仲間の酒癖(仮)
書き途中です。
宿では、席を確保したPTメンバー達が、既に食事を始めていた。
「遅かったのよ。待ちくたびれたわ。」
そもそも待ってねぇだろ。
ダークファングの解体をお願いした事もあり、今回は俺のおごりである。
カウンターに行き、料金を多めに支払っておく。
余ったら他の所で使い回せるので、こういう時に宿というのは便利である。
「もう宿に金は支払ってある。好きに飲み食いしてくれ。」
俺が戻らなかった時の事を考えて、控えてたのだろう。追加注文がどんどん入る。
この間の高級店なら厳しいが、この宿のメニューは量と安さが売りである。
何なら一晩中飲み食いしてもらっても・・・さすがに人数が多いし結構な出費になるかもしれないが、まぁ無理という程ではない。
状態の悪い素材の価格は未知数だが、結構な賞金が出ているので、「店ごと買い取るぜ!」なんて変な男気でも見せない限りは赤字ということは有り得ないのだ。
「えーと・・私は、今日、何もしていないんですけど・・・。」
ブリジットさんは留守番であったが、俺が呼んでおいてくれとティティに頼んだのだ。
俺が狙われている可能性を考えれば、宿と安全に話せる部屋を守ってくれていたという考え方もできる。
以前は宿の人が清掃に入りやすいように、鍵を開けて外出していたが、そもそも宿にはスペアのキーがあるとの事なので、最近は鍵を持ち歩いている。
部屋にいたずらされる可能性は少なくなっているし、その上、仲間が1人残っていれば、かなりやりにくくはあるだろう。
まぁ、だからといって仲間の行動を規制する気は無いが。
明日だって、いつ戻ってくるか分からない俺たちの動向に合わせて部屋を荒らすのは難しい筈。
何かされるとしたら明後日だが、前回は参加していなかったブリジットとローグリアムの予定はどうなっているのかね?
スザクは、用意してもらった餌を必死に突いている。
ちゃんと飯はやってる筈だが・・そんなに美味いのか?
覗き込んだら虫っぽいものが入っていたので、見なかったことにした。
遠めに見ると豆なんだけどなぁ。
前は食べこぼしが多かったが、日に日に少なくなってきている。
時々褒めているせいだろうか?鶏にテーブルマナーを仕込む日が来るとは。
スザクはトイレは自分で行く事ができるし、腹が膨れたら勝手に頭に戻って来るので放っておく。
勧められて飲んだ酒が、思ったよりきつかった。
そして、思わず顔を顰めた俺に、別のカップが差し出され、ありがたく受け取ったらそれも酒だった。
鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしてしまったのだろう。笑い上戸らしいアーディが俺を指して笑い出した。
この野郎・・・。まぁいい、ここは酒の席だ。
ドワーフの言う“水”をちびちびやっているうちに、アルコールが回ってきた。
しばし雑談に参加しつつ、眠くなったので辞去させてもらう・・事ができなかった。
「今朝はみんなに迷惑をかけたわよね?そして明日は休み。
もうちょっと私達に付き合ってくれてもいいんじゃないかしら?」
絡み酒か?と思ったが、これしきの酒でマリッサが酔うとは思えない。
考えてみると、俺自身もコミュニケーションの不足を感じてはいたのだが、マリッサは俺以上に思うところがあったのかもしれない。
俺自身、年齢のせいだろうか?誰かと仲良くなろうという意識よりも、トラブルを避けたいという意識の方が強く、この世界での今一歩踏み込めないところはある。
この地域に根付くつもりはないので、仲良くなったところで別れが辛くなるだけだしな・・と、いつもどこかで思ってたりもするのだ。
そんな俺の距離感を壊さないように、マリッサにはかなり気を遣ってもらっていると思う。
言葉は選ばない(選べない?)が、話はきちんと選べる子なのだ。
そんなマリッサが引き止めに来るあたり、もう少し居た方が良いのだろう。
だが、甘かった。
マリッサと酒を飲んだことはあった。というか、毎回、自然に飲んでた。
なので、そうそう酔いはしないという事は知っていた。
だが、他のメンバーは違ったのだ。
「うふふ・・りふれ、噛み応えがあって良い・・。好き・・・。」
ある者は噛み癖を発症し、
「駄目ですよ、リフレさんは渡しません!違う違う、違うんです、そういう意味じゃなくて・・。あうあう・・こんな私ですけど・・。そうじゃないんですぅ!」
ある者は延々と喋り続け、
「♪みんなの~前ですっぽんぽん♪
英雄~なのにすっぽんぽん♪
笑えよ笑え、勇者は祝福に~包まれる♪
あはははは♪」
ある者は存分に歌い狂った。
やめろぉおおお!!!
責任者!!いや、そんな者は居ない。誰でもいい。誰か!!誰かぁあ!!
「はむはむ・・。あぐあぐ・・。」
「それでリフレさんはどこの出身の方なんですか?いえ、それは何というかPTメンバーとして!友人として興味があってですね!あ、その興味っていうのは・・・――」
「あはははは♪あはははははははは♪」
誰でもいい、誰か!!!
こいつらをなんとかしろぉぉおおおお!!!!
何とかしてくれそうな人を探して周囲を見回す。
「・・・こんなにゆっくり飲んだのは久し振りだ・・・。」
1人は我関せずを貫き、
「大変そうね。
・・あ、コッコ鳥の焼いたものを頂戴。丸焼きじゃなくて、適当に刻んで欲しいのよ。
串焼きにしてくれると、尚良いのだけど。」
大変そう、というのは俺に対してではなく、ローグリアムに対してだ。
俺を引き止めた張本人は無関心の塊であった。
ちょっとこれ酷くね?
「♪ぜんらぜんら~!!ぜんらぜんらぜんら~あ~!!」
「おい、それはやめろ!!洒落になってないから!!!!!」
飲み会はいよいよ混迷の様相を呈していくのであった。




