いており、滑る感じは無い。
金属でできているスパイクの付いた靴は、冒険者の標準装備のはずであり、ならばボロボロになってもおかしくない甲板の木材は、凹みこそあれど、そのつもりで踏みしめない限りは傷も付かない。
なるほど、いい木材を使っていると言っていたか・・・耐性素材、さすがファンタジーである。
そういえば、人の足で自動車並みの速度を出せば、地面が耕されてもおかしくないと思うのだが、地面を走った時にも足がめり込むような事は無かった。
いや、雨の日は例外としてだな・・。もしかしたら、土や鉱物もファンタジー的な何かが・・・あるよな。あるに決まっている。
実際、序盤に登場する鉄以外はファンタジー金属ばかりである。
それに、調合で出て来る素材だって、ファンタジー素材だ。
共通点こそあれど、この世界を自分の生まれ育った地球と同じように考えていると、足元を掬われる時が来るかもしれない。気を付けねば。
上空のブラゴンがなかなか攻めて来ない。
仲間が1匹殺されて警戒しているのかもしれない。
さっきとは服装というか装備が全然違うので、同一人物だとは思われていないと思うんだが・・。
まぁ俺が時間を稼げば、さっきまでコイツらの相手をしていた2パーティーが復活してくるだろう。
ブラゴンだって、いつまでも上空を飛び回っているわけにもいくまい。
マグロのように泳ぎながら休めるのは水中だからであり、上空で飛びながら休めるという生物はいない筈である。
・・・・いないよね?こんなところでファンタジーさんに仕事をされるのは非常に困るが・・。
足のある生き物である以上、どこかで羽を休める必要がある筈である。
つまり、時間稼ぎをして不利になる事は、おそらく、無い。
あるとすれば、マリッサさんがフラグを立てた、船の横っ腹を別の生き物が襲って来る場合だが、どっかの漫画や小説じゃあるまいし、そうそう起こる事では・・・・
ドーーン!!!
船体の傾き、揺れ。悲鳴と怒号。
小舟を中継地点として、向こうの船から特大の魔法らしき攻撃が放たれた瞬間であった。
警備隊が敵であることが確定し、小舟がグルである事が確認できたと言い換える事もできる。
もちろん、すぐに状況を把握できた訳ではないが。
そして、襲い掛かってくるブラゴン。
足場の揺れには確かに大きく、体勢に問題はあったが、水に押し流された時のように手も足も出ない状況ではない。
むしろ、この程度なら俺の行動を阻害できる筈がない。
地に足が付き、身体が自由に動かせる以上、高ステータスはしっかりと付いてくるのだ。
むしろ、俺を狙ったが為に、まともに対峙できる最大の隙を見せる事になってしまった。
一見、向こうにとってのチャンスだが、全くの逆であった。
スキル:斬首
最近、めちゃくちゃ多様しているこのスキルだが、一撃の攻撃力は高いものの、溜めとスキル後硬直の大きさから、ゲームではあまり・・いや殆ど使って来なかった。
多用している理由は、この世界では溜めも、スキル後硬直もある程度調整できるからだ。
もっと言うと、溜める程にスキル硬直、つまり体勢を立て直す時間が長くなるので、溜めなければそこそこ強力かつ素早い攻撃となり、優秀なスキルに早変わりするわけだ。
レベルの低いキャラに変更した事によるSTRの低下は、俺にとっては計算外であったが、それ以上にブラゴンの晒した隙が大きかったのだろう。
十分な溜めと共に繰り出された一撃は、刃が斜めに入ったにも関わらず、ブラゴンの首を叩き落とした。
ゲーム上で言うところの、クリティカルというやつである。
「っとと・・」
揺れる船体とスキル後硬直が相まって、テンテンと片足でバランスを取りつつ、一緒に降下して来たブラゴンを見据える。
下がった剣はまだ振り上げる事が出来ず、振り上げざまに切り付けたとしても大したダメージを与える事はできないだろう。
敵にしてみれば、これこそがチャンスの筈であったが・・・。
「ゲェアア!!」
一声鳴いて舞い上がり、そのまま空高く舞い上がったかと思うと、大きく一周旋回して、いずこかへと飛び去った。
しばらく、いつでも剣を振り上げられる体勢は整ったものの、それを感じさせない程度に身構えたままにしていたが、その姿が再び現れる事は無く。
「・・・・・逃げた、わね。」
それが理解できたのは、マリッサが声をかけて来てからであった。
決着を付ける、など色々なしがらみのある人間の思考。
どんな訓練された動物でも、最終的には生き延びたいという野生の衝動には抗えなかったようだ。
いや、人間だって極限になれば野生化するのだから、当然の思考であると言える。
さて、モンスターは片付いたという事にして、だ。
俺が警備隊の船が停泊する方を見やると、甲板にいた戦闘員・非戦闘員も同じように視線を向けた。




