弓で戦ってみる(仮)
書き途中です。
夜。
このゲームでは、時間を問わず出現するモンスターの他に、昼のみ、夜のみしか出現しないモンスターも存在する。
そして、夜の代表格がこいつらである。
ダークホース。黒い馬だが、肉食という設定である。
なので、攻撃の種類に噛み付きがあり、その頭は馬というよりも鰐に近い。
グラフィックでは、もっと馬寄りだったんだが・・
「こわっ!」
ってか、どっちかって言うと
「キモッ!」
俺を取り囲んで、周囲をぐるぐる回ってる。何してんだこいつら?
襲い掛かろうとして躊躇しているようにも見えるが、仲間が増えるのを待っているのかもしれない。
弓キャラはレベル200は行ってない。180・・?
まぁそんなもんだったはず。
高原フィールドはレベル60~80で世話になるフィールドだが、夜はちょっと危険度が増し、レベル80~になる。
それでも、レベル帯だけを見ればまったく問題無い筈だ。
それでも、数が多いし、厄介な敵なのでCCを視野に入れる。
一番、楽に殲滅できるのは補助キャラだが、今、装備がなぁ・・・。
「ゲギキキキキン・・」
・・・それ、馬の鳴き声と違うだろ!
と思ったら、次々と集団で嘶き始める。何だ何だ!?
「コケ!」
襲って来た!
ちょっと数が多過ぎる!
「よっ!とっ!!」
噛み付きではなく、集団で踏み付けるつもりだったようだ。
これが本当の蹂躙というやつか・・・。まぁ、やられてないけどな!
雰囲気の良かった広場が、馬の足跡でグチャグチャだ。これは酷い。
俺は、何とか脱して木の上に這い登った。
木登りなんて初めての癖に、なんかいけるような気がしたんだが、気のせいだったようだ。
こう、ヒラリと決めるつもりが、よたよた、よじよじと無様な木登りを披露してしまった。
まぁ、誰も見ちゃいないんだけどな。
それでも、ステータスさんはちゃんと仕事をしてくれている。
握力や幹を捉えた足にパワー不足を感じる事は無い。こんなにも覚束ないのに、すいすい登れる不思議。
地上10m程か・・と言いたい所だけど、いいとこ5mだろうな。
もっと上に行けそうな気はするけど、枝が折れて落ちた時の事を考えると、勇気が出ない。
高い所が苦手という訳ではないが、得意な訳でもないし、ましてや戦闘に使った経験など無いのだ。
ここから弓を当てるつもりだったが、これは怖い。
幹に寄り掛かり、安定性を求める。
くそ、エルフだろ。もっと頑張れよ。・・叱咤するも、中身は自分である。
「ふぅ・・ふぅ・・」
恐怖で震える。
敵の数のせいか?それとも夜のせいか?それとも高所なせいなのか?
違う、どれでもない。
ダークホースの遠距離攻撃による、状態異常だ。
あいつら、取り囲んで何をしてるかと思ったら、俺が状態異常に掛かるのを待っていたのだ。
くそ、超・聖水は全部飲み干したし・・って、万能薬があるじゃねーか。
こういう時に視野が狭くなるのが、俺の悪い癖だ。
万能薬も飲んだほうが効果が高いのだろうか?でも粉状だしなぁ。
さらさらと頭から全身に被る。
よし、反撃だ。まずは・・
スキル:精神統一
スキル:鷹の目
スキル:射手
精神統一は、DEX(器用さ)とMEN(精神力)を上げるスキルで、CRI(会心)も少し上がるようだ。
鷹の目はDEX(器用さ)を上げる。
どちらも自分自身にしか使えないスキルであるが、これを使って攻撃が当たらないって事は、よほど基礎のDEX(器用さ)が低いに違いない。
加えて、このレベル差である。命中率に関しては、これで問題無いと言ってもいい。
スキル:射手は、攻撃力を増すスキルである。ステータスではなく、何故か武器に補正が付く。
弓を番える仕草をする。
現実で弓を構えるのは初めてだが普通にできるのは、やはり何か補正が付いているのだろう。
とりあえず、攻撃力の高いスキルで一撃必殺を狙ってみるか。
スキル:強弓!
ゴッ、という音と共に、ダークホースの頭を矢が貫通する。
クリティカル、と言って良いだろう。
「ゲフ・・・」
まだ生きてんの?!と思ったが、杞憂に終わった。
上半身を跳ね上げ、そのままドゥと倒れる。
「ゲヒヒヒヒン!!」「ギギキキキン!」「ビヒヒヒヒン!!」
「ギフィヒヒヒーン!」「ゲギャギャギャギャ!!」
耳に付くような鳴き声を上げ、興奮するダークホース。
俺の登った木の周囲を練り歩き始める。
逃げてくれたり・・・しませんよね。知ってた。
そして、お前らやっぱり馬じゃねーだろ?!
「・・・ぐっ。」
状態異常:恐怖
危うく、弓を取り落とすところだった。
ゲームでは身動きが取れなくなったり、動きがスローになったりするだけで、武器を落とすなんて事は無かったのだが、スローは震え、身動きが取れないのは武器を扱えないといったところだろうか。
頭から万能薬をぶっ掛ける。
「・・コッコッ。」
お前に使ってる訳じゃないんだよ。
一撃で倒せるならもう一丁。
スキル:強弓!
・・相手が動いていたせいか、クリティカルにはならず。
それどころか、ダメージを受けたダークホースを怒らせてしまった。
血走った目で、泡を吹きながら突進して・・木を駆け上がって来ちゃうの?!
「ヒッ?!来るなぁ!!」
俺は、恐怖で我を忘れ、思わず隣の木に飛び移る。
バコン!!「ぶべっ?!」ズルルッ・・ドスッ「ふぐっ!?」。
俺は顔面を強打して鼻血を噴き、ダークホースは標的を失って落下した。
飛び移りやすそうと思ったら、角度がね、こっちに傾いてたんだ。そりゃ顔から行くよね。
俺も一瞬、意識が遠のきそうになったが、尻の下に枝が張り出していた為、下まで落ちずに済んだ。
が、代わりに股間も強打した。
女で良かった・・いや、女じゃないけど・・それでも痛いけど・・危なかった・・。
空中に逃れていたスザクが、俺の背中にそっと乗る。
「・・・ひぅ・・・・・。」
俺は、静かに蹲り、痛みに耐えたのだった。




