ポヨンポヨン(仮)
GWこそ教習を受けるぞと早起きして予約を取りに行った。いい時間が空いている!
おっしゃ!これで予定よりもだいぶ遅れたけど、いい時期だしOK!と思ったら、エラー。
受付嬢「免許証の有効期限が切れていますね。」だってさ。
Noooooooooおおおおおおお!!!!
さて、情報交換としている間に、前線という名の甲板では、即席武器さんがガンガンと床に直接固定されていたよ。
えーと・・無骨というにはちょっと・・あまりにも・・・いえ、文句はないんですけどね・
ちょっと木製の割合が多いのが気になったり、必要なのか?ってぐらいネジが突き刺さっている部分があって、しかも「ギリギリ固定されてます!実ははち切れそうです!」感を醸し出していて。
えっと・・・
「これ、大丈夫なのか?」
いずこかから現れたアーディが、思わずと言った感じで呟く。
そう、それ!!!
まぁ、大丈夫だから持って来たんだろうけれども!
ドワーフと言う種族を信用していない訳じゃないんだけれども!
見た目がね!そう、見た目が。
「大丈夫じゃないわね!ぶっ飛んでもいいように、離れたところで着火するつもりなのよ!」
大丈夫じゃないのかよ!!!
「ふーん」
興味無さそうに引っ込んでいくアーディ。
いや、もっと真剣になれよ!この船の未来が掛かった切り札だぞ?!
俺の表情を読み取ったのか、マリッサさんが安心させるかのように微笑む。
「まぁ、リフレが戻って来れなかった事を想定していたから、急いで設計したけれど、もう少し時間が取れるなら、もう少し完成度を上げる事はできるのよ。」
マリッサの言葉を裏付けるように、数名のドワーフが手をワキワキと動かしたり、腕を振り回したり、腕まくりのポーズをしながら前のめりになっている。
「でも、このまま行ってもいい程度にはしてあるのだわ。こんな感じになるのよ。」
固定砲台に案山子かマネキンのようなものが搭載され、穴の開いた盾が装備される。
盾の穴からは即席武器さんが壁に向かって眼光を光らせており、その壁を隔てた向こう側が甲板である。
あとは、壁を破壊すれば盾を構えた前衛に見える・・という寸法だ。
他に、各所に配備されていた対海上モンスター用の武器が運び込まれて物々しい雰囲気になってきている。
戦闘員は甲板に居たり負傷して引っ込んでいるが、非戦闘員は打開する為に準備をしていたようだ。
「ちなみに、今、船の横っ腹を襲われたら、無防備に食いちぎられるのよ。」
マリッサさんが、言わなくてもいい不穏な事を言う。
知ってる?それ、フラグっていうんだよ?本当になったら嫌だからやめてくれないかな?!
相手の機動力からして、当てられそうにないので保留にしていたが、即席武器でブラゴンを爆破し、負傷をさせた上で、トドメになら使えるだろうと言う判断だ。
「え・・・爆破って・・」
「このままだと、それ以上の損害を被ると考えての判断なのよ。甲板の状況は見たでしょう?
盾職がいれば突っ込んでくるし、居なければ破壊活動を始めるわ。
帆柱だって、いつ折られてもおかしくない状況なのだわ。やられる前にやるのよ!」
自爆はロマンなどという言葉がある。
ロマンというのは、裏を返すと現実味が無いからこそのロマンなのである。
同じダメージを負うなら、相手に損害を与えられた方がいい。
確かにわかる。それで相手が排除できれば、それ以上の損害を被る事は無い訳で。
そもそも、簡単に排除できる相手に自爆なんて手段は使わないし。
使うとしたら、ボス戦のような、そう簡単にダメージを与えられない、手ごわい相手に使う事になるのだろうか。
でも自分や味方に与える被害が大きければ躊躇してしまうよね。
例えば、いくら相手に与えるダメージが大きくても、自爆魔法とか唱えるのはデメリットの方がデカすぎるという話である。
一撃で死ぬ代わりに3倍の攻撃力を出すか、生きて3回攻撃するかっつったら、誰でも生きて3回攻撃する方を選ぶだろう。
だって、死んだらそこから先が無い。ゲームで例えたので、そのままの例えで進めるとしよう。
仮に生き返らせる事ができたとしても、そこにかかるコスト・・――つまり建て直す為に仲間が蘇生のアイテムや呪文を唱えたり、1人欠けた事で、防御力の低いキャラクターに攻撃が行く可能性が上がったりする――・・を考えると、結局のところ労力に見合った結果が得られるとは思えない。
だから、自爆魔法というのは使い勝手が悪く、使いまくる主人公などいないのだ。
まぁ、味方がいくらでも沸いて出るなど、コストに制限が無い場合は最強だが、そんな事は現実としてあり得ない訳で・・もちろんロマンもそこには無い。
「大丈夫よ、指向性を持たせる事に注力しているから、暴発しても味方に向かう事はまず無いし、
強化ライヴォーク材程ではないけど、船にはそれなりに良い素材を使っているし、
火災には魔道具で対処できるから、最悪の場合でも被害は最小限に食い止められるはずなのよ。」
そのマリッサさんの言葉の説得力が・・ガラク・・じゃなかった、ポンコ・・でもない、即席武器に目をやるだけで薄まっていく。
急遽、用意されたらしい盾風に塗りたくられた板の後ろで、いい顔をした案山子さんがバネで動くらしい首をポヨポヨと上下させており、その頭には頭髪を意識したのか、汚れたモップが乗っている。
「こんな装備で大丈夫か?」
「大丈夫よ、問題ないわ。」
それ、問題があるようにしか聞こえないんだが。




