シビアな経験値(仮)
書き途中です。
頭に鶏を乗せ、腕に子犬を抱えて、高原フィールドを引き返す。
結局、仲間に遭遇することは(ある筈も)無く、期待した成果とはならなかったようだ。
「で、明日はどうするの。」
ティティが俺に聞いてくる。どうする、とは??
「明後日、討伐隊として海に遠征に行くでしょう?
準備するのか、それとも狩りに出るのかって話なのよ。」
俺の表情が分かり易いのか、マリッサの補足が的確である。
あー、そういえばもう一週間経つのか。
長いような、短いような・・・
「準備をしよう。」
俺は、すぐに答えを出した。
何しろ、ゆっくり休みたかったし、高原フィールドに夜来るのは危険だ。
なんとなく勢いで狩りをしているが、ぶっちゃけ、何故そうなったのか分からない。
本当に自由な時間というものが欲しかった。
「って言って、一人で来る気だろ?」
「そ、そそんな事は無いですよ?」
アーディに図星を付かれて焦り、全員にジト目を向けられた。これはバレてる。
できれば、俺の抱えているチビッコ狼を野生の群れに返してやりたい。これは早ければ早いほどいいと思う。
が、「ちょっとそこまで」と気軽にはできる話ではない。
向こうが匂いを感知して、寄って来てくれれば直ぐに片付く話だが、風向きによっては気付いてもらえないだろうし、逆に避けられてしまってはどうしようもない。
特に約束もしてないしな。こちらに手を出すなと伝えてある以上、避けられる可能性はある。
移動する群れを追って、高原フィールドを虱潰し・・普通に考えたら、かなり厳しいと思われる。
だから、優先順位は下げる。
マリッサは、モンスターが出現するたびに積極的に攻撃をしている。
所属しているPTがモンスターを倒すと分配される経験値は僅かだが、貢献度によるボーナスと、高レベルのモンスターと対峙することで得られるボーナスが結構付く筈だ。
が、貢献値は低いだろうから、風の遺跡の虫地獄の方が、断然効率が良かった筈である。残念な事に。
ちなみに、TFFはどんなに高レベルのモンスターに遭遇しても、貢献値を稼がなければ、微々たる分配経験値しかもらえないので、寄生に旨みの少ないゲームではあったりする。
この世界はゲームじゃないので、俺の認識と同じかどうかは不明だが。
ふと思い付いたので、他のメンバーが雑談している隙を縫って、ログを念じて確認する。
思い付いたというか、思い出したというか。
メンバーの狩りの補助的な役割をしていたので、分配経験値について分かる筈だ。
・・・・・。
さっきのモグゴンを倒して得た経験値、571だってさ。
ああ、レベルが合ってないもんな。
ベア戦。
参加した戦闘は147、見てただけの戦闘は17、単体で倒して243。
・・・・・ナイトメアは1192。
いや。いやいやいやいやいや。苦労に見合って無さ過ぎるだろう?!
レベルは200前後だったと思う。確かに格下だけれども!!!!!
そして、気になる文言を見つけてしまった。
[状態異常:狂化]
「えっ」
ログに気を取られ、足元を見ていなかった俺は、木の根に躓き、粉砕した。
「「えっ」」「・・・・・。」「・・・ふっ。」
すまん、森の木よ。てか、エルフって森をすごく大事にする種族だったよな?
目の前での森の破壊行為はまずいか?
まぁ・・・ナイトメア戦での所業はバレていて、手遅れではあるのだが、あっちは幻覚の中で戦闘をしたせいなので勘弁していただきたい。
「・・わざとじゃないよ?」
「いや、そうじゃないだろう?!生の木だぞ?!生きてるんだぞ?!」
案の定、怒られた。言い訳より先に謝罪だよな、普通。
すまん。テンパって頭が回って無かったわ。
「ごめん。」
「違う、そうじゃない。
いいか、生きた木っていうのは、めちゃくちゃ頑丈なんだ。切り出した木よりも遥かに耐性を持つ。
何が言いたいかっていうとだな・・・。躓いたら転べよ!それが普通だろ!!
いや、転ばなくていいから、つんのめって『おっと』ってなれよ!!!おかしいだろ?!どう考えてもおかしいだろ?!」
ローグリアムがガチギレした。どうしよう。謝っても駄目ならどうしていいか分からない。
というか、そもそも何に対して怒っているのか、よく分からない。
生きてる木の根を粉砕したから怒ってるんだよな?
「躓いたら転べ」って・・なんか独特の怒り方だ。エルフ的な言い回しなのかな?
・・とかやってる場合じゃないな。
冷静になろう。ローグリアムだって人だ。つまりお客様と一緒だ。
クレームが発生したらどうするか?謝ったら、次は原因と対策だ。
とはいえ、本当にお客様な訳ではないので、長ったらしい方便は必要あるまい。
「・・俺の不注意だ。これから気を付けるよ。」
「・・・・・・・。」
OKか?OKなのか?
様子を窺っていると、マリッサがローグリアムの背をポンポンと叩いた。
多分、届くなら肩を叩きたかったんだと思う。
「リフレに普通を求めるのは酷なのよ。この程度の事を気にしていたら、身が持たないわ。
誰の迷惑にもならない時は、そっと流しておいた方が楽なのよ。」
「そう、だな。うん。そう認識しておこう。」
いや、お前ら酷くね?
寄生=PTに貢献もせずに、付いて回るだけで経験値をいただく、ニートのような所業を指す。




