ギルディート、過去を思う(仮)
書き途中です。
地元住民の不人気がやばいので、少し小出しにしようかと思ったのですが、ネタバレせずにって難しすぎた・・・。
ギルマスの思惑の予定だったのですが、ギルディートに変更。
いずれ書く予定だったし。別に苦肉の策じゃないし・・・。
・・・・・。
※注:シリアス注意!!!マジでどうしようもなくシリアス!
母さんが倒れたのは何年前だろうか。
本調子ではないと言い出してから、ちょくちょく回復薬を買うようになり、しかし家族には明るく振舞っていた為、誰も深刻な事態だとは思わなかった。
そもそも母さんは、俺なんかよりもずっと高レベルで、母さんを病気にするような高レベルのウイルスや病原菌がいたら、俺はもちろん、町の住人丸ごと死滅してしまってもおかしくない。
なので、母さんを蝕む病気が存在するなど、露程も思わなかったんだ。
この辺りから、教会に足を運ぶ事が増えた気がする。
呪病、という言葉は伏せられた。俺が知ってるのは、母さんから聞いたからだ。
決して口外するなと言われたのは、色々と難しい問題があるからだ。
それでも俺に話してしまう辺り、母さんも人の子という事なのだろう。
呪いっていうのは人が掛けるものだ。犯人も手口も分からない状態で公表しても疑心暗鬼やパニックになるだけだし、国の情勢がそれを許さないとか何とか。
『ウイルスや病原菌を介さない、新しい病気』として認識されていたが、高レベルでも罹るというだけで、他の病気と大差ない。
だから、その頃はまだ大して問題視されていなかったし、母さんもまだ大丈夫だった。
母さんは、国の要職に就いていた為、月々安定してそれなりの額をもらっていたし、首都の教会には聖女様がいて、呪病を治してくれた。
だけど、呪病の脅威はじわじわと広まり、聖女様さえも蝕んでいたんだ。
ある日、この病気について心配ないと、聖女様が演説を行った。
その帰りに、急速に悪化した聖女様は、教会に戻るなり息を引き取ったそうだ。
聖女様の死はしばらく伏せられ、そして何故か、しばらくの間は、呪病の勢いも収まった。
母さんの症状は穏やかに、だけど確実に悪くなっていった。
何度か持ち直したものの、すぐに再発し、回復薬の必要な量はどんどん増えた。
家の貯蓄がほとんどできなくなった頃に、母さんが倒れ、呪病が治る見込みが無くなったと打ち明けられた。
呪病が、治せるレベルを超えたんだそうだ。
そして、どうやら国の要職にあるものや教会関係者が狙われている事、家族も対象になり得る事などを告げ、財産を分配して、俺達兄弟に分け与えた。
そして、家を売ったので出るようにと言い残し、教会の治癒院へ入ってしまった。
治癒院は、長期療養が必要な病気や怪我をした時、魔法ですぐ直るという見込みの無い人が入る施設で、ものすごく辛気臭い所だ。
体の一部を失った人が、その部分が無くても生きていけるように訓練・・リハビリというらしいが、器具を使って色々調整したりしてるのを見た事がある。
体の一部を失った喪失感や、リハビリの辛さ、まだ残る傷の痛みや取り付けられた器具の痛み、時折掻き毟りたくなるらしい痒みと戦っていた。
思わず目を逸らしてしまう程だが、行けば嫌でも目に付いてしまうのだ。
そうやって生きていける人はまだいい。
要するに、魔法じゃどうにもならない人達が、生活している場所なので、入院している間に何かの拍子で生きていけなくなる事があるのだ。
教会に行けば、たまに安らかな眠りを祈っている場面に行き当たるので、気まずい思いをしたものだ。
そこに母さんが入ると言った時、俺達は「母さんもそうなるんじゃないか?」と思って、全員で反対したんだ。
でも、母さんの意思は固く、代金と寄付金もしっかり払っているので、それ以上はせずに大事に使いなさいと言い残して、入院してしまった。
顔を見に行っても、俺達が巻き込まれる事を嫌ったのだろう。すぐに追い返された。
いずれ諦めて入れてくれるだろうと、しつこくしたが無駄だった。
だが、時折、メールというものをくれた。兄は返事をして、母とやり取りしていたが、俺はできなかった。
ちゃんとイメージできれば俺も使えるらしいが、紙とペンも無いのに手紙を送るなんて、俺には想像できなかったんだ。
それでも、母から・・・時々、教会からメールが届いた。
家が本当に売り払われてしまった時は、逆に何故か笑えた。涙も出たけど、もう訳が分からないくらい笑った。
家が無くなってしまえば、住む場所を変えるしかない。
俺達は、それぞれに自立の道を選んだ。
一番上の兄は学校を卒業して警備兵として、二番目は学校を中退して商人として下働きから。
俺は、母からの学校に行くようにという勧めに、なんとなく反発して冒険者になった。
母だって勝手に入院してしまったのだからと意固地になっていた。後から思えば馬鹿だった。
結果、俺は食い詰めた。
腕っ節だけでなれると思ってた冒険者だが、ヤンチャなだけでは無理だった。
レベルも低かったし、知識だって無かった。とにかくアホだった。
それまで手にした事のない大金を持って気が大きくなった。
遊んで、振舞って、現実逃避して・・・ 資金が尽きたのだ。
予兆はあった。それなりに準備もした。が、失った物は多かった。
毎日遊んでいた仲間がいなくなった。見掛けても逃げた。
宿を追い出され、初めて外で寝た。下手な所で休むと、怒られたり追い出されたりした。
すでに安い飯を買う金も無く、当たり前だが誰も助けてはくれなかった。
そんな事になって、変なプライドと、自分の状況を知られる羞恥心から、家族と連絡を取り合うような事は無かった。
むしろ、俺は首都を出た。行けば仕事があるらしいという噂を聞いて、ノルタークへ行ったんだ。
聞いた話とは違い、仕事は奪い合いに勝たねばならず、水にすら金の掛かる町での生活は大変だった。
それでも、冒険者の依頼の下請けとして幾許かの金をもらい、雨水を啜り、飲食店の余り物をもらい、時に鼠なんかを狩り、最悪、犯罪まがいの事をして生きていた。
逆に、そうでもしないと生きられなかった。
そうしてできた仲間は、金のある時に出会った奴らとは違い、裏切らなかった。
裏切れば、裏切られる。裏切られれば死ぬかもしれない。
そんな極限の中での仲間意識だ。俺達の結束は固かった。
ノルタークの貧民街、そう呼ばれる郊外の薄暗い裏通りの路地裏をひそかに流れる下水。
組織と呼べるような物ではなかったが、そこにゴミを持ち寄って、不潔だが雨といくらかの風を防げるアジトを作り、浮浪児達と共生していた。
そして、そこをフラリと訪れたガノッサスに出会ったんだ。




