ギルディート、テンパって「思う」どころじゃなくなる(仮)
書き途中です。
※注:シリアス注意。・・・・かな?
ギルディートの母や兄弟の名前はまだ決めてないので、差し替えるかもしれません。
俺は、2人から責められると思っていた。
俺の事をを心配して調べた結果、学校に行かずに遊んで、文無しになって町を出たという事を知られてしまい、説明を求めるメールが届いた事もあったからだ。
だが、掛けられた言葉は、
「母さんが、会いたがっていたよ。」
というシンプルなものだけだった。
2人とも、俺が居ない間に、泣くだけ泣いたのだろう。目が真っ赤になっていたが、落ち着いた様子だった。
母さんの手を取ると、冷たいが僅かに体温が残っており、息を引き取って間もない事が分かった。
ここには、俺以外に、母の亡骸と兄2人しかいない。
俺は、リフレに渡された薬を取り出した。
「もし、奇跡が起きたとしても、口外しないで欲しい。」
2人は、それが薬だっていう事ぐらいは分かったのだろう。
だが、どんな薬でも、死者には効果が無い。
それでも、俺の気持ちを察してか、黙っていてくれた。
「苦労して手に入れた薬かもしれんが、無駄に使う事は無い。売って生きていく為の資金にしなさい。」
いや、とても現実的な意見だけど、そこは黙っておくところだろう?
「ギルディートはショックなんだよ。
現実を飲み込むのは早い方がいい。好きにさせてあげようよ。」
可愛そうな目で俺を見るな。気持ちは分かるけど!
俺は、蘇生薬を母に使う。
口元に運んでから、死者は飲み込むことができないという事に思い当たり、全身に振り掛ける。
それは、静かで、儀式めいていて、暗い室内で、薬が掛かった母さんの身体がキラキラと光る様子は神秘的だった。
その一方で、俺の内心は非常に焦っていた。使い方、これで合ってるのか???
これこそ、使った所を見た事が無い、本当に正体不明の薬だ。
だが、死してしまった今だからこそ、心置きなく使える。
蘇生。そんな事は有り得ない。起こりえない。起こりえないからこそ、それを人は奇跡と呼ぶのであって・・・
「・・・・・・・・・。」
母さんの呼吸音がし出した時には、気のせいかと思った。
そして、それが安定してきた時に、奇跡が起こったのだと知る。
「母さんが、まだ生きてる!俺、院長を呼んで来る!」
「柔らかいベッドに移動させないと!!母さんの布団は?!」
おい!テンパリ過ぎだろ?!ちょっと待てよ!!!
院長を呼びに行こうとした上の兄を羽交い絞めにする。
このテンションで行かれるとまずい。
リフレは何でもないように渡してきたが、この薬は機密にすべきものだ。
兄に今見た事を素直に全部語られると、非常にまずい。
続いて出て行こうとする下の兄を止める。
「俺、口外するなって言ったよな?!
気持ちは分かるけど、頼むから落ち着いてくれ。」
俺が2人を落ち着かせている間に、母が目を覚ましていた。
「・・・・ぅ・・。」
何か言ってる。
全員がその口元に耳を近付けようとし、頭が衝突する。
「「ぐおぉ・・・。」」
冒険者をやってる俺が、一番ダメージが少なくて済んだ。
「水。水って言ってるぞ。」
だが、その言葉を聞き取れたのは商人をやっている下の兄だった。
俺と上の兄が自分用の水を取り出す。
母さんは、まず目の前にあった兄の水筒の中身をぐびぐびと飲み干し、続いて俺の水筒の中身も飲み干した。
その様子は、とても病人とは思えず、俺達は顔を見合わせた。
「ごめん、母さん。俺は持ってないんだ・・・。」
商人をやってる下の兄さんに「よこせ」とでも言いたげに手を差し出してた母の手が、残念そうに引き下がる。
「待ってて、今、貰って来るから。」
そう言って駆け出そうとした兄を引き止めたのは、母さんだった。
「・・待ちなさい。」
その声は掠れていたし、決して元気なものではなかったが、静かな小部屋で兄を引き止めるには十分だった。
「現状を説明してもらいたい。私は・・・死に掛けていたはずだ。」
母は、周囲を見回す。
ここが、別れの小部屋である事を察したようだった。
「俺は院長を呼んで来ようか?」
混乱して、あいかわらず院長を呼ぶ事しか頭に無い兄貴を、母の鋭い目が射止めた。
「今の教会・・・院長は敵だ。
この数日、私はろくに水も食事も与えられなかった。
私は呪病で死に掛けたんじゃない。殺されかけたんだよ。」
「「「・・・は?」」」
衝撃的な事実だった。
母が喉を抑えて苦しそうに喋るので、追加で水を出したら「何故、もっと早く出さなかった」と怒られた。
いや、急に水をがぶ飲みすると身体に悪いって聞いたから・・・。
「これで温かいスープでもあれば完璧なんだが・・・。」
「はい。」
俺がカップに入ったスープを渡す。
病人には味が濃過ぎるかもしれないが、あのがぶ飲みを見た後では今更な気もする。
「何故、持ってる?!」
俺は、金がある時に腹に詰められる時に詰める主義であったが、余裕があったら食料を確保するようになったのだ。
荷物の隙間があれば食料を詰める、あるお人好しの影響である。
俺が一人で飢えた時に、温かいスープがあったら凌げると思っての事だ。
「飢えた時って・・・学院には行ってないのか?!」
やべ・・!
俺が助けを求めて周囲を見渡すと、即座に兄達は目を逸らした。
俺の事は、母さんに心配を掛けない為にも伏せられてたんだった・・・。
ギルディートの家族
母親…国の要職に就いてい・・た?あまり女性らしくない口調。
上の兄…衛兵をしている。ちょっと固い口調だが、意外とうっかりさんで、すぐに周囲が見えなくなる。
下の兄…商人をしている。口調や物腰は柔らかく、兄弟の中では冷静な方。
ギルディート…冒険者。落ち着けば冷静に考えられるが、性格は上の兄に似ている。




