2日目:スキル検証
リーフレッド…大剣キャラにCCした後、俺の絶叫を聞きつけて駆けつけたおかみさん達に、悪い夢を見ただの、嫌いな虫がいただのと適当にごまかして部屋を追い返した。
あーびっくりした。(びっくりしたのは女将さん達の方である。)
もしかして、と思い「ログアウト」と唱え、真剣に念じてみたが、それは叶わなかった。
俺はレベルカンストするほど熱心なプレイヤーではなかったが、色々なストーリーを見るのが好きで、メインサーバーには全てのキャラを揃えてしまった。
廃プレイヤーの友人には「カンストしないのはそんなに沢山キャラを作ったせいだ」と言われたが、1つのキャラだけをやっていたらTFF自体を続ける事ができなかっただろう。
俺の飽きっぽさを舐めないで欲しい。
で、他のサーバーから遊びに来たという友人の元に遊びに行き、そこでもキャラを作った。
名前を変えると相手に混乱させてしまうので、名前は統一した。
おかげで大剣使いのリーフレッドは、メインサーバー以外にも2体いるのだ。
で、メインサーバーのみならず、別のサーバーに作ったキャラにもCC出来る事がわかった。
大剣キャラだけで125レベル、150レベル、252レベルと「各種揃えています」な感じになっている。
ちなみにメインサーバーではレベルは勿論、装備も気合が入っているわけだが、遊びに行ったサーバーのリーフレッドはそこそこである。
ちなみに、大剣キャラ《リーフレッド》は“元祖”メインキャラだが、後から追加された銃キャラが“最新”メインキャラ、ルークレインである。
「おおお、銃、かっこいい!」
武器の見た目は、レベル1桁だと酷く粗野で、2桁前半だと段々良くなっていき、2桁後半から3桁到達あたりまでが最高に格好いい。
それ以降はネタが尽きたのか、無駄に装飾過多になっていくのであまり好きではないのだが・・・その例外が銃だ。
派手にしようがないのかもしれないが、彫り物をしても素材を変えても「金属の塊」といった感じの無骨さがなんとも格好いいのだ!
そういえば、このTFFでは弓キャラも銃キャラも矢や弾を買うことは無かったのだが、どこから湧いてくる仕組みなのだろうか?
おかげで2丁の拳銃を撃ちまくる、ヒャッハープレイができるわけだが。
とりあえず、今日は銃キャラの検証をしつつ、近くのダンジョンに行ってみる事に決めた。
朝食は温かいミルクと、固めの野菜サンドだった。
女将さんとおっさん達の視線が気になる。
なんか、めっちゃ見られてる気がする。
俺は、宿泊延長の料金を支払って同じ部屋を予約し、視線から逃れるようにそそくさと外へ出た。
まず、魔道具屋に行く。
本当は昨日、確認したかったのだが、思い付いた頃には閉まっていたのだ。
「帰還の札、限定4枚。値段・・・20万D?!」
昨日、帰還の札を使おうと思って嫌な予感がしたのだ。
これって、ゲームでは100Dでいくらでも買えるアイテムだけど、使ったら一瞬で町に戻れるって便利過ぎるよな?と。
それで、ゲームが現実化したとして、相場とか変わらないものかな?と。
そして、よくある小説では、こういった転移系のアイテムはものすごく希少だったりする。
帰還の札自体はまだたくさん持っていたが、下手に希少品だったら使っているのがバレてもよろしくないよな、と。
「緊急時の為の札さ。命に代えられないときに使うもんだよ。」
澄ました顔のお婆さん。ふっかけてる様子は無い。これが相場ってことか。
まぁ、高額ではあるものの、普通に使われているアイテムのようで安心した。
使った後で「どこから現れた?!」なんてトラブルには遭わずに清みそうだ。
困ったのは他の品揃えだ。
HPポット、MPポットも(中)までしかなく、蘇生アイテムはどこにも無かった。
ポットの価格はゲーム時代とそんなに変わってないみたいだな。
「ん?すみません、このSPポットって何ですか?」
見た感じ、回復アイテムなんだけど、SPなんてゲームには無かった筈だ。なんだろう?
HPはヒットポイント、MPはマジックポイントもしくはマナポイント、SPは・・・何ポイントだ?
S、S・・さ、し、す、すぺしゃる?
「それはスタミナを回復するポットだよ。食事の代わりみたいなもんさね。
長持ちする事と、モンスターに囲まれてても即座に取れるのが利点さ。」
スタミナか。なるほど惜しかったな。確かに食事は大事だ。
それに、持ってない回復アイテムは持っておくべきだ。回復を切らすとろくな事にならない。
とりあえず、様子見でSPポットの中を200個お願いしたら、そんなに在庫が無いと言う事で、あるだけ売ってもらう事になった。
42個って・・・少な過ぎだろ・・・・・。
そう思ったが、売れない在庫を抱えてても赤字になるだけだ。
これはゲームではないのだと痛感した。
で、他にめぼしい物が見当たらなかったので、ダンジョンへと向かうことにした。
東の門から町の外に出る。
周辺に人がいない事を確認し、ルークレインにCC。
俺の気に入っている銃はリボルバー風のもので、使ってみるとギミックもそっくりだった。
早速ぶっ放す。あれ、思ったよりは煩くない。そして、やはり格好いい。
めっちゃいいわ、これ。
しかし、弾を込める必要がないのはどうなってるんだ?
弾らしいものが入っていたので取り出してみると、消えてしまった。
何なの?空気なの?それとも魔法的な何かなの???
周到に周囲を確認し、弓キャラにもCCして検証してみたが、射ろうとすれば矢が現れるという不思議弓だった。
しかし、ゲーム上だと割り切れるんだが、弓キャラが女、銃キャラが男っていうキャラ固定の仕組みはどうにかならないものか?
女キャラになっている姿は、絶対に誰にも見られたくない。
せっかく女キャラになったので、恥ついでに補助キャラになって、各種補助魔法を自分にかけてみた。
ところが、だ。
「クランベールにかけた補助魔法は、ルークレインにはかかっていない。当たり前と言えば当たり前なんだが、同じ俺なのに・・・という気もするな。」
これは普通にCCと同じみたいだ。
この補助キャラにCCすると、自身に掛かっている補助魔法の効果でキラキラと光り輝く。
他のキャラがそうなっていないあたり、想像できたから残念ではない。
すごく便利かと思ったらそうでもなかった、ってだけだ。残念なんかじゃないぞ。
クランベールにCCする必要性が無いんだから、良い事だ。そのはずだ。
・・・。使えねぇー。
がっかりしたが、とりあえず目的地はダンジョンだ。
途中にワープポイントもあったはずだ。
ワープポイントの扱いがどうなっているのか不明だが、とりあえず見つけて踏んでおこう。
TFFと変わらなければ他のワープポイントから飛べるようになるはずだ。
-解説- 読み飛ばしOK!
ログアウトって?:ゲームを終了し、ネットゲームの世界から持続解除する事。逆にゲームを開始してネットゲームの世界に接続する事を、ログインと言う。
カンストって?:カウンターストップの略。数値が上限に達し、それ以上上げる事ができなくなる事。
ヒャッハーって?:無駄にテンションが上がった様子。無双状態。馬鹿が雑魚を相手に調子に乗っている様子を表現する場合もある。そして痛い目に遭う。ひでぶー。
魔道具って?:メルヘンチックな言い方をすると魔法の道具。電力ではなくて魔力で動く。
HPって?:ヒットポイント。生命力を数値化したもの。攻撃を受けるなど、ダメージで減少し、0になると戦闘不能になる。ほとんどの場合、HP0=死亡という扱いである。
MPって?:マジックポイント。魔力を数値化したもの。魔法やスキルを使うと減少し、必要なMPが無いと発動しなくなる。MPは0になっても死なない。
蘇生って?:生き返らせる事。HP0の状態から回復させ、戦闘可能な状態にすること。
SPって?:スタミナポイント。体力を数値化したもの?主人公のやっていたゲームでは存在しなかったようだ。空腹で減少し、必要なSPが無いと、行動できなくなると思われる。
おそらく、HPやMPにも関わりがあり、減ると回復力などに影響があるかもしれない。0になると・・餓死?
ワープポイントって?:ゲームによっては存在しなかったりする。長距離を一瞬で移動できる所謂、転移場所。ゲームや作品によって、ポータル、ゲートなど、色々な呼ばれ方をする。
俺の嫌な予感って?:※あまりアテにならない。と注釈が付くレベル。
魔道具屋の婆さんって?:ただの店員さん。小さな町なので、ご老人も現役。