大容量です(仮)
書き途中です。
超・聖水の話は終わらなかった。
どこで手に入れたのかと聞かれたので、知人からと答えておいた。
知人とは誰か、どういう繋がりか、会うにはどうしたらいいか、同じ物を手に入れられるのか、どうすれば手に入れられるのかと、しつこい。
「当たり前だ。これを作れる者なら、聖水を作るのも簡単だろう。聖水があれば、呪病に対抗する事ができる。
まぁ、隠れ潜んでいるだろうから、会わせてくれとは言わないが、手に入れられるのなら卸してもらいたいものだ。
現状は俺の独断だが、ギルドが知れば必ず欲しがると思うぞ。いや、間違いなく欲しがる。」
面倒臭い事になった気がする。
が、人の命が救えるアイテムだし数に限りのある万能薬を配れと言われるよりはマシだ。
「会わせる事はできないし、俺もいつ会えるか分からないが、俺の所有している分については譲ってもいい。
ただし、俺の事は伏せて欲しい。」
「今更なのよ・・。」
俺の事を伏せるという部分に関して、全員から呆れた視線が飛んで来た。
今更かもしれないけどさ!今度はちゃんとしたやつだから!試食品みたいに「一口どうぞー」ってやつじゃないから!
「1瓶だけだろう?しかも、少し零れた気がするんだが・・。」
ローグリアムが、液漏れして濡れた瓶を手に取って、眺めながら問うてくる。
蓋が微妙なやつなので、簡単に中身が出てしまうんだよな。
まぁ、アイテムボックス標準装備のこの世界では、小瓶の蓋なんて飾りみたいなものだ。
いざという時に蓋が固くて空けられなければ本末転倒だからな。
他のあらゆるゲームを見ても、使用後のクールタイムが存在するものは多いが、使用前のクールタイムなんてものは無いのが普通だ。
少なくとも俺は、使用前クールタイムがあるゲームを知らない。
逃げる→逃げられない、もしくは回り込まれてしまう
魔法→MPが無くて使えない、沈黙などの状態異常で使えない
このあたりは定番だが、
アイテム→回復薬の瓶が開かない
なんて話は聞いた事が無い。
まさにご都合主義、ゲーム的な処理をされているというだけだが。
要するに、都合の良い処理なのだから、蓋なんぞ無いほうが良いに決まっているのだ。
もちろん「使う時は」という注釈が入るが。
だから、蓋なんて「うっかり倒しても全部はこぼれてしまわない」程度のものだ。
さっき、落としそうになった結果、激しくシェイクされた訳だから、中身が減るのは道理である。
下手したら、蓋がすっぽ抜けて中身が無くなっていてもおかしくなかった。
落としたら瓶が割れてたかもしれんし、そりゃ怒るわな。すまんすまん。
ブリジットが余裕で付いて来れる程度にノロノロと歩きながら話していたので、まだ高原フィールドの手前だ。
大して消耗していないだろうが、これからの事を考えると、少し休んでおいた方がいい。
休憩がてら、例の壷を取り出す。
「瓶に詰め替えた分はそれしかない。自分で詰め替えてくれるなら、まだあるぞ。」
「「うひゃーー」」
何故か震え上がるローグリアムとブリジット。
見回してみたけど、敵襲という訳ではなさそうだ。
壷か?壷のデザインは・・別に良いとは思わないが、身を寄せ合うようなデザインではないぞ。
「あーー・・こりゃ配るわ。なんか、こう・・貴重とかいわれてもピンと来ないな。
・・無料でもらったんだろう?」
「・・水代くらいは払ったさ。」
アーディに言われて、さっき、「知人からもらった」と言ったのを、こっそり地味に訂正しておいた。
物々交換的な事をしてるという事にしておくか。
「・・・水代・・・。」
あまり効果は無いみたいだけどな。
みんな空瓶なんぞ持ち歩いていないそうで、結局、そのまま仕舞う事になったが。
あ、ローグリアムがさっきの小瓶ごとお買い上げだ。現金は重量にならない不思議。
ちょっと零れたにも拘わらず、1,500Dを渡され、受け取る。
まぁ誤差だからいいよね。
「で、俺は知人と連絡が取れたら、聖水を作ってくれと頼めばいいんだな?」
「・・あ、ああ。よろしく頼む。俺も頭を下げよう。」
いや、補助キャラでお前と会う気はねーよ。
「詰め替え作業はそっちでやってくれるか?瓶も用意してくれると助かるんだが・・・。」
「まだやってもらえると決まったわけでは・・。
もちろん、もし引き受けてもらえたのなら、それくらいはさせてもらうが・・・。」
水代が掛かるのは痛いが、大勢の人の命が助かると思えば、そりゃ引き受けるわ。
うん?コランダで作れば無料じゃね?
壷はこの件と関係なく買った訳だし、MPは休めば回復する。
つまり、俺の負担はCCしてスキルを使う事だけだ。
・・・・・そこまで簡単じゃなかったわ。
まぁいい。雑用はギルドに任せられるという言質は取った。
とりあえず作って壷ごと渡し、後で壷を返してもらえば、スキルを使う以外の労力が必要無いという事だ。
瓶は作るにしても買うにしても、数が必要だろうから、用意するのは大変だ。
そこをギルドに任せられるというのは大きい。
金も掛からないし、ボランティアとしては楽な方だと思うし、その割りに貢献できる部類だと思う。
知ってるか?ボランティアって金かかるんだぜ。
「ギルドの財政状況が悪化している最中じゃなくて本当に良かった。
ギルド員の給料さえ危うい時期もあったが、今なら、それなりの支払いができる筈だ。
・・・と言っても、安くしてもらえるに越したことはないんだけどな。」
「・・・え?」
まさかの買い取りですか?
どこかへ散っていた視線が、再び集まってくるのを感じる。
「お前、まさか無料で交渉する気だったのか?
さっき散々、貴重だって話したよな?作るのが大変だって。
これ、絶対抉れるだろ。・・おい、俺を同席させろ!」
拗れねーよ!中身、俺だもん。とは言えず・・。
やいのやいのと休憩は大幅に長引く事になるのだった。




