できることなら日帰りで(仮)
もう2月も半ばだというのに、まだ完全に咳が抜けない・・・
バイクの大型免許ももう取れてる予定だったのに・・・
身体はしんどくなくなってきたので、更新をしていきたいと思います。
てか閑散期が終わりそうなんですけど・・・!
大まかなところはマリッサに言い残し、俺は作業に向かった。
俺の仕事は出来るところまでやってしまいたい。
別に、一日で片付けなければならないという決まりは無いが、いつモンスターが襲ってくるとも分からない海上で何泊もする度胸は俺には無い。
チェックや調整の終わった魔道具を持ち、俺は船を後にする。
と言っても、モンスターは殆どいなかったし、あとは設置するだけの簡単なお仕事である。
その間に、マリッサ達は話し合いだ。
「とりあえず、一旦帰る事」を提案してもらうよう頼んである。
この状況じゃ、俺の仕事以外を進めるのは難しいだろう。
無理に進めようとしても、トラブルになるのは目に見えている。
一旦、持ち帰って、状況を分析し、何が起きているのか、どうすればいいのかを洗い出し、スムーズに作業を進められるようにしてから臨むべきだ。
まぁ、次回からは地元の人たちに任せる事になり、俺の手からは離れるだろうが、面倒が無くて良い。
これに関しての反論は受け付けない。
仕事ができないのは俺のせいじゃ・・間接的に俺のせいだったとしても、重要な部分は片付けたのだし、残りの仕事を任せるくらいは許されると思う。
俺にだって予定があるのだ、ここで全ての解決まで足止めを食らっていては、異世界脱出もままならない。
・・・できるのかどうかは置いておくが。
さて、現場の安全確認はOK。もはや何も無い。
見える範囲に脅威となる生物が確認できないので、深い所にこれ以上ないくらいしっかりとアンカーを打ち込み、浮標を設置した。
爆発もしないみたいだ。・・・いや、それが普通なんだけどね。
午前の苦労が嘘みたいに作業が終わる。
話し合いが順調に終わっていれば、ここから先の仕事は切り上げという事になっており、無い筈なので、狼煙を上げる必要は無いのだが。
浮標が設置された事により、船からの通信が届きやすくなった筈だ。
何か動きがあったら、連絡をしてくるだろう。そこまで取り決めをしていたわけではないが、それだけの常識はある。
「ジ・・ ――ザザザ・・・ ッ・・ ザザ・・」
ふむ?
話し合いが終わっていない、という事は十分考えられる。
それだけ早く作業が終わってしまったし、船の乗員は荒れていたからな。
だが、こんな雑音が入るのは何故だろうか?
この通信は、割とクリアな音声を届けてくれていたと思うし、浮標は電波塔みたいな役割をしているので、設置したからには通信機単品よりもしっかりと電波 (仮)を受け取っている筈である。
不良品、か?
いや、まさか。
変ないたずらがされていないか調べたついでに、しっかりと中身をチェックしてくれている。
仮に不良品だったとしても、その時に分かる筈だ。
とすると、何だろうか?
振り返ってみると、船が灰色の煙を上げていた。
・・・・・えっと・・・あんな合図は予定にあったっけ?
しばらく見つめていると、その煙の元あたりで火が上がり、煙が黒っぽくなる。
耳を澄ましてみても、ザーザーと雑音が聞こえるだけで、状況が把握できるような音は聞こえてこないが、遠いせいで拡散しているからだろうか。
そもそもこのクロキシを身に纏っていると、殆ど外の音が聞こえないんだっな。
「おい?!マリッサ、聞こえるか?」
メンテナンスをしてもらった通信機のボタンを押して呼びかけるが、返答は無い。
おそらく、向こう側が壊れているか、通信可能な状況に無いのだろう。
大きく舌打ちをし、俺は船に向かう。
ノルタークの冒険者はともかく、乗り合わせた鬼族の商人達はそこそこのレベルと思われた。
商人という職業が気がかりではあるが、冒険者達より強いのは間違いない。
そして、ドワーフの職人たちもそれなりの腕っぷしだ。
前回、クラーケンに襲われた事を加味してか、武装をしている者もいた。
対策もしていると思われる。
そして冒険者達。彼らだって、低レベルとはいえ冒険者である。
戦闘要員である彼らが、何故船に乗り込んでいるのか。荒事に立ち向かう為に他ならない。
俺は、ノルタークなどの序盤マップから大きく離れて何度も死んで・・・つまりは無謀なレベル上げでステータスの上がったキャラクターだ。
例外と言っていいだろう。
だから、俺を基準に考えるのは間違っているし、俺がいないからといって、そう大事になる筈が無いのだが――。
ドォン!!!
俺が見たのは、水が躍る船上と、空を駆けるモンスター。
そして、後方で待機していた警備隊・・味方である筈の船から打ち込まれる、炎の弾丸であった。
人員を取られているのだろう、開きっぱなしの船の横っ腹はがらんとしていて、俺を迎える人もいない。
不用心な気もしたが、とりあえずこれ幸いとそこから船内に入った。
とりあえず人を探すにあたって、戦闘が行われている場所に行くのが常套だろう。
音を拾う為に、ヘルメットのような部分を外す。
クロキシを脱ぎたかったが、時間が掛かるし、状況によってはまた海に行くかもしれない。
真っ直ぐに、一番騒がしい場所に向かっていく。
まぁ、甲板の方だろうな。
「あの船に届く攻撃手段は他に無いのか?!このまま黙ってやられてたまるかよ!」
「まて、このモンスターを追い払ったら、さすがに攻撃はされないだろう。
とにかく倒してから考える事だ。」
「っざけんな!!」
「味方から物騒な弓やら魔法やらが届くってのに、どうやって討伐に集中しろってんだよ!
あれは補助じゃない、明らかに邪魔してやがる。この船を沈める気なんだ!」
「クソ!誰が味方で誰が敵なのか分からねぇ・・!」
半壊した甲板に出るドア付近の壁に、即席のバリケードのようなものが築かれ、そのあたりで構えたり、作戦を練ったりしている集団を見付けた。
右往左往としている仲間たちの口論で、大体の状況が分かった。
俺に気付いた者も居たが、目くばせ程度で済ませてくる。呑気に挨拶とかしてる場合じゃないんだろう。
とりあえず、前方で固まっている盾職の間を強引にすり抜けさせてもらい、甲板へと躍り出たのだった。




