ある組織の動揺1(仮)
ギルディート編は全部行こうか、半分にしようか迷ったんですけど・・・
悩んだ結果、三分の二くらいでストップです(中途半端ぁ・・)
ストーリーの流れはだいたい決まってるんですけど、ここからの構成にかなり悩んでます。
ネタバレし過ぎと思ったら消そうと思いますので、ちょっとこの更新を忘れてもらう事になる場合があります。
書き途中です。
「何故だ。どうしてこうなった?」
我々の組織はそれなりの規模だ。
尻尾を幾つも生やし、盾を持った三頭の化け物をエンブレムに掲げる我が組織は、今、その尾の1つに大きなダメージを負ったいた。
尾の先端であれば、いつものように切り離したのだが、そういう訳にいかない理由があったのだ。
この国に病魔を振りまく、作戦の要の1つ。それが根元から絶たれようとしていた。
「とはいえ、この国も相当弱っているだろう?
この作戦はもう仕舞いで良いのではないか?」
「阿呆!必ず殺しておくべき、この国の首脳陣が生き残っているではないか。
しかも、引継ぎがし易いようにじわじわと削っていたというのに、水の泡だ。
全回復だとよ!信じられるか?」
三頭の1つである黒い頭は我々魔族を象徴し、単体のエンブレムも存在する。
だが、その2つは滅多な事で使われはしない。
何故ならば、ここに到達する為には幾つもの尾からそれを統括する組織、制御する組織、監視する組織を掻い潜ってしても、ダミーの組織が存在する為に、そちらのエンブレムを使用する事になるからだ。
我々の組織は裏の中の裏。闇の中の闇と言っても過言ではない。
「まだ聖水を作れる程の聖職者が残っていようとは。しかも、流れの冒険者という話だ。
ヒューマンだという話だが、これは猿どもの裏切りではないのか?」
猿ども、猿の獣人である彼らは、何故か自分達を唯一無二の存在と信じ、自らをヒューマンと名乗る。
他の獣人に比べて器用で頭が良いとされるが、手先の器用さはドワーフに劣るし、知能に関してはエルフに劣る。
そして、他の能力に関しては、その他の獣人達に劣るのだ。
総合力という意味では、彼らに実力があるもの確かだが、その行動はコンプレックスの裏返しと言っても過言ではない。
「猿どもなどと言ってはいけないよ。彼らは組織の頭の1つ、いわば同志だ。
我々だって、すべての魔族の行動を掌握している訳では無いだろう?」
「うるさい、黙れ、ハクビ。よもやお前の差し金ではないだろうな?」
ハクビは、やれやれと言った表情で引き下がる。
このいけ好かない野郎は、この組織に最初からいる唯一のハイエルフだ。
殆どを魔族で構成する黒頭の、異色とも言える存在。
誰もが認め、しかし認めたがらない存在。黒い頭の化け物の、白い尾。
そういう意味でハクビと呼ばれている。
普通ならば、ここでハクビが言い返し、揉め事が起きるところだがそうはならない。
ハクビの差し金というのは只の当て付けであるし、それは言葉にせずとも誰もが分かっている。
そんな事をせずとも、ハクビは簡単に黒頭を叩き潰せるし、仮にそうしていたとしても、俺達がハクビを相手にするには準備が必要だ。
俺達は、決して一枚岩ではないが、足並みを揃えなければ滅びる。
気に入らなかろうが、恐れようが、共に進むしか道は無いのだ。
ハイエルフに対してのコンプレックスという意味では、俺達魔族もヒューマンと変わりはしないのだろう。
誰もが認めたがらない、事実だ。
魔族とは、精霊をその体に宿したエルフの総称である。そういうものに成り下がってしまった。
古くはそういったしきたりのあるエルフの中でも特別な一種族を現していたのだ。
それが技術として広まった今、魔族という言葉、そして種族は廃れつつある。
だが、魔族の誇りを守るため、この国に、いや世界に、我々の存在を知らしめなくてはならないのだ。
その為の手段が戦争である。
ヒューマンはその技術力で世界を征服できると考えているが、世界を制するのは、力を持つ我々だ。
いずれ、それを叩きつけてやる日が来るのだから、仲間面などする必要は無いと思うのだ。
「まぁ、裏切りという線は薄いだろう。
あちらも、こちらの戦力を削れるだけ削りたいだろうしな?」
そう、裏切りだとしたら不自然なのだ。
いずれ戦争をするのだから、あちらとすればこちらが弱ってくれた方が有難い筈だ。
「だとすれば紫か?」
紫頭。黄の大地サルトルドに戦争を齎す為に動く、組織の頭の1つだ。
サルトルドに住む、妖精という種族は人として認められていない程に感性が違い、生態も異なる。
妖精に気に入られた、そんな理由だけで連れ去られた人の子達。
多くが年端も行かない子供達で、妖精の住む大地で生きていく術など殆ど持たなかった。
気分次第の妖精たちに何とか調理を手伝ってもらい、時には生で様々な植物を口にして飢えやモンスターと戦いながら、それでも何とか生きていくという。
成長したら、可愛くなくなった等という身勝手な理由で捨てられ、元の大陸へ何とか戻っても世間を知らずに酷い目に遭う。
もちろん、親類に出会えてハッピーエンド、なんて結末も無いではないが、その多くは地獄を見た。
自力で大陸に到達するというだけで、死を何度も覚悟したという。
実際、死亡した者も多くいるのだと思う。
その悲劇を詳細に知るわけでは無いが、その目に浮かぶ虚無に、たった1つの光が存在している。
彼らは破壊を望んでいる。滅びを願っている。
黄の大地サルトルドを悲劇の地へと変える為に動いているのだ。
紫は黄を殺す毒の色であり、青の大地エルフォルレ・赤の大地アズルビアへの情景を指す色でもある。
黄の大地サルトルドを憎む反面、故郷への情念には複雑なものがあり、作戦を曲げる事などあってはならないが、無いとも言い切れないのが恐ろしいところだ。
何しろ、あの妖精に育てられて大人になった集団なのだから。
「仲間を疑うのは止めよ。彼らとて、この計画を阻む理由は無い。
何しろ、呪詛の媒介に妖精を使っている。
それを喜びはすれど、邪魔をするような考えは起こすまいよ。」
ならば、どうしてこうなったのか?
現在の世の正義とやらは、尾の先の動きを追うのに忙しく、我々の動きは、まだ完全には感知されていない筈だ。
それに、それに迫れるだけの組織は弱体化させ、乗っ取り、無効化して、動きは殆ど封殺されている。
つまり、これはイレギュラーだ。
聖水を振り撒く人物が現れたのだ。
同時期に、少数ながらも万能薬なるものが市場に出回る。
おそらく、この人物と無関係ではあるまい。
一刻も早く、このイレギュラーを排除せねばならない。
そう思って動いた・・――正確には、組織の尾を動かした――結果、その尾は壊滅状態だ。
薙ぎ払うつもりで放った一撃が、倍の威力を持って返って来たのだ。
まさかの事態である。
こうなれば、断ち切るしかない。
だが、その準備をして来なかったので、綺麗に断ち切るのが難しい。
文字通り、尻尾を掴まれている状態なのだ。早めの対処が必要だ。
だが、事態はそれだけに留まらない。




