表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
342/430

ナイトメアの悪夢(仮)

書き途中です。


残酷な描写があります。

その獣に知性はあった。

だが、それは決して他の生物と相容れる存在ではなかった。


見つけた生き物を視線で捕らえて絡め取り、その精神を引き込み、恐怖を与える。

生命エネルギーを様々な感情であじ付けをして、それを食らうのだ。

形のないそのエネルギーを奪い尽くせば、生物は息絶える。が、獣はそれを好まない。

恐怖で痺れた生きた脳こそ、その獣・・・ナイトメアの最高の好物であった。


ナイトメアは飢えていた。

満足するほどの恐怖を与える前に、獲物が死んでしまうからだ。

じわじわと恐怖を与えてもエネルギーを吸い尽くしてしまうし、一度に大きな恐怖を与えても、恐怖に耐え切れずに死んでしまうのだ。

腹を満たす、という意味では、決して不自由はしていなかったが、本当の意味での満足をする事が難しくなっていた。

それは、ナイトメア自身が強大になったせいで、満たされるのに必要な食事よっきゅうが増えたせいもある。

そもそも、ナイトメアの現れる森に、好き好んで侵入する者などいない。


このナイトメア、元々は一匹のダークホースであった。

進化をする前は、そこまでの自我は無く、獲物を恐怖させる事で足を止めて肉を貪っていた。

その頃は、肉が食えて腹が膨れれば満足であった筈なのだ。

進化し、他のダークホースを従えるようになってから、その食性は変わった。

ただの肉では飽き足らず、その獲物を恐怖させ、悲嘆させ、絶望させ、発狂させ、その精神を味わうようになったのだ。


恐怖の影響を受け易く、タフな人間。

ナイトメアが求めて止まない獲物を、ダークホースが感知した。

この一帯のダークホースとは、従属染みた繋がりがあり、良い獲物が来れば知らせが入るのだ。

とは言っても、精神的なネットワークなので、報告にやって来る訳ではない。

ともかく、獲物は現れた。

狩りの時間である。


ダークホースを相手に抵抗を続ける人間を視線で捕らえ、その精神を引っ張る。

身の丈程もある、巨大な剣を振り回していた人間の意識は飲み込まれ、あっさりと膝を付いた。

記憶の中に存在する、負の部分。その暗い闇の幻覚の中に落ちたのだ。

ナイトメアは人間に近付き、ゆっくりと、なぶるように精神を侵食していく。

簡単に死んでもらっては困るからだ。


だが、逆を言うと、死にさえしなければ多少の事は、良い味付けになる。

致死量の血を流して錯乱した人間の恐怖を味わうのも良い。

それに、腹も減っている。

少しばかり味見をしても問題あるまい――そんな考えで、ナイトメアは少し加減して、その人間の男を蹴り上げた。


当たり所が悪ければ死にかねない一撃である。

並みの冒険者であれば、骨を砕き、肉を引き裂き、血を流すであろう。

が、その男は、跳ね上げられて倒れたものの、流血はしていなかった。


何度か試したが、結果は同じ。そうしているうちに、男の意識が戻りかけたので、再び幻覚の中に落とす。

こうしているだけで生命エネルギーを奪うことができ、獲物は次第に弱っていくのだ。

だが、つまりは活きが悪くなっていくという事でもある。

その上、強い者ほど、凄惨な経験をしており、それだけで気が触れてしまう事もあるのだ。

早く食ってしまわねば、美味しいタイミングを逃してしまう。


蹴りが通じないならば、と、その腕を噛み砕く・・・事ができない。

その身に付けている防具が高性能である事は、攻撃を加えた際に知ることができた。


防具に守られていない部分を探し、喰らい付く。

噛み締めても、引き千切ろうとしても、振り回しても、その皮膚に傷1つ入りはしなかった。

知性があるとはいえ、所詮は獣。むきになり、食欲を抑えきれずにその獲物の頭に牙を突き立てる。


本気で攻撃をしてみると、男の目に意思が戻った。

何か喋り、剣を構えたところで、再び膝を付く。

ナイトメアの悪夢の魔眼。視界に入れたものを、強制的に悪夢に誘う事ができるのだ。

多少、身体が丈夫であったとしても、視界に捕らえられてしまった今、もうナイトメアから逃れることはできない。


獲物を弱らせるには、攻撃を加える事に拘らずともできる。

この男に周囲の木々を攻撃させた。

周囲に仲間がいれば、相打ちにさせるという楽しみがあったのだが、単独ではどうしようもない。

せいぜい、体力・気力が尽きるまで暴れさせようと、そう思ったのだが。


・・・全てが、粉砕された。


しばらくして、男が我に返った。

ここで、普通ならば大いに取り乱すところである。腰を抜かすか、逃げ出すか。

だが、その男はナイトメアの存在に気付いた瞬間、猛然と立ち向かった。

悪夢に落とすのは簡単だったが、恐れられ続けてきた魔物が面食らうには十分な衝撃があった。


ここで初めて、ナイトメアはこの獲物の異常性に気付いたのだ。

ダークホースの動向に関心など無かったが、奴等が狩りを終えていなかったのは偶々(たまたま)では無く、その殆どが屠られていたからであった。


ナイトメアの胸の内に、少しばかりの恐怖と歓喜が去来する。

これほどの獲物ならば、もっともっと深い所へ誘っても大丈夫だ。


精神の侵食を強める。

それまで、本人の経験によって構築されていた悪夢に喰らい付いて干渉する。

魂の隅々まで恐怖に染め上げ、一片残さずに喰らうつもりだ。


記憶を引き出し、そいつの恐怖の象徴を大きくして飲み込んでもいいし、記憶を組み合わせて、他者の味わった恐怖を味わわせるのもいい。

人間は死を恐れ、痛みを恐れ、奪われることを恐れ、未知のものを恐れる。

決して倒せない幻となって、目の前で大事な人間を1人ずつ甚振いたぶり、殺してもいい。


まずは、恐怖の象徴・・・。昆虫、か。

存分に恐怖を味わっているようだが、人を殺す毒も牙も持たない虫を、そこまで恐れる理由がわからない。

知ろうとも思わないし、望んでいる恐怖と何か違う気がする。面白くない。


次は・・戦争だ。

殺意を持った人と人との争いに巻き込まれれば、人は容易に狂気に飲まれ・・


ドゴーン!!!ズババババババババ!!!バババババババババババン!!

バーン!!パン、パン!ズババババババババババババババババ・・・・・!!!


ナイトメアは混乱した。

一帯を用意に瓦礫に変える“ミサイル”に、兵士の持つ“銃”、届かないほどの上空から砲撃をしてくる“戦闘機”に、全てを轢殺する重量の鉄塊が高速で移動して来る“戦車”。

その人間の戦争のイメージは、それまで経験した事のない恐怖をナイトメアに与えた。


標的の人間は何処へ行ったのか?地下に非難し、篭城の構えだ。

そこにやって来たのは、戦闘機。“爆弾”を投下する。

それは、熱を帯びた閃光と共に見る物全てを消し飛ばした。


「ブヒヒヒヒヒヒヒン?!!!??!?」


「!!・・・ナイトメア。」


人間が、剣を構える。

動揺によって現実に引っ張られたが、まだ精神の繋がりは絶たれておらず、悪夢の中である。

ならば、ナイトメアは無敵である。


その人間の記憶にある仲間を登場させ、なぶるようにしてその命を奪う。

足りないなら追加だ。


恐怖が、悲嘆が、絶望が、心地良い。


このまま生命エネルギーが尽きるまで食らうのも一興、か。

堅くて食えない人間ではあったが、なかなか楽しめた。

後は、その命をゆっくりと食らうとしよう。



「おおぉぉォオオオオ!!!」



人間が、えた。


その瞬間、ナイトメアは吹き飛ぶような勢いで精神世界から引き剥がされ、気が付いた頃には、胴と首が離れ離れになっていた。


何故・・


ナイトメアは、最期まで理解できなかった。


自分が、狩る側ではなく、狩られる側であった事を。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
▽お知らせ▽

◆高頻度で最終ページ《(仮)タイトル》は書き込み中。
加筆・修正により、内容が倍以上増える事があります。
たまに前ページの内容を見て加筆する事もあります。

◆後追い修正の進行状況:現在152ページ。H.30 5/5

◆作者が混乱してきたので、時間がある時にタイトルに日数を入れます。
あとがきに解説も入れていくつもりです。いや、無理かもしれん。
がんばるー(棒読み)

▽ぼやき▽
3月には書き終えるつもりだったのに、5月になってもまだ序盤ってどういう事だ?
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ