遠めの船のシルエットがわかりにくい(仮)
書き途中です。
遅くなっていてすみません。
休日はちゃんとあったのですが、ちょっと・・ペットの傾向が似ている、他の作者さんの作品を見つけてしまい、爪を噛みながら一気読みしてしまいました・・。
今後、空いた時間はちゃんと分けて使うように心がけたいと思います・・。
プカリ。
外の音は聞こえずとも、浮力と水圧から解放される独特の感覚を、防具越しに感じる。
水面に顔を出した俺は、腕を組んで水辺に立つ、白い影を見上げた。
「・・・・・マリッサ?」
「・・そうよ。」
近いので、通信の魔道具の感度も上がっていたようである。
水という壁も無くなったので、雑音もなく非常にクリアな音声だ。
マリッサのその恰好は・・クロキシの白バージョンと言えばいいのだろうか?
俺の着ているものによく似た、タイトなラバースーツ系の防具とヘルメットである。
ただ、中身はマリッサなのだ。胸は無いが、ムチムチしていてちっこい。
頭がデカいのでコミカルで可愛くみえるが、体形がくっきり出ていて、もう少し大人なら目のやり場に困ったところだ。
かといって、ドワーフが大人になった時に困った体形になるのかは不明ではあるが。
「・・・クロキシ?」
「スワン試作型よ!クロキシっていうのは、黒色という意味もあるのよ。これは、どう見ても白いでしょう?!」
なんか怒られた。
いや、白っぽいから聞いたんだけど・・・。
シロキシとかいう安直な名前だったら笑ってやろうかと思ってたんだけど、違ったらしい。
そのスワンの方の開発については何も知らされてなかったし。
「クロキシの廉価版の開発が進んでいるのよ。
というか、逆に言えば貴方ものが特別製・・これに限っては専用装備と言えるかもしれないわね。
スワン試作型は一般用に、できるだけ性能を損なわないように費用を抑えたタイプよ。」
専用機?!これ、俺の専用機なの?!
そしてスワンが量産型って事?!何それ格好いいんだけど。
ちょっと嬉しい。
「そんな事よりも、あなたの行くべきポイントはあちらだと思うのだけど、分かっているのかしら?」
マリッサの指差す方向には、船が見えた。
戻れと?という割には、刺された方向の中心に船が来ている感じではない。
「・・・ふむ?」
「貴方がさっきから探索している場所。目標地点のほぼ真逆なのだけど、問題だらけではないのかしら?」
どうやら、見当違いの場所を一生懸命走り回っていたようだ。
・・・・・まじかー。
結構な広さを散策したけど、通りで見つからない訳だ。
「・・・途中まで案内してくれ。」
さっき通った感じ、小舟だと襲われないみたいだから、多少なら近付いても大丈夫だろう。
そして、マリッサに案内をしてもらったら、俺だけ離脱する形で小舟を降りて、マリッサにそのまま乗って戻ってもらおう。
一度、大きい船に戻って、小舟を置いて来てもいいかもしれないな。
マリッサだってスイバとクロ・・じゃなかった、スワンを装着しているのだから、単体で付いて来れるだろうし。
船だってタダじゃない。
ボロ船とはいえ、これまでの船だって浸水してたりしなかったし、これを機に買い替えるという事で提供された資産的価値のあるものだ。
ボロい順に消費されているので、これは、今までの中で一番マシそうな船だ。
襲われないんだったら、海上に放置するよりも持って帰った方がいい。
「一度、船に戻るわよ。」
水面を歩いて船を引きずってくる様子がなんだか面白い。
俺は船につかまって体を持ち上げると、スイバを起動した。
「いいからさっさと乗りなさいよ。燃料がもったいないのよ。」
既に、マリッサは小舟に乗って、俺が船を動かす魔道具を取り付けるのを待っている。
スイバを起動していると燃料を使うので、無駄遣いに見えたようだ。・・まぁ、実際無駄遣いな訳だが。
俺が、所定の位置に魔道具を設置すると、マリッサが起動して、船に向かって進みだした。
いい機会なので燃料の話をさせてもらおうと思う。
浮いている船を動かせばいいだけの小舟と、水上に立つことなんかできない人間の足の裏を水面から持ち上げるように浮かせるスイバとでは、燃費が全く違う。
とはいえ、燃料というのはガソリンなんかよりも、ずっと少量でもものすごいエネルギーを作ることができる。
その上、そのエネルギーでできることと言えば、明かりを灯すなど俺の知っている“現実的”な事から、物体を転移させる、なんていう“ファンタジック”な事まで様々だ。
聞いた話ではあるが、ゲームのワープポイントが失われたと思われたこの世界に、転移というものが存在して驚いた。
が、国が管理しているもので、現物を拝めるかどうかは別問題ではある。
しかし、転移。そう、転移だ。
俺がこの世界に来たのも転移の一種と考えられる。
正直、全く手掛かりが掴めない可能性すら考えていたので、漠然とし過ぎ、何をどう調べていいものやらと途方に暮れていたのだ。
明確に調べられる事を1つ見付け、俺はほんの少し安心していた。
・・・話が逸れてしまったな。
異世界の燃料の原料は、条件を満たした地面を掘ると湧き出てくる魔油というらしい。
石油に灯油やガソリンがあるように、この世界の燃料である魔油にも色々あるらしいが、そこは割愛させてもらう。
鉱山で地面を掘っていると低確率で魔石が発掘されるのだが、これは魔油の結晶であるらしい。
国が買える金額で取引されるのだそうだ。
・・・俺、アイテム預り所にいくつか持ってる。
まぁ、ゲームにあった預り所というのが存在しない以上、引き出せないし、この世界に存在しないのかもしれないが。
ちなみに、この魔石がモンスターからドロップするという話は聞いた事が無い。
「あなたの行く方向は向こうなのよ。じゃ、しっかりと仕事に励みなさい。」
マリッサは、見事な操作で船を回頭させると、手前で動力を切ってブレーキで速度を調整し、すぅーっとスムーズに大船の脇に子船を寄せた。
大船は、確かに俺の思っていたのとは逆の方向を向いていた。




