そんな予感はした(仮)
教習所の期限が近い、やばい。
浅田飴の糖衣部分に歯がめり込む感触を楽しんでたら銀歯が取れた。
咳が治らないから歯医者にも行けない、ツライ。
そろそろ風邪を引いてから3か月になるところなんだが、いつになったら咳が治るのか・・?
一応、頻度は減ってるんだけどねぇ。
パソコン買い換えでメモ帳データが使えなくなってしまった・・。
スキルとかコピペするのに便利だったのに・・・・・。どうしよう?
甲板は、ところどころに破損があり、焼けこげたり水に濡れたりしていて、足元が悪くなっている。
数はほとんど無いが、弓矢が付き立っている。
この船から放たれたのであれば、海に落ちる可能性が高く、さっき聞いた話から察するに、向こうの船から届いた物だと思われる。
そして、船の上を旋回しては破壊してくるドラゴン系モンスター。
痩せてはいるが、お馴染み(?)ブラゴンさんだ。
俺がのこのこと出てきたのを狙って、上空から急降下して来た。
特に素早い訳でもないし、わざわざ降りてきてくれるんであれば戦い易くて助かる。
掴みかかる為に振り下ろされた爪を、そして噛みつこうと繰り出された顎を躱し、その勢いを利用してカウンターを狙う。
スキル:斬首
「ギシェ~~~~~~~?!?」
首の半分を切り裂いた攻撃に、その痩せたブラゴンは目を剥いて、逃げ去ろうとしたようだ。
が、身体が言うことを効かなくなったのか、羽ばたきながら甲板で数歩バタバタと駆けて、バリケードに突っ込み、絶命した。
「解体なら任せろ、後ろの事は気にせず戦え!」
バリケードの奥が気になったが、そんな声がしたので大丈夫だと思われる。
そんな事を心配している訳じゃねーよと、心の中でツッコミを入れつつ、上空を睨む。
そこに、トッ、と弓矢が届いた。
振り返ると、警備隊の船から弓矢が放たれている。
その殆どが海面へと吸い込まれ、この船まで届くのは極僅かのようだが、見た感じ、かなりの勢いで斉射されているな。
「リフレ!警備隊を味方と思うな!あれはこっちが戦ってると射かけて来るんだ!!」
呼び捨てされるほど親しい間柄でもなく、むしろ「誰だお前」と言いたい、知らない冒険者の男が声を張り上げて助言してくれる。
まぁ、リフレというのは俺の名前どころがキャラ名でもなく、単なる渾名みたいな物なので、カチンと来る方が間違っているのかもしれないが。
「あと、たまに攻撃魔法を使ってくる!
何人かが船に乗って講義しに行ったが、近寄らせてもらえねぇ!
敵だと思った方がいいかもしれん!」
マジか。近寄らせてもらえないってどういう事だろうか。
見ると確かに小舟が見えるのだが、それ目掛けて松明程度のオレンジ色の光がチラチラしている。
小船を沈めるレベルではないと思うが、当たったら酷めの火傷ぐらいはするだろう。
それだけ見たら、まるで海賊船を追い払う商船のようだが、小舟は味方である。
追い払う意図が分からない。
それはともかく、モンスターを片付けないとな。
船の近くにはもう2匹、遥か上空にも1・・いや2匹か?
仲間が倒されたのを見たせいか、近くにいた一匹が猛然と俺に向かって来る。
さっきのブラゴンは上からやって来て、甲板付近で速度を落とした為やり易かったが、今度は横からの動きだ。
速度は増したが、直線的な動きである為、そこまで脅威でもない。
むしろ、勢いがある分、カウンターの威力は増すだろう。その代わり、食らったらダメージはきつそうだが。
「ピィ!」
「っ?!」
もう一匹のブラゴンの鳴き声を聞き、俺に襲い掛かっていたブラゴンが突然動きを変える。
俺の立っていた場所に到達する前に、上空へと舞い上がったのだ。
「ちょっ、この・・・!」
剣を振るったが、足に小さな傷を付けただけだった。
それどころか、困った事にスイバは陸上戦を想定していない。
そして、甲板は表面がしっかり磨かれて平らになるように設計されている。
滑るのだ。そして、靴として扱うには大振り過ぎる為、かなり動きにくい。
そして、下手すると壊してしまう。
水上戦になるかもとか言ってないで、靴を替えて来るべきだったのかもしれない。
俺の動揺を見計らったかのように、声を上げたブラゴンが追撃して来る。
が、これくらいなら立て直すのも早い。
「・・・っ、あーもう!」
俺の攻撃範囲に入る前に急旋回。もう一匹も再び特攻と仕掛けて来たかと思えば、離た場所を通り過ぎていく。
おちょくってんのか?!
ゴォッ!!!
火弾が俺に直撃する。
ブラゴンは物理特化型だった筈。ましゅまるみたいにブレスを吐く事は無いし、ましてや魔法なんかは使わない。
角度が悪かったので特定はできないが、ブラゴン以外の何かが攻撃をして来ている。
「大丈夫かッ?!?」
「またアイツら・・・!」
船上にいる冒険者達の多くは、同じ方向を睨みつけている。
俺に対して心配そうな目線を送ってきていた奴らも、俺の無事を確認次第、あちらの船を睨んだ。
ふむ。どうやら警備隊の船からの魔法か何かのようだ。
「伏せろ!来るぞ!」
そして間を置かずに、船の上を幾つもの炎弾が襲ったのだった。
「どっせぇぇえい!!!」
バッシャァアアアーーー!!!
迎え撃ったのは鬼族の商人の真水の魔道具だ。
後から聞いた話によると、真水が出て消火も出来る、船乗り必須のアイテムなのだそうだ。
水を飲む為に順番待ちしたり、誰かに貸してもらうのは煩わしく、魔道具自体はそれほど重くないので、最新式のマイ真水の魔道具を持つのがトレンドなんだとか。
ただ、近くに水気や魔力が無ければ馬鹿みたいに燃料を食うらしいが、基本的に使うのは海の上だし、鬼族は十分な水の適正?と魔力を持っているので、火事でも起きない限りは燃料は必要無いんだそうだ。
圧倒的な水量に床が軋む。
これなら、船が燃える心配はしなくて良さそうだ。
「うぉ・・・あっ・・と・・?」
で、俺はというと、甲板を走る水流の絨毯に押し流された。スイバでは川のような流れのある水面での走行はした事が無かったのだ。
転倒しないようにバランスを保つのが精いっぱいで・・・立ったまま水流に揉まれてクルクル回る。
これヤバいな。すごくバランス感覚がシビアで、俺のステータスをフルに使っても、安定させる事ができない。
未経験の事態に下手に動くとロクな事にならないのは知っているが、操作不能状態で上空の敵と対峙するのは不味い。なんとかしないと。あ、コケた。
「え」 「あ」 「お」 「ありゃ」
ラバースーツのようなクロキシは、滑り止め加工がされているのは手のひらや関節部分のみであり、それも床に接触しなければ効果が無いわけで・・。
水流は、車の汚れを水圧洗浄機で取り去るが如く俺を床から引っぺがし、間抜けにひっくり返ったままの俺を綺麗に甲板を滑走させた。
そうして、俺は手すりの壊れたデッキから「すぽーん」と海上に投げ出されたのだった。




