飯テロを敢行します(仮)
書き途中です。
この料理は・・・白身魚のフライというのが、俺の知る料理に最も近い。
料理名を尋ねようにも、店員さんは行ってしまったからな。
何か恐ろしい事を言っていた気はするが、食えないものを飯屋で出したりしないだろう。
とりあえず、一口。
「・・・っ!」
サクッ。ホロリ、とろうま~。
語彙が貧弱で申し訳ないが、手短に表現するとこんな感じになる。
見た目よりも歯切れの良い、厚過ぎないがしっかりした食管のある衣。それを噛み砕く音はザックリではなくサクリ、である。
その中身はホロリと柔らかいのにジューシーな魚。まるで、雲でも食んでいるような食感と言えばいいのか。
衣の中にあるというのに存在を主張し、しかし、あまりの儚さに一瞬で噛み潰されてしまう。
その柔らかさに驚いているうちに口に広がるのは、トロリと蕩けるような魚の旨み。
下味に塩とバター?まさか、バターで揚げたりはすまいが・・・。下味じゃなくて、最後に付けたのかな?
ソースは3種類だが、どれも美味しい上に、組み合わせても美味い事が発覚。
えーと、簡単に言うと、トマトっぽいやつ、アボガドっぽいやつ、チーズっぽいやつ。
俺の例えは下手だって言うから、他の元の世界の人なら別の表現をしたかもしれないな。舌には自信が無いんだ。
・・・ノルタークで泊まってる宿の飯の担当よりはマシかもしれないが。
結構良いボリュームだったのだが、あっという間に無くなった。
そして・・・・出たよ、謎デザート。騙されてはならない。
終わりか・・って思ったら、この後にメインが出るという、偽物のデザートである。
今度はシャーベットか。
チラリと周囲を窺ったが、コースによって違いがあるみたいだ。
なぜ周囲を窺ったかって?俺のシャーベットが、綺麗な水色をしていたからだ。
何味なのか想像も付かない。まさかのブルーハワイ?それともミント?
海をイメージさせる為だろうか。そんなとこに拘らなくていいと思うよ。
恐る恐る口に入れる。
ん?果物っぽい味がする。さっぱりとしていて、甘みも酸味も強くは無い。
何のフルーツなのかは分からないが、オレンジとリンゴを足して3で割ったような味かな?
うまい!という程ではないが、さっきまで魚の余韻の残っていた口内がリセットされた気がする。
もしや、その為のデザートか!?
そして、次に運ばれて来たのは・・・・・白い塊であった。
「まずはそのままお召し上がりください。」
・・・なんだこれ。海の幸・・・だよな?
まさか、蛸って事はあるまい?
ぶつ切りにされた蛸ってのは、ちょっと斬新ではあるが、イカ焼きみたいなもんだろうか?
つまみとしてならともかく、メインとしての魅力は感じない。
この辺の人にとってみれば、海の幸と言うだけで珍しいもんな。
が、この店が奇抜なだけのものを出すだろうか?食ってみれば分かる。
ナイフを入れると、弾力を持った感触にも拘らず簡単にカットできる。
このプリッとした感じには覚えがある。確信を持って頬張るが・・・。
「!!・・・」
想像を超えた。
甘い。そして美味い。その味は俺が知っている蟹をも超える。
塩味を効かせて、旨みを引き立てているだけじゃない。
旨みの基準値が違う。茹でたんでは、この味にならない。
おそらく・・・
「蒸し焼き・・。」
「ご名答です。岩海老の蒸し焼きになります。」
まだいたのかよ、店員さん。さっき不吉な言葉を残した時にはさっさと居なくなったくせに。
普通の海老と違うのは、分厚いステーキよりも肉厚の切り身であるという事。
海老の塊を頬張る・・イセエビとか、ロブスターぐらいの大物じゃないと、元の世界では味わえない絵面だ。
完全に硬くなるほどは火を通しておらず、半生でもない。
肉でいうところの、ミディアムレア以上ウェルダン未満といった感じだ。
ジューシーかつ、しっかりとした食感で、硬いとか筋張ってる感じは無い。
こういう素材なのか、それとも店で何か工夫しているのか・・・。
こちらのソースをお好みで?ふむ、試してみようか。
まぁ、蒸し焼きはそのままの方が美味いに決まってるけどな!
「?!・・・ふおぉ!!!」
なんだこの白いの。メレンゲ?ふわっとしたソース。
あれ?店員さん???・・・肝心な時にいやがらねぇ・・・・・。
平たく言えばサワークリームなんだが、そこまで棘のある酸味じゃないんだよな。
あと、ネギ系の・・サワークリームと言えばタマネギなのかもしれないが、シャクシャクとした細かい粒が、そのソースを引き締めている。
それが、海老の旨みを邪魔しない絶妙な加減で、ものすごく美味い。
次は・・この地味な液体に行ってみようか。
見た目からして、多分だけど和風かなぁ・・・?
「・・・・・。」
和風だけど、思ったのと違った。半分合ってたか。
お出汁か何かだと思った薄茶色の液体。お出汁ではあったけど、酢が入ってるっぽい。
すごく穏やかな味だけど。そしてさわやか。いくらでもいけそう。
赤いのは少しピリ辛だった。
俺の知ってるソースに例えると、スイートチリソースみたいな味だ。
もちろん、そのものって感じじゃないが、今回の例えはだいたい合ってると思う。
これもいけるが、先に食ったやつと比べるとなぁ・・。
そして、緑色の物体。
地雷臭さえ漂うカラーだが・・・俺は、この店を信じるぞ!・・パクッ。
「・・うん!」
美味い。
ちょっと塩味の効いたアボガドソースと言ったところか。
青臭さは無いがほうれん草のような青物の味がする。うーん、表現が難しいな。
ソースがクリーミーなので、塩が効いていてもマイルドに感じる。
何か、隠し味にハーブでも使ってるんだろうか。後味が不思議な感じだ。
・・・茶色のソース。
想像が付かないが、付けてみて気付く。・・この感触、もしや・・・。
味噌であった。豆で作った方じゃないぞ。海老の味噌だ。
これも、適度に薄めてまろやかなペーストにされており、味の方は言わずもがな。
ああ、幸せだ。
結構良いボリュームだったが、すぐに食べきった。
メインは終わった。だが、これだけで終わる店ではなかった。
「ここへ来てカルパッチョとか・・・・!」
「ミックスカルパッチョ風サラダになります。」
あくまでサラダという事らしい。
確かに、ほんの彩り程度に添えられた海鮮だが、それでも刺身は刺身である。
全員の視線が、俺のサラダに注がれていた。生の魚と、茹でた蛸が乗ったサラダだ。
最初のメニューにも半生の魚はあったが、皮に包まれていたしな。
みんな、結構いいリアクションをする。
特に、討伐隊に加わってないブリジットなんかは「それ食べちゃうんですかぁ?」とか言い出しそうなくらいオドオドしていた。
「やはりチョコは至高・・・・・。」
約一名、目もくれていない奴もいたけどな。




