”知ってるつもり”の中身(仮)
書き途中です。
帰宅したら爆睡してた・・最近、こんなんばっかや・・・。
アイテムを共有するのは簡単だ。
金庫など、しっかりした保管場所を作って、鍵を共有すればいい。
その鍵の管理と、防犯上の問題から、クラン金庫を利用するのだ。
そう、管理するには色々と問題が発生するのだ。
誰が使ったのか分からなければ、勝手に持ち出す者もいるかもしれない。
鍵の管理を怠れば、第三者に悪用されてしまうかもしれない。
場所さえ分かれば、外部の者にこじ開けられてしまうかもしれない。
だが、アイテムボックスのある世界なので、嵩張るのを気にせずに、ある程度の荷物が持ち歩けるというのはデカイ。
必要なアイテムは自分で手に入れて管理する。それは当然なのだが、この世界ではより顕著である。
以前、ギルドの訓練所で使用した、非殺傷武器などの「冒険者は必要無いが、ギルドとしてはトラブル防止に必要」などの例外が無い限り、あと高級品でない限りは、共有の備品というものが少ないのだ。
あっても、責任の所在がものすごくハッキリしている。
それに、重量のあるアイテムは、普通は家に置いて管理するものである。
アイテムをその辺に置いておけばメンテナンスの度に消えてしまう、ゲームの世界とは違うのである。
現実世界であるこの異世界において、管理が難しいのはアイテムよりも金である。
基本的にアイテムは個人の管理となることが多いので、ゲーム時代には倉庫と呼ばれていたものが、この世界では金庫と呼ばれている。
クラン倉庫と呼んでも通じるあたり、倉庫として使う事もできる。
預かり所で利用できるアイテム枠、個人の持ち物の所有上限など、持てる数にも上限がある。
自分がレベルを上げて使わなくなった、売ってしまうには勿体無いアイテムを、クランメンバーに貸し出す事を名目に預けたりするわけである。
また、俺のようにキャラ間でアイテムを共有するのにも便利である。
話が逸れた。
金。これだけはいくらでも持てる。
億とか持ち歩けるような金額じゃなくとも、アイテムボックスには簡単に入ってしまう。
ゲームでは死んで町に戻るときにロストするなどのペナルティがあったが、この世界で試す勇気はない。
そのペナルティを抜きにしても、他人がアイテムボックスから抜き取ることができるようなので、極力持ち歩かない方が良いだろう。
スリとかいるみたいだしな。
それも話が逸れてしまうので置いておくとして。
どういうシステムなのか謎なのだが、重量制限に引っ掛からないのだ。
そして取り出すとき、意識しなければ勝手に最も嵩張らない状態で出てくる。
違和感を感じて検証してみたのだが、この世界の通貨は種類ごとに名前など無く、どんな形であれ、一律でDなので、分かりやすくする為に円で例えるとしよう。
例えば、1万円札1枚で1万円をアイテムボックスに入れたとしよう。
100円のジュースを買いたいと思って取り出すと、100円玉が出てくる。
100円玉が10枚あったとしよう。
アイテムボックスに仕舞って、1,000円使おうと思って取り出すと千円札になって出てくる。
手品師もびっくりである。
何が言いたいのかと言うと、両替の全く必要のない世界なのだ。
何故こうなるのか?そもそもアイテムボックスってのは何か?なんて俺が知る筈もないし、この世界の人にとっても同様である。
石器時代とか通貨の存在しない時代は無かったのか?というと無かったらしいが、この話は関係が無いので割愛しよう。
ともかく通貨は存在するのに、管理するのは数字となる。
クレジットや電子マネーと通ずるものがあるが、実体化するのだから訳が分からない。
それに、金を共有するのは色々と難しい。名前を書くわけにもいかないしな。
誰が使った、取り出した、そんな事が記録されるクラン倉庫が、金庫として重要視されるのはそこである。
長ったらしくなったが、これが、この世界の普通である。
決して初心者冒険者を捕まえて、話して聞かせる内容ではないくらいには一般常識なのである。
その一般常識が欠けているので、マリッサには頻繁に補ってもらっているが、今回のは本当に意識の外であったようである。
こういう「知っているつもりでいる事」の中に存在する、空白地帯のような“欠け”はなかなか露見しないので、これからも頻繁に起こり得るだろう。
それを的確に指摘してくれるマリッサの存在は、非常にありがたい。
だが、俺はいずれ、図書館のある首都、そして元の世界への手がかりを求めて旅立つだろう。
コランダに家があるマリッサが付いて来てくれるか?というと、可能性は未知数である。
シナリオでは、祖父の死と離婚がきっかけで家を離れたが、あの爺さんは当分死にそうじゃないし、あの夫婦は・・・・分からないけど、大丈夫だろう。
そんなフラグがあればへし折っておきたいところであるが、俺の中に他人の運命に干渉していいのか?という葛藤と、そんな事ができる筈も無いという諦めがあったりする。
この先に待ち構えているマリッサの運命は、物語の主人公なだけあって過酷である。
その時が来るまで、あの平和な町で暮らしていくのが、マリッサにとっての幸せなのではないだろうか?
それを思うと、俺の都合で「付いて来てくれ」などとは言えない。
「ねぇ?聞いているのかしら?」
「んお?すまん、何だったっけ。」
現在、マリッサにギルドの常識について説明を受けている。
マリッサが一般常識を教え、俺が質問を挟むという形式だが、特に質問したい事も無かった。
だいたい知っている事だったり、想像が付く範囲だったりするのだ。
「もう、ちゃんと聞いてなければ、説明している意味が無いじゃないの。
それに、私じゃ詳しいところまでは分からないのよ?
いっそ、ギルドの人にでも聞いておいた方がいいんじゃないかしら?」
詳しい話を聞いた所で、使わない知識が増えるだけでは意味が無い。
必要な知識は必要になったら付けるとして、俺が今欲しいのは専門知識ではなく、一般常識である。
そう話している筈なのだが、蔑ろにしている傾向があるせいで、最近のマリッサさんは消極的である。
いや、悪かったとは思っているけれども!
「悪かったと思うのなら、もう少し自重した方がいいわよ。
なんというか・・・とてもじゃないけれど、常識的に行動しようとしている人の振る舞いに見えない事があるのよ。」
遠回しに非常識だと言われてしまった。それは非常に申し訳ない。
申し訳ないんだが、どうやったら常識的に見えるか一緒に考えて欲しい。
「そんな表面的に誤魔化す事でどうにかなるレベルじゃないのよね。
だいたい、やる気の無い人間に教える事ほど無駄な事は無いわよ。」
常識的にやる気はあるんだけど、実際には無視する事も多い。それを言っているのだろう。
だからそれは悪かったって。言われた事は、ちゃんと俺の中に蓄積されているから、そこは信じて欲しい。
いや、そんな目で見ないで、何とか。




