ギルディート、あの日を思う(仮)
書き途中です。
※注:シリアス注意!!!
ガノッサスは、開口一番に「儲け話に付き合わないか?」と言ってきた。
俺は、金を持っている時期に寄って来ては色々と騙し取っていく輩に身に覚えがあったので、思わず身構えた。
警戒しているのはみんな一緒だったが、
「お前らを騙して、俺に何か得があると思ってるのか?
言ってみろよ。お前らを騙したらどうなるんだ?
言っちゃ悪いが、お前ら底辺だろ。失う物なんてあるのか?奪われて困るものなんて持ってるのかよ?」
確かに、何も無かった。
おや、俺達にとっての必需品は失ったら困るものであったが、もっと良い物がその辺で二束三文で買えるんだ、俺達から奪う必要は無い。
下手をしたら、俺達から奪ったところで、要らない荷物になるだけだ。
そう思ったら、急に皆の警戒心が薄れていった。
「騙されるなよ!奪われて困るものならあるに決まってんだろうが!
命は1つかなくて、金じゃ買えねぇんだ、何か危険な事をやらされるに決まってるだろ!」
そう言って指差して怒鳴り付けると、ガノッサスの後ろから、浮浪児達と年の変わらない少年が姿を現した。
名をアーディといい、孤児院を出る年齢になったが行く場所が無く、勧誘に来たガノッサスに着いて行く事にしたそうである。
見た感じ痩せてはいるが、痩せ細って弱りきっている浮浪児達とは明らかに肉付きが違った。
そして気安い態度で、ガノッサス傭兵団で雑用をしている事、1日1食は必ず水と食事が出るし、お金ももらえて、好きなものを買って食べられる事、住む場所も清潔で暖かく、外で過ごす場合もこことは比べ物にならないくらい快適な事を告げる。
その真実はまるで御伽噺のように夢があり、希望があり、そして残酷に俺達の絆を揺らした。
約半数の浮浪児が、ガノッサスに付いて行き、俺は残った。
俺は相当ひねくれていたからな。それに、きっとすぐにあいつらが泣き付いてくると思ったんだ。
そしたら、暖かく迎え入れてやるつもりだった。
その後、ほんの少しづつ肉付きが良くなっていくガノッサス傭兵団に入った元・仲間達につられて、少しずつメンバーを減らしながら、何だかんだで俺達は冬を越える・・事ができなかった。
結局、飢えと寒さで死ぬよりはマシと、ガノッサス傭兵団の雑用として、ガノッサスの元に降ったのであった。
ガノッサス傭兵団では新入りの俺が馴染むのには、それなりの時間が掛かった。
俺は、それまで浮浪児のリーダー的なポジションにいたので、すっかり頼られているアーディにいい気はしなかったし、俺がごねなきゃ寒さに震えて死に掛ける事もなかった後期のメンバーには煙たがられた。
絶対だと思っていた強固な信頼関係は、ガノッサス傭兵団の新たな人間関係に上書きされてしまったんだ。
そして、俺は拗ねた。捻くれた。
そんな俺に根気良く話し掛け、教え、連れ出し、食わせ・・・色々と世話をしてくれたのがガノッサスなんだ。
ガノッサスのおかげで、傭兵団に馴染め、色々な仲間達ができ、色々な事を教えあったりして知識を付けた。
どうにかメールというものを使えるようになり、まばらに来る母さんのメールに返事をする事ができた。
それに更に返事が来た時は感動して、しかしすぐに返事をするのは照れ臭かったので、翌日まで待った結果、またうまく送れなくなったのも良い思い出だ。
成長するに従い、雑用だけじゃなく冒険に付いて行くようになり、レベルも上がった。
俺が今生きているのは、ガノッサスのおかげだと思っている。
あれから随分と経つが、未だに俺はガノッサスに感謝しているし、どうにかして恩を返したいと思っているんだ。
傭兵団のメンバーには、孤児や浮浪児ではなかった奴もいて、そいつらは苦手だけど。
それでも、母さんにメールで愚痴った癖に、「その人達を信頼できるの?」と返事が来た時は頭に来て返事をしばらくしなかったぐらいには愛着を持っている。
俺は、ガノッサスにはすべての事情を話している。
母さんの事。兄達の事。
そして、母さんの病気について、「俺達が治す方法を探してやる」と言われた時には涙が出るかと思った。
教会の人達は、治るか聞いても絶対に断言なんてしなかったから。
だけど・・・いつまで経っても、母さんの病気を治す方法は見つからず、時間だけが過ぎていった。
そして、そのメールは届いた。治癒院からだった。
文面こそ柔らかな言葉で誤魔化されていたが、預かった代金が無くなる事、今後も面倒を見るには治療代が必要な事が書かれていた。
そして、請求してくる金額は膨大だった。とてもじゃないが、俺には支払えない。
ってか、何が「寄付金を頂きたく存じます」だ、糞が。俺が寄付をしてもらいたい側だっつの。
結局、兄達と分担して支払う事になったのだが、それでもきつかった。
そして、割の良い仕事をもらおうとしたが・・・何故か、仕事を干された。
母さんの事情を知っている筈のガノッサスが、冷たくあしらって来たのを見て、背筋が冷えた。
俺は、何をやらかしてしまったんだ???
何とかして俺を評価してもらおうと、あの手この手で訴えたが駄目だった。
結局、俺は単独でギルドの依頼を受け、日銭を稼ぐことになった。
人気の無い、そこそこ稼げるクエストは遠出のものになる。
それでもレベルの上がった俺には苦にならず、よその仕事で稼ぐと半分を徴収されるとはいえ、そこそこの稼ぎを叩き出した。
そして、ディアレイのギルドで、あの男と出会ったんだ。




