遠い、遠い、遥かな道は…(仮)
書き途中です。
高原フィールド。
そろそろお昼だというのに、暗黒洞窟は一向に見えて来ないどころか、遥か彼方だ。
あれだけダラダラ歩いて、たっぷり休憩して、今もこうやってのんびり歩いてれば、そうなるというものだ。
「あ、来ました!ベアです。」
ブリジットが剣を振るうが、どうにも様になっていない。
そして、マリッサが槌を振るう。こちらは貫禄さえ感じさせる熟練っぷりである。
「全っ然、効かないのよ!」
当たり前である。
ブリジットは、後衛の補助ポジションが本来の役割だと思われるし、マリッサはレベルが全然足りていない。
2人とも、ハイランドベアの一撃で相当なダメージを食らうであろうに、何故、いの一番に飛び出していくかね。
まぁ、フォローする奴がこれだけいて、相手は一匹。しかも、動作が遅いとくれば、経験値を稼ぐのは当然といった感じではあるが。
・・正直、ブリジットはそこまで素早くないので。こっちはヒヤヒヤする。
「邪魔。どいて。」
そこに飛び出したのはティティだ。
さすがにダメージを与えられない前衛2人が壁になってるのは分かるが、邪魔って言い方は・・・まぁ邪魔なんだけどね。
2人に道を開けさせた上、背面に回って攻撃を仕掛ける。
「くらえっ!」
その開かれた通路をアーディが駆け抜け、一撃入れて身を低くしたタイミングで、ベアの顔面に弓が突き刺さる。
ローグリアムの無言の援護射撃に、距離を取ったマリッサが加わる。
「・・・・。スザク、あれに加わってみるか?」
「コケ??!・・コケッ、コケ??!」
ハハ、冗談だ。
コイツは話し掛けると反応するので面白い。
・・・うん、手持ち無沙汰なんだよ。
TFFはアクション系のゲームではなく、簡単なクリックゲームである。
攻撃は、特殊なフィールド以外は味方に当たらないし、自分で躱す必要は無く、棒立ちでもステータスに従って確率で攻撃が当たったり当たらなかったりする。
なので、加わるタイミングがイマイチ掴めない。そうでなくても、PTプレイ自体が苦手と言えるほどのソロプレイヤーになってしまったというのに。
2匹目でも出れば加わる隙があるんだが、モンスターとのエンカウント率が微妙に下がっている気がする。
というか、明らかに下がっている。
もしポップ方式なら、どっかにまとまってウジャウジャいたりするのかもしれないが、そうでないなら狩った分減るのは道理だ。
きっちり止めを刺され、解体タイムだ。
うん、1回ずつ解体する事になったんだ。
おかげで、掛かる時間がさらに増えた。
俺は穴掘り要員である。これ以外の出番は、今のところ無い。
さっき戦闘中に、離れた所で穴を掘っていたら怒られた。
どうせやる事がないので、空いた時間を有効活用させようと思っただけなんだが、フォローできるポジションにいないと駄目らしい。
戦闘の邪魔にならないように離れたけど、大した距離じゃないからすぐにフォローに付けると言ったんだが、そういう問題じゃないそうだ。
「・・・こりゃ、暗黒洞窟には着かんな。」
「なんだ、待ち合わせでもしてるのか?」
そうだ、と言ったらどうするつもりなのかね?
そもそも、そこまで行く気がないだろ?
待ち合わせなどする相手がいない、と言う訳にはいかない。
CCがバレない為にも、普段は一緒に行動していない仲間がいるという設定は崩さないようにしたい。
「待ち合わせと言う程のもんじゃない。たまに顔を合わせる事がある、程度の話だ。」
「「!!」」
全員、反応したのだが、特に激しい反応をしたのはブリジットとマリッサだ。
マリッサには以前から仲間がいることを匂わせていたし、おそらく、防具作りで世話になったとか思ってるだろうから、そうやって反応するのは分かる。
が、ブリジットは・・・?
「そこに、いるのね。」
そこに誰もいません。待ってなんかいません。
いると思われるのは困る。が、いないと思われても困る。どうしたらいいんだ、これ。
「伝説の鍛冶屋が!」「・・謎の聖人様。」
「同族がいる可能性もある。」「いや、こいつの女だろ。」
「・・・・・・。」
伝説って何だよ。そして、会ったことが無い人が謎なのは分かるが、聖人って何だ。
あと、俺の女って・・・お前が散々除いて暴こうとしたネタじゃねーか。
「まさかと思うが、それって1人じゃないよな?」
俺を含めて1人です。あしからず。まぁ人数の話は曖昧に笑って誤魔化しておこう。
誰か貸してくれと言われても困る。俺の体は1つしか無いのだ。
ギルマスには軽く話してしまったが、地方に散らばってるような感じで話しているし、問題ないだろう。
心の準備も無く嘘を吐きまくってると、癖になりそうで嫌だ。
必要な時以外は、真っ当に生きたい。
なので、ローグリアムの頭の中で伝説で謎な女性鍛冶屋の獣系聖人が出来上がってたとしても、俺は決して触れたりしない。
「おい、そろそろ休憩にしないか?昼はとっくに・・・」
「そんな場合じゃないのよ!『たまに』の確率を上げるためにも行くのよ。」
「そうですよ!こうしている間にも、苦しんでいる人がいるんです。交渉は早めに持ちかけるべきです!」
存在しない人と会う為に必死になる2人に、少し胸を痛めつつ、俺は空を見上げた。
スザクが落とされないように、グッと爪に力を入れる。・・・ちょっと痛い。
これでヘバられても困るので、俺は再び口を開いた。
「会えるとしたら飯の時間だ。今から行っても会えないと思う。」
嘘なんか吐かずに真っ当に生きたいんだがなぁ・・・・・。




