おっきくなっちゃった(仮)
書き途中です。
タイトルが(仮)のみのうちは、ちょっとお見せできる状態じゃない事が多いので気を付けてください(今更だよ!)
(仮)の前にタイトルが付いた頃には、おおよその内容が整った感じになります。
(仮)を消すタイミングは、前話と合わせて読み直しし、「おそらく大丈夫」と作者が判断したタイミングになります。
つまり、延々大丈夫じゃないかもしれない作品を世に放っている事に・・・・・。
・・・・・とりあえず、難しいことは考えるな。完結。完結を目指すんだ・・・・・。(独り言)
ばさばさと低空飛行をしているオレンジ色の物体が、悲鳴を上げている。
悲鳴というか、搾り出すような叫び声というか・・・。
「ケコォーーーーッッ」
先に船に乗り込んでいたマリッサガ、それを見やり、そして桟橋に掛けられた階段を登っている途中で足を止めたままの俺を見やった。
ちなみに、俺のずっと前の連中から足が止まっているので、俺が通行の邪魔になっている事はない。
見つめ合って、視線で会話をする。
「・・・・・。」
「・・・・・・・・。」
お互いの頭の中で勝手な会話を繰り広げている訳だ。
結局、マリッサとは念話(PTチャット)ができなかったので、その視線に込められている物を正確に判断することはできない。
が、おそらく、
『あれ、スザクだと思うのだけど。』
とかそれに類する言葉を語り掛けられ、
『俺にもそう思える。・・というか多分、間違いなくそうだ。』
と視線に込めて返したつもりだ。
お互いに、そう大きく外れた事を考えてはいないと思う。
そして、スザクらしきそれが、完全に目視できる所まで近付いて来たところで、必死の形相で追い掛けていている預かり所の女性が目に入る。
赤くて目立つとはいえ、スザクの方が預かり所の職員さんより目立ったのには理由がある。
「クカァ!!コケェッ!!」
もちろん鳴き声を上げていて目立つというのもある。
騒がしさに振り返った人が、その原因たるスザクを見上げて驚き、棒立ちになった人の間を預かり所の女性が掻き分けるようにして進む。
時々、着地しては気合を入れるように鳴き声を上げる赤い鶏。
そして、煌々とオレンジの光を放ち、ばさばさと音が届きそうな、決して優雅ではない動きではあるが・・・。
その重そうな体からは想像ができないほどの距離を、太まし・・もとい、逞しい・・いや、愛嬌のある・・・?そんな鳥が飛んでいた。
「・・・まさかと思うけど、あいつ、また進化したのか?」
多分、俺と同じような独り言を、マリッサも呟いた筈である。
だって、その姿はさらにもう2回りほど大きくなり、身を輝かせて空を飛んでいるのだから。
「なんだあれ・・?」「モンスター?」「コッコ鳥・・・なのか?」
「あいつ、またでかくなってないか??」「今度は間に合いそうだな。」
ざわざわしている周囲。
そして、ついにデブ鳥が船の前までやって来た。
「コケェーーーッ!!!」
しばし立ち止まり、俺の姿を確認すると、前傾姿勢で力を溜めるようにした後、飛び掛るような勢いで突進して来た。
周辺にいた奴らは身を屈めたりと防御の姿勢を取る中、スザクは風に吹き飛ばされる事も無く、狙い違わずに俺の顔面に体当たりしてきた。
ちょっとだけ勢いが足りなかったらしい。
そして顔面を引っ掻いて駆け上り、ズン、と音のしそうな勢いで頭上に腰を下ろしたんだが、・・これ、狙ってやってないよな?
大きさは、一緒に預けたフェンほどもあるので、結構な重量感。
特に問題は無いが、頭にそんなものを乗せて行動した事が無かったので変な感じだ。
そうしている間にも、預かり所の女性も船の前までやって来て、こちらを見上げた。
「ごめんなさーーい!こちらの不手際でー、その子を逃がしてしまったのー!!」
別に馬鹿にしている訳ではない。
ちょっと距離があるので、声を張り上げる時に間延びしたような話し方になってしまっているだけだ。
「すみません、もうここまで来てしまいましたし、飛べるようになったみたいなので、連れて行きます!」
「えーー???!!!」
聞こえてねぇ・・・。
「飛べるなら問題ないのでー!連れて行きますーー!!」
何故か預かり所の女性職員の後ろの方からまばらな拍手と歓声が起きている。
「よかったねぇ、よかったねぇ。」
近くにいたドワーフのおっさんが何故か嬉しそうにしている。
ああ、前回、置いてけぼりにしたのを知ってる人らか。
見た感じ、港にいる拍手したり抱き合ったりしている人らも同じような事を言ってるみたいだ。
預かり所の職員さんが何やら叫んでいたが、何が起きたのか教え合ったりして徐々に歓声が大きくなっていたので、ほとんど聞こえなかった。
というか、何か言ってる最中に見知らぬおばちゃんたちに揉みくちゃにされてた。
暴力的な感じではなかったから大丈夫だと思うが・・・。
いつの間にか、前にいた奴らは船内に移動しており、後続にせっつかれて、俺は船に乗り込んだ。
ちょっと入り口で突っかかりそうになるくらいに大きくなってしまったスザクを頭に乗せて。
この世界での俺――リーフレッドは、結構背丈があるんだよな。
巻尺も無ければ、元の俺の体を横に並べる事もできないので、比べることはできないが、設定上も結構いい身長だった筈だ。
興味を持って調べた訳ではないので、その数字までは覚えてないが、現実世界の「背の順」では誰かと競う事も無く、常にダントツのトップだった俺と比べるまでも無いのは確かだが。
乗り込むと、人の波によって甲板まで流されていく。
討伐系の依頼で、敵は災害級とまでは言わないだろうが、船の通行をも妨げる高難易度モンスター。
何日掛かるか分からない、ましてや大型モンスターが現れれば命を賭して戦う事になる。
そんな事情を抱えての出発だ、見送る方もだが、見送られる方も陸の家族や風景を目に焼き付けたいので、自然とこうなるのだ。
だが、前回は一日で戻った上に、被害らしい被害もほとんど無かったため、その空気は幾分か緩い。
今回が初めてという乗組員もいるが、少なくとも半数が前回と同じメンバーなのも、緊張感を和らげる要因になっているようだ。
それは、見送る側にしても同じようで。
スザクの行動が緊張感を解したのもあるだろう。
のんびりと両手を振ったりして、笑顔さえ見受けられる。
やたらと暖かい声援に送られ、討伐隊を乗せた船は出港したのだった。
「――っ!!!―――――っ!!!」
周囲の空気と違う、手を振り回して叫び続ける、預かり所の女性を取り残して。




