マリッサ、振り返る(仮)
書き途中です。
私は、それなりに成長の余地を残したドワーフ族、そこそこベテランの冒険者なのよ。
平均寿命がヒューマン族よりも長く、エルフ族よりも短いドワーフ族は、小柄な事もあって何かと侮られがち。
なので、平均寿命を100年とした場合のドワーフ歳よりも、生まれてからの年数を数えて年齢としているわ。
ヒューマン族なんて私より長く生きてはいない癖に、いつも失礼な態度を取ってくるのよ。
冒険者というのは舐められたらお終いなのだもの、絶対に隙を見せる訳にはいかないわ。
でも、隙だらけの冒険者がここに一人。
つまらないミスで危なかった私を助けてくれた恩人でもあるヒューマン、リフレよ。
名前はもっと長くて・・リー・・ なんだったかしら?リーフレ・・リーフルレッド?ともかく呼びづらい名前なのよ。
それも偽名みたいなものだって話だし、世界にはリフレと認識されているみたいだから、それでいいんじゃないかしら?
最初は、戦闘以外では本当に頼りない人で、失敗をして宿に引きこもったりとメンタルが酷く弱くて・・。
仲間もいないみたいだし、私が面倒を見てあげるわ。
そんなつもりで声を掛けたのだけど、結局、いつもお世話になっているのは私なのよね。
先輩ぶろうとして無駄に張り切ったり、成果を手に入れようと頑張ったのだけど、結果はリフレにフォローされてばかり。
自分が子供だって事を思い知ったわ・・。
リフレのレベルは252と言ったかしら。
レベル100を超えれば伝説級よ。正直、浅はかな冗談だと思って笑ってしまったわ。
でも、どうやら事実なのよね。
それは彼の装備。レベル250から装備可能のセット装備、クェイラシリーズを揃えていたわ。
そんなの見た事も聞いた事も無かったわよ?!
そして、衝撃の事実。彼は異世界から来たらしいのよ。
探求者なのかと思ったら、どうも事故みたい。
異世界・・興味は無い訳ではないのだけど、手の届かないものに興味を持ってもどうしようもないじゃない。
興味を持てないものって、どうしても耳を滑っていくのよね。だから、難しい所は頭に入らなかったわ。
その話は、また手が届くようになってから聞かせて欲しいのよ。
私の理解できた事を要約すると、こうなるわ。
リフレがいた世界と、私のいるこの世界。
この2つをを繋ぐ第三世界があって、リフレはそこを覗き込むような形でゲームとしてこの世界を疑似体験していた。
ゲームというのは、物語の登場人物になりきって、課題をこなしていくもののようね。
先が変わる絵本の主役になるような感じだと言っていたわ。
そして、結末は決まっているので、選ぶことはできないと。過程は個人差があるみたいだけれどね。
私が思うに、双六に近いのではないかしら?
リフレは、しばらくゲームに参加していなかったのだけど、ゲームはその間にもどんどん大きく複雑になっていったと言っていたわ。
ある日、目が覚めたら、ゲーム・・第三世界にそっくりな私のいるこの世界に来ていたそうなのよ。理由は不明。
第三世界やこの世界など、別の世界に飛ばされるようなリスクのあるゲームでは無かった、とは本人の弁だけど、参加していない間に、大きく複雑に変化していくようなゲームが、ノーリスク?
怪しい魔法をこれでもかと使っているに決まっているのよ。
リフレのいた世界に魔法なんて無かったと言うけど、きっと名前を変えて使われているに違いないわ。
簡単に聞いた範囲でだけど、電気という物がそもそも怪し過ぎるのよ。
道具の動力として利用できて、映像や文字を提供する。・・どう考えても魔道具と魔力でしか無いじゃない。
それを「魔法じゃない」と信じ切っているのだから心配になってくるわ。
強力な洗脳でも受けているんじゃないかしら?
ともかく、リフレは第三世界で手に入れたアイテムやステータスを持ち込む事ができたものの、中身は平和な世界で生まれ育った、残念な人だと分かったのよ。
珍しいアイテムを持っていてホイホイ使ってしまう理由も分かったわ。
ゲームで手に入れたモノだから、現実感が無いし、もしかして使ってもすぐに手に入ると思っているんじゃないかしら?
何度も忠告はしたのだけれど、こればっかりは感覚的な問題だから、どうしようもないわ。
「でも人助けだろ?」とか言われたら、助けられた私は何も言えないもの。
そうそう、驚いた事に、リフレは年上だったわ。
ドワーフ年じゃなくて、生まれてからの年数でよ?
ヒューマンの割りに見た目が若いと思ったら、本人の身体ではなくて、キャラクタ?だからなんだとか。
おそらく、双六の駒のようなものなのだろうけど、精巧過ぎないかしら?
まぁ、第三世界とこの世界が別物である以上、駒そのものなのではなく、リフレに駒の性能を載せる為に構築された新しい“何か”なのだと思うわ。
キャラクタについて説明してもらったのだけど、歯切れが悪いし、あまり興味を持てなかったから、よくは分からなかったわ。
今のところ、駒という認識で問題が無いようだから、困った時にもう一度ちゃんと聞くつもりなのよ。
話を戻すわね。・・・年上、そう、年上なのよ。
私自身が見た目で侮られていたから、リフレに申し訳ないと思う反面、ああ、これは侮られても仕方ないわと思ったのよ。
客観的な視点って大事ね。
これからは、ヒューマンに舐めた口を聞かれても、少しだけ我慢してあげるのよ。調子に乗らない限りはね。
・・・そんな話はいいの。
それより、最近、リフレの事について悩んでいるのよ。
リフレには「常識を教えてくれ」と頼まれたのだけど、リフレの教えて欲しい常識が分からないのよ。
例えば買い物。あの人は学があるみたいで、ちゃんと相場を調べてから買い物をするわ。
逆に、よほど欲しいものがあれば、私が何を言っても買ってしまうのよ。
戦闘。その非常識なステータスは、忠告して普通に戻る訳ではないし、むしろ無ければリフレは死んでしまうと思うわ。
そして、大体の事は力技で何とかできてしまうのよ。
ちょっと前までは、驚いたり呆れたりもしたけれど、最近は、感想も出て来なくなったわ。
鍛冶。私が手助けできたのは、これだけね。
メンテナンスもそうだけど、それはオマケね。品質がいいから、ちょっとメンテナンスを怠ったところでどうにかなる品じゃなかったもの。
水上を走りたいなんて言い出した時は、ついに頭がどうにかしてしまったんじゃないかしらと思ったけど、今となっては「どうして今まで、誰もこの発想に至らなかったのかしら?」と思う程なのよ。
それを形にしてみたのだけど、大袈裟なくらいお礼を言ってたわね。
徹夜をすると「自分の身体を労わりなさい」と怒られるけど、隈さえ隠せばバレない事が分かったわ。
仕事が無くて暇をしていそうな仲間を集め、時に、リフレの仲間のおかげで手に入った黄金を使って言う事を聞かせたわ。
私の人生の中でも、あれほど頑張った事は稀なのよ。何かこう・・そう、限界の殻を破ったような、そんな感じがしたわね。
ちょっと頑張りすぎて苦情が来たのだけど、リフレにバレなくて良かったのよ。
ドワーフ族の本気を見せてあげるわ!!とばかりに色々作ったのだけど、結局、私のアイディアを元にした別物になっていたわ・・。
私より腕のいい職人がいくらでもいるのだから、そうなるのは自然な事だし、有難くはあったのだけど、なんかこう、腑に落ちなかったのよね。
結局、リフレが身に付けているスイバ-シリーズが、原型こそ私が作ったものの名残を残しているけれど、私の作品ではない訳なのよ。
たまに、ほろりと口から出そうになるわ。
「私って要るのかしら?」
マリッサ「毒が口から出そう」
もう出てますやん。




