また明日(仮)
書き途中です。
テイマー登録は、無事に終了した。が。
「登録証は明日、発行されるわ。つまり、この子は明日までウチで預かる事になるわね。
今回に限っては、明日までの預かり代は無料だけど、登録代と、忘れた時の為の『一時預かり金』をもらうわよ。
『一時預かり金』の方は、引き取りに来た時に日数が残っていれば返却されるわ。
あんまり遅くなると延滞料金が発生するから気を付けなさい。」
子犬を預ける事になった。あと、許可証の発行には名前が必要なんだそうだ。
明日の引取りまでに決めてくれれば良いそうだが、名付けはしない予定だったんだよなぁ・・。
「コイツ、できたら野生に返したいんで、名前を付けたくないんですけど・・。」
「手続きに必要なのよ。一時的なものでも良いから決めなさい。不備のある書類では許可証の発行ができないけど、許可証が要らないんであれば問題ないわ。
ただし、許可の出してないモンスターを何回も預かることはできないわよ。」
名前が無いとお話にならないみたいなのである。
まぁ、名前のいらない必要書類なんて聞いたことが無いしなぁ。
仕方ないといえば仕方ないのかもしれない。
うーん、名前なぁ・・・。PTメンバーに相談してもいいんだが、下手に相談すると揉めた時に困る。
誰の考えた名前を選ぶか?というストレスを考えたら、さっさと決めてしまったほうがいい。
そして、せっかくならそれなりに格好いい名前がいい。
仮の名前だからといって、ポチとかペスとか、ましてや記号や番号みたいな味気の無い名前を付けたりしたくはない。
ハイランドウルフの子供だから・・漢字にすると高原狼、か?名前にするにはちょっとな。
コイツは一見、チ○コっぽいものが付るようもに見えるし・・でも玉は付いてないように見える。
オッ○イが見えるようになるのは、おそらく子犬を産んでからだと思う。
その胴体はモフモフのフサフサで、これ!といった特徴が見当たらない。
雌だろうと思うのだが、犬を飼った事が無い上に、比較対象が無いので雌雄が分からない。
このアホっぽい表情が雄ですよと主張している気もする。
・・・・・本気でわからない。どっちだ?
狼・・ロウ、・・ウルフ、ウォルフ、ヴォルフ・・・・。もうちょっと捻ろう。
スザクだって鶏だけど朱雀から取っている。狼系の伝説の獣とか、神獣とかいたっけか?
フェンリルってのがいたわ!フェン、フェリル、フェルル、リル・・・。
こいつは体型的には多分メスっぽいから、ウルフ系よりもフェンリル系の名前の方が良さそうだな。
あとは・・・・・他に狼系って何かあったっけ????
もう一声!と言いたいところだが、残念ながら手元にはスマホなどの便利な端末が無いので、俺の記憶を頼るしかなく、俺の記憶だとここが打ち止めなのである。
って、何で森に返す子犬の名前でこんなに悩まなければいけないんだ?
あくまで暫定的な名前だ、気軽にいこう。フェン。こいつの名前はフェンにしようと思う。
どっちに転んでもいいように、雄でも雌でもどっちでもいけそうな名前にしておいた。
どっかのウーロン茶みたいな名前だが、呼びやすいし、漢字一文字にまとまりそうな、地味にいい感じの名前だと思う。暫定の癖に。
「じゃぁ、また明日だな、チビ・・じゃなかった、フェン。」
よしよしと頭を撫でてやる。
施設の確認もしたが、人間で言うところのカプセルホテルみたいな感じで、魔道具となっているペット用の小部屋はちょっと窮屈そうではある。
しかし、一日二回の食事と掃除、毎日ではないが簡単な運動などのお世話まで付いてくるとなれば、なかなか質のいいサービスなのではなかろうか。
従魔を置いて飼い主が行方不明になった場合や、預かったモンスターが暴れた場合、施設側の過失でペットに事故が起きた場合などの対処についての説明を受ける。
飼い主が行方不明になった場合、預かった金が尽きても数日(ペットの躾や価値によって変わる)は保持するが、オークション及び殺処分の対象となる場合がある事。
殺処分は、獰猛で人を襲う可能性の高い(街中で放つなどされると大変な事になる)モンスターや、買い手が付かなかったモンスターが対象である。
モンスターが暴れた場合、強力な眠り薬を使って鎮圧する他、時と場合によっては職員との戦闘になる事もある。
モンスターの出入り時は魔道具によって記録されるので、職員の過失があったかどうかを映像で判断できる。
モンスター側の問題である場合には、飼育モンスター管理組合側は一切の弁済をしない。また、その程度によってはテイマーに賠償金を求める場合がある。
が、職員の問題であった場合、職員に対し罰則がある他、従魔の状態によっては弁済する。などなど。
色々と質問もさせてもらったが、ペットホテルみたいなものらしい。
狼系なら簡単な訓練もしてくれるそうだ。別料金になるが、トイレの躾なんかも可能な範囲でしてくれると聞き、お願いした。
大型、扱いの難しいペットなどは料金が高くなるものの、スザクもファンもほとんど最低料金で預かってもらえそうだ。
食性が珍しすぎるペットや、餌の選り好みが激しいペットなども多く、餌を預ける事ができ、その分を割安にしてくれる事もあるようだ。
ペットホテルを利用したことがないので、元の世界のものとの比較ができないが、よく考えられてるんじゃないかな?
そして、預かり所に置いて行かれると理解したらしい子犬が、キュンキュンと悲痛な声を上げる。
ここなら敵や飯の心配も無いというのに、どうしたことだろう?
「明日の早朝だとまだ登録が終わってないかもしれないわ。でも、お昼までには終わってる筈よ。
無料の預かりは明日の夜まで出、明後日になれば延滞金が発生するから注意が必要よ。
また、あなたの実績が無いから、預かり金があるとはいえ、3日後まで連絡が無い場合はペットが処分されてしまうわ。必ず引き取りに来なさい。」
保健所的なものでもあるのかもしれない。
預かり所は便利ではあるが、あまり頻繁に使うのも可愛そうかもしれないな。
明日は休養日なのでいつでも来れるが、利用する場合は預かり金を多めに支払って、もし何かトラブルがあって引取りが遅れたとしても処分されないようにする必要があるだろう。
余分に支払った分は戻って来るそうなので、多めに支払っても問題無いしな。
俺は、必要書類に書き込みを終えると、きつそうな眼鏡の女性に挨拶と会釈をして、その場を辞した。
「キューン!!キャウン、キャウン!ギャイン!!」
フェン、その虐待されてるみたいな叫び声をやめろ。
うっかり振り向いてしまったじゃねーか。
俺は、その鳴き声を振り払うように、早足で宿へと向かったのであった。




