幻想戦・後半(仮)
書き途中です。
目の前の敵をなぎ払う。
スキル:礫土嵐
範囲魔法スキルを浴びせて、マリッサの手を引き、距離を取る。
と言っても、周囲をみっちりと敵に囲まれているので、簡単な話ではないんだけどな。
障害物・・木や岩の多い場所までなんとかして逃げたい。
スキル:氷礫嵐
スキル:火炎嵐
遠い敵の動きを鈍らせたり、燃やす事ができないか確認したが、動きを止めるダークホースはいない。
これだけいれば、凍結や凍傷、火傷や発火などの状態異常に掛かる固体が出てもおかしくない筈である。
フィールドボスの出現で、何か変化が起きているのか?
ゲームではそんなものは無かったが、ここは異世界、現実である。
ゲームとの相違があったって不思議ではない。
実際、遭遇した事の無い魔物や行った事の無い場所というものに遭遇している。
それにしても・・足が遅い。
CC:リーフレッド
「逃げるぞっ!」
「本当にリフレなのね・・わわっ。」
マリッサを担ぎ上げる。
さて、どこまで逃げるべきか?
ハイランドウルフはフィールドを越えてやって来たし、フィールドを越えても追いかけてくる可能性は非常に高い。
だが、町にある結界までは越えられないだろう。
ならば、最悪、町までだろうな。
「どけぇ!!」
体当たりしてくるダークホースを躱し、町へ向かってひた走る。
町に着いたら、マリッサを置いて、再び戦わないといけない。
スザクは・・食われてしまったので絶望的だが、ギルディートとアーディを取り返さないとな。
なんかこう・・都合よく別空間に行ってるだけで、ナイトメアを倒したら出てくるかもしれないしな。
時間が停止してて、蘇生薬を使えば助かる。
何の根拠も無い事ではあったが、心に保険を掛けないと保たなかった。
俺が、夜に出歩かなければ。
おそらく、ギルディートやアーディは、俺を尾けて来たのだと思う。
さらに、その後をマリッサが追った、と。充分に考えられる話だ。
「ぜぇ、ぜぇ・・・」
「リフレ、少し休みましょ。今の状態なら、私の方が早いのよ。
このままだと、スタミナが尽きて、町に戻る前に倒れるわ。」
気が付くと、ダークホースの群れは振り切り俺達は木のまばらなフィールドを、町の方に向かって走っていた。
走ってみると、町って遠い。すぐ着くと思っていたのだが、甘かった。
「・・ぜっ・・・はぁ・・。」
マリッサを下ろし、呼吸を整える。こんなに息が切れたのは久しぶりだ。
この世界に来てから、息切れを起こした事なんて無かったんだけどな。
「・・・答えたく無ければ答えなくていいし、きつかったら頷くか首を横に振ってくれればいいわ。
息を整えてる間、さっきの・・女性の姿について聞きたいのだけど。」
「・・・はぁ・・ふぅ・・・・。」
頷いてみせる。バレた以上、隠し続けるつもりはない。
「あれは・・貴方の特殊な能力という事でいいのかしら?」
・・・うーん、多分、そんな認識で差し支えないと思う。
俺は、少し考えて頷く。
「今まで、何度か使っていたみたいだけど、あえて隠していたのかしら?」
頷く。
男が女になれるなんて、そりゃ言いにくいだろう。
理由はいくつがある。
俺は、昔から女性に間違われる事が多かったため、めちゃくちゃ気にした時期があった。
その延長線上というか、とにかく女物に対してのアレルギー反応というのは言い過ぎだろうが、最初はキャラを作ることにさえ抵抗があった。
ネカマ(ネットおかま)と間違えられないように、必ずメインで会った事のある奴と行動した。
とにかく、「俺が女なる」という現象に抵抗があり、バレるのも嫌だったのだ。
そして、客観的に見たらどうだろうか?
男が、女になれる。女性を装った男。女性に限りなく近い見掛けの男。
性犯罪なんて、おそらくやりたい放題だ・・。やらないけど。
できるということは、そういう目で見られかねない。
そういう趣味の人だと思われる可能性もある。偏見は免れまい。
そして、CCは強力な手札でもある。
この文化の違う異世界。何かの手違いで追われる羽目になっても、姿を変えられるというのは強みだ。
そして、普段使えないスキルが使え、アイテムを大量に持ち歩けるというのはデカイ。
だが、だからこそ隠しておくべきだ、と思うのだ。
全て、俺の都合である。
「・・・・・そう。」
多くは語らなかったが、急に距離が遠ざかっていくのを感じた。
俺が距離を置いたせいだ。
「マリッサ、実は・・」
この孤独な世界で距離を取られるのは、正直、きつかった。
それに、マリッサに対しては、もう、隠すことなど何も無い。
鍛冶をやったのも、この能力なんだぜ、と、カミングアウトをしようと思ったその時だった。
マリッサの背後に、唐突にそれは現れた。
行きに見かけた、俺を追って来た、黒い人影。
「なっ・・!」
影がマリッサを抱きすくめ、そのまま締め上げる。ぎりぎりと音がする。
マリッサが苦悶の表情を浮かべ、振りほどこうとするが、全く動じない。
俺は剣を抜き、斬り掛かろうとするが、地面を滑るように俺と同じ速度で後退した。
スキル:疾風
全速力。大地を蹴り、体を前に倒す。
本気どころじゃない。自分の限界の速度を求め続けた。
それでも、距離が縮まらない!
「マリッサと離せ!!!」
「・・・・・・・・・。」
追っても、追っても、同じ距離を保ったまま。
俺の目の前で。マリッサは息絶えた。
「あああああああああ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!」
まだだ。この世界には蘇生アイテムがある。
だから―― 返しやがれっっ!!!
剣を振るうが、届かない。
地面を滑っていたそいつは、少しずつ地面を離れ、上空へと浮いていく。
追いかけようにも、足場が無い。
ミシィッ。
影は姿を変える。口が裂け、体が大きくなり、その目が赤く光り、増えていく。
人の形をしているが、人ではない。
お前は・・・!
「やめろおおおお!!!!」
その腕に抱かれていた、肉塊が引き裂かれた。
そして、その大きな口に放り込まれる。
バリッ
正体を現したナイトメアに、嬲る様にして引き裂かれた。
腕、足、そして胴体・・少しずつ食われ、最後に頭が・・・・・
認めない。
違う。これは現実じゃない。
許さない。
認めない。認めない。認めない。認めない。認めない。認めない。認めない。認めない。認めない。認めない。認めない。認めない。認めない。認めない。認めない。認めない。認めない。認めない。認めない。認めない。認めない。認めない。認めない。認めない。認めない。認めない。認めない。認めない。認めない。認めない。認めない。認めない。認めない。認めない。認めない。認めない。
「おおぉぉォオオオオ!!!」
頭の中が熱を持った感情で埋まり、俺は、その振り切れた感情に身を任せたのだった。




