移民さんいらっしゃい(仮)
書き途中です。
地獄のお盆休み(休暇とは言ってない)がやって来る・・・嫌だ・・行きたくない・・。
家でゆっくりしたい・・・。
「ここが俺ん家・・・じゃなかった、オススメの飯屋だ。」
おい?今、お前の家だって言わなかったか?
そうなるとお勧めの意味が変わってくる。
つまりは「金を落としていってくれ」と。
客がいないんだけど?定休日?定休日じゃないのか?
「らっしゃい・・ なんだオメーか。後ろの連れは見ねぇ顔だな。」
その店は狭い上に小汚い店で、店員はオッサン1人だけだった。
定休日じゃなかった!!!ガラガラだよ畜生!!
席なんて両手で数えるほどしかないけど!なんだこの地雷臭。
やっぱり別の所で・・って2人とも席に着いてるぅ?!
「躾はされてんだろうな?臭くはねぇみてぇだが・・小便垂らしたらただじゃおかねぇぞ。」
ペット連れであることを咎められ、ちょっと嫌な感じである。
初めは、なんか因縁を付けてくる、偏屈なオヤジだと思ったのだが。
「うちに犬っころなんか連れてきがやって・・・。何が食えるんだこいつは。ああ?」
「コッコ鳥なんぞ連れてきた客はお前が始めてだ。家畜なんぞ連れ回して、何が楽しいのやら。
・・・なんだ、豆は食えねぇのか?」
ジジィのツンデレに需要はねぇよ!!?
ちなみにラーメン屋だった。・・・びっくりだよ。
麺はフィットチーネみたいな感じだし、具も中華っぽいものは乗ってないんだが、この濃厚な豚骨っぽいスープ。
いや、匂いがきつくないので、豚骨ではないのかもしれない。
塩加減は穏やかだが、とろみのあるスープが麺に絡み、啜るとスープが減る勢いで付いて来る。
このとろみは、わざと付けたものではなく、スープに溶け込んだ食材の重さによるものだ。
複雑過ぎて、何が使われているのかなんて分からない。
ラーメンってのは、スープに金が掛かるなんて話を聞くが、採算は取れているのか?
野菜の甘みと、何かの骨の甘みがここにギュッと詰まっている、そんなスープは、まさに濃厚。
[ラ麺]
頼んだものが出てきて、思わず躊躇したが、エディが勢い良くズバババ!!と啜りだし、マリッサもそれに続いた。
呆気に取られていると「早く食べないと伸びるわよ?」と言われ、我に返ったのである。
この世界には音を立てると下品という文化は無いのか?!
ズルズルと麺を啜る音だけが響く。
うん、美味い。何故、こんなにも人が居ないのか分からない。
そう思ったのは食い始めてものの数分の間だけだった。・・・欠点があったのだ。
伸びるのが早い。急いで食べないと、あっという間に千切れやすくなり、ぶよぶよになっていく。
もうちょっと経ったら食えなくなるレベル。慌てて食べ切ったが、伸びた麺には全く食欲が沸かなかったな。
ふぅ・・・
激しい戦いだった・・って、そうじゃない。
確かに時間との勝負だったけれども。
ちなみに、冷たい[レ麺]、汁無しの[ロ麺]などを期間限定でやったりもするそうだ。
冷麺は分かるけど、ロ麺って何だよ・・。
ふと店にシンプルな額縁が飾ってあるのが目に付いた。
[食は戦]
・・・違うと思います。
話を聞くと、こういった麺料理っていうのは、割とポピュラーなものらしい。
パスタとは違う、麺は麺なのだ、というのは親父さんの弁である。
区別の付いていないヒューマンを挟み、パスタ派のエルフと麺派のドワーフが言い争う事もしばしばだとか。
食後、そんな感じのくだらない、もとい・・いや本当にくだらない因縁を散々聞かされた。
んな事で仲が悪いとか、正直あまり聞きたくなかったんだが・・。
飯屋を出てから、衝撃の事実が伝えられる。
「あれで、親父はエルフ族が好きなんだぜ?
ドワーフ族の力任せの作品と比べて、流れるような繊細な作品を作るエルフ族の技術を学びにアズルビアから流れて来たんだ。
・・まぁ、あんな性格だから、エルフとの相性が最悪で、どこにも相手をして貰えずに麺屋なんぞやってるけどな。」
どこまでツンデレなんだよ。
と思ったら、アルズビアのドワーフは似たようなものなのだと言う。
言葉を選ばない、職人気質・・・偏屈で頑固な親が苦労したのを見て育ち、移民の二世・三世は反面教師にして、周囲との調和を目指しているのだとか。
「もちろん、個人の性格にもよるのよ。
うちのおじい・・親方は、すぐに気さくな人で、エルフォルレにはすぐに馴染んで、エルフ族に技術を教えてもらったと言っていたわ。」
そして親父は偏屈な頑固者で、マリッサは毒舌か。・・・・・先祖返り?・・違うか。
関係の無い話だが、サルトルドに流れたドワーフもいるのだそうだ。
何の役にも立たない、独創的な作品に心を打たれた変わり者が行くそうだ。
アズルビアにはドワーフ、エルフォルレにはエルフ族、サルトルドには精霊族が多いのでその関係だろう。
精霊族は自由気ままでいい加減なところもあったりするからな。
何かを作れば、そりゃ独創的にもなるだろう。
能力は高いので、中にはとてつもないものが混じってたりしそうだが。
ちなみに、獣人とヒューマンは各大陸に散っており、仲が悪い。
仲が悪い理由については、今は関係無いので、追々話そうと思う。
「そうだな、個人の性格によるな。二世・三世と一括りにすると語弊があるよな。」
エディが神妙な顔をしてマリッサを見ながら頷いていたが、マリッサは全く気づかぬ様子でエルフの作品の特徴について語っていた。
田舎で育ったせいなのか、マリッサは元々のドワーフの気質を強く引き継いでいる気がする。
だが、面と向かって偏屈で頑固だと言ってしまえば、毒まみれの弁舌が帰って来るだろう。
「つまり、エルフ族がドワーフ族をも越えうる、のではなくて、また別の特色を持っていると見て間違いないのよ。
だから、どちらが上だの下だのという議論に意味は無いわ。その特色を組み合わせて、より良い作品を造る事が大事なのよ。」
知らぬが仏というやつである。




