暮れなずむ町の・・(仮)
書き途中です。
ちょっと遅めの昼飯。
それぞれが外側を向きながらの食事。見張りがいないのは、例外なく誰でもアイテムボックスを持つこの世界ならではだと思う。
食べかけの飯も、とりあえず放り込めば、すぐに戦闘ができるからだ。
方針としては、明日の昼に暗黒洞窟前に辿り着けるように、今日は早めに帰ろうという事になった。
何が何でも会いたいみたいだな、・・架空の人物に。
そう言ってやる訳にもいかないので、ぼうっと遠くを見ながら飯を食う。
今回は、俺は何も提供していない。だって、無理させてないし。
潜伏していない俺の我侭ではあるけど、「潜伏しろ」というのもギルドの注文も無茶だと思う。
だから、毎回何か出してやるのはちょっとな。
簡素な食事に同情を禁じ得ないが、アイテムボックスがあるのだから自分で持ってくればいいだけだ。
いくら重さの制限があるとはいえ、一食・二食ならそう変わるまい。
ガサガサ・・
さっきから、ちょっとずつ小動物が近づいて来ている気がしてたんだけど、気のせいでは無かったようだ。
全員、ちょっと気にしてはいたけど、方角的には俺の方だから、問題ないと判断したみたいで食事を継続している。
あいつならどうなってもいい、という意味では無いだろう。おそらく。
「・・・。フスン。」
茂みから顔を出したのは、子犬であった。あら可愛い。・・・とかやってる場合じゃねーな。
ローグリアムが弓を構え、しかも、矢が青い光を纏っている。スキルを使って一撃必殺の構えだ。
俺の制止のサインにも気付いているようだが、矢の先を向けたまま、いつでも放てるように標的を睨んでいる。
「“はぐれ”のハイランドウルフだ。仲間を呼ばれないうちに、そして成長して厄介な進化をしないうちに殺した方がいい。」
「いや待て。昨日、こいつらのボスに会ったが、話し合いのできる奴だった。できる事なら平和的に解決したい。」
「・・・・は?」
おっ、構えを解いた。
詳しく話せと目で訴えてきたので、昨日、合流しようと解体場所に行った時の話をする。
そういえば、ボスはハイランドファングとか出てたな。
こうしている間にも、茂みからひょっこりと出た顔が、引っ込んでみたり、出てみたり。
そして、鼻だけ突き出してスンスン動かしたりしている。
そして、身の危険を感じたらしいスザクが、そっと俺の頭上へと戻って来た。
お前、そんなに静かに行動できるよかよ!いつもそうしろ。
「“森の牙”と会ったの?」
“森の牙”って、ハイランドファングの事か?だとしたら森じゃなくて高原だと思う。
いや、わざわざ聞いてくるあたり、別の生き物の事かのかもしれない。
「ハイランドウルフより大きい、ハイランドファングっていうモンスターとなら会ったよ。」
「話したの?」
話し合いのできる奴だったって言ったよね?確認なのか?それとも聞いてなかったのか?
意図が掴めず、無言で頷く。
ガサガサッ
子犬・・いや子狼か。
子供のハイランドウルフは、身を隠して最大限まで近付いたつもりでいるようだ。・・隠せてないけどな。
そして何故か地面を掘る。バリバリ音がしてるけど、お前、本当に隠れてるつもりあんの?
「それで、向こうが手を出して来ないなら俺も手を出さないって約束したんだ。」
「・・・なるほど。」
とりあえず、放置である。
仲間が探しているだろうし、子犬とはいえ、そこまで幼くはなさそうだから、自分でもなんとかできるだろう。
鼻も良いだろうし。
そわそわしつつも、自然に戦闘状態は解除され、それぞれ休憩を続ける。
アイテムボックスから食事を取り出すと、再び藪の中から鼻が突き出した。
・・・腹が減ってるのかな?でも、餌付けは色々と問題がありそうだよな。
俺たちがノルタークへ向かうべくその場を離れた後、食べ零しは無いものかと嗅ぎ回る子犬がいるのを遠目に見た。
子犬と言っても、中型犬くらいの大きさで、仔犬独特の丸みを帯びた体型なので、重量だけなら大型犬並みにありそうだが。
「・・・気になるのかしら?」
「まぁな。でもペットには責任を伴う。これ以上、面倒は見切れないよ。」
スザクだけではない、ましゅまる始め、召還モンスター・・いや、精霊獣という話があるが、召還していない時の燃費は良いものの、ペットがたくさんいるのだ。
「・・・・・・。」
俺以外にも、ティティが振り返って見ていた。
狼系同士、何か気になるのかもしれない。
ハイランドファングの事も気にしていたしな。
「ベア!」
「2体だ。」
PT内での声掛け。俺は一度もやってないが、結構、重要らしい。
マリッサもやっていないが、PT経験が浅いとこうなるんだそうで。
まぁ・・間違ってないんだけどさ。
複数同時は久しぶりというか、まぁ昨日もやったけど、・・大丈夫そうだな。
俺は後ろでぼんやり突っ立っていて、最後に穴を掘るだけの簡単なお仕事だ。
結局、今日の獲物はそれで最後となり、俺達は暗くならないうちにノルタークへと帰って来たのだった。
ギルドへの道すがら。
・・・・・。
視線を感じる。
昨日の、一瞬の視線ではない。
振り返ると、人ごみの喧騒に消えていく。
気のせい、と片付けてもいいが、おそらく、そうじゃない。
「・・なぁ、俺に[呪い]、付いてないか?」
「付いているな。」
やっぱりか。なんか、嫌な感じがしたんだよな。
ほら、俺って中身は一般人だろ?そんなに視線に敏感な訳が無い。
それを街中で感じるってことは、やはり何かしらの威力を持った視線なのだろうと思うよ。
「おい、それだけか。」
「うん?」
他にも何か付いてるのか?と思ったら違った。
「アイテムを持ってるのに治さないのか?ここらにヒーラーはいないぞ。」
ヒーラーと言われて反応しちゃうブリジットさん、ぇ。
せっかく声を潜めて聞いたのに、ローグリアムの[呪い]とかが見える事については、別に隠匿されていないっぽい。
強く勧められて、というか、半ば強制で超・聖水を飲まされ、俺は暮れ始めた町で一際大きく輝くのであった。・・シャイン。




