間の悪さには定評がある(仮)
書き途中です。
ああ・・・更新が1日ストップしてしまった・・・orz
ハイランドディアは、ベアやグリズリーと比べて動きが素早かった。
牙と爪が無い代わりに角と蹄がある。
しなやかな筋肉の付いた後ろ足での蹴りは、鞭の速度と鈍器の重量を持ち、人を容易に殺すという。
草食獣とはいえども、決して侮れない相手である。
狩り慣れていない分、こちらの方が厄介と言えたが、肉も革もこっちの方が高いとかで、「できるだけ傷付けずに倒すぞ」とか言われた。
変な注文を付けるなよ。おかげで苦戦したじゃないか。
最終的には、俺が角を受け止めている間に、ティティが止めを刺した。
おかげで返り血を浴び、服が汚れてしまった。
一言声を掛けるとか、何か工夫しろよな・・・。
さて、ハイランドディアを倒した後、一旦、解体休憩を取る事になった。
俺の手際の悪さを知っているローグリアムの指示で、俺は穴掘りである。
不要部位などを捨てる為だ。腐った時の事を考え、深めに掘る事が大事だそうだ。
俺以外、ちゃんと解体できるという現実。
ブリジットさんも、ここは休むとこだろ?
「私は冒険者だから、こういうのは得意なの。任せてよ。」
みんな冒険者だよ。俺だって冒険者だし。
でも解体はできないんだ・・・・・。
俺が地面に「の」の字を書いてると、その横でスザクが地面を突く。
こいつ、モンスターの死骸を見ると、必ずと言って良いほど毎回突きに行くんだよな。
本当に死んでるのかを確かめているんだろうか?
ブリジットが「スザクさんは討伐ごっこをしてるんですか?」と言い、雰囲気が和んだ直後、アーディが「じゃぁコイツはゴッコ鳥だな!」と言って空気を凍らせた。
もちろん俺は聞こえなかった事にした。
なので、アーディの助けを求めるような眼差しにも気付いてません。見えてません。
あと、緊張感が欠けているのか、ブリジットがボロを出し過ぎな気がする。
敬語が出てるし、「私は冒険者だから」とか、全員が冒険者の場で改めて言う事は無いだろう?
まるで俺が冒険者じゃないみたいな言い方になってしまい、焦ってたけど・・・。
「の」
「コ。」
それは「コ」じゃなくて「・」だと思うぞ。
「ち、違うんです、そういう意味じゃなくって、えっと。
私が冒険者っぽくないっていうか、あんまし冒険者扱いしてもらえないっていうか!」
分かってる。面白かったから弄っただけだ。
女性で顔も可愛いとくれば、つい構ってみたくなるものなのだ。
だが断じてセクハラでもパワハラでもない。コミュニケーションだ。
少なくとも、俺はそう思っている。
「まぁ、俺が解体できないのはともかく、役に立てる事が他にあるんだから、そっちをやるよ。」
スキルで速度を上げれば、ちょっと深い穴などあっという間である。
前にフォレビーの巣を掘り返した程の仕事じゃない。
「相変わらず、凄まじい速度ね・・。」
「相変わらずって、前にもやったのか?」
マリッサにアーディが問う。
剣で掘り返して、スコップを貸してくれたエピソードなんて言わなくていいから!
コイツ、隙あらば変な歌を作るんだから、やめてくれ。
「解体よりも、穴掘りが得意な冒険者・・・。」
興味津々のティティ。何とでも言え。
だいたい、ゲームではドロップ方式だったんだよ。
ベア系は通常ドロップが熊肉、一定確立のドロップが毛皮、レアドロップが熊胆である。
うん、普通は解体しないと取れない。
「さ、解体するか。」
呆れたような声のローグリアムが、穴にモンスターを吊るし、血抜きを始める。
スコップにロープは冒険者の必須アイテムのようだ。
スザクはその辺を歩き回っているが、決して見えない場所には行かないので安心だ。
俺は、浴びた返り血を綺麗にしたい。
そうローグリアムに報告したら、「どういう意味だ?」と怪訝そうな顔をされた。
どういう意味も何も、そのままの意味だよ!
女性が2人もいるし、ちょっと離れた場所で体を拭いて、着替えたいの!
・・・岩の壁を背に、パーテーションで体を隠してやることになりました。
防具も無しに野獣が寄ってきたら大変だとの事。
普通は、返り血とか帰るまでは放置するらしい。
俺には見張りを頼みたかったようだが・・すまんね。
で、そんな事をした結果。
「アオーーン。」
周辺から狼が現れ、
「・・・・・。」
空から巨大な鳥が旋回を始めた。
何、あのデカい鳥。見た事が無いんだけど。
ってか、ハイランドウルフってこのフィールドで出るの?
お隣の住人じゃないの?リアルのこの世界に、フィールドの境目なんて物は無いのか・・・?
「・・・・・ルフ鳥。」
そんなモンスター、聞いた事も無いんだが。
おい?俺、半裸なんだけど?全員、戦闘体制取れよ?
「おいリフレ!早く着替えろよ。さすがに俺達だけじゃ無理だ。
拭き取りなんてしてる場合じゃねーだろうが。とりあえず後にしろよ。」
この覗き魔が!
パーテーションが倒れるだろ!倒れたら意味ないだろ!やめろ!
お前のせいで時間を食うだろうが。離れろ!!
「あの群れと戦う気かよ?!逃げるぞ!早く服を着ろ!」
「解体中の獲物がある。それに気を取られている間に逃げ切れる筈。」
ローグリアムとティティは逃げるつもりのようだ。
すでに解体の手を止め、巨大な鳥・・ルフ鳥というらしいが、それを避ける為か、背後からの奇襲を避ける為か・・まぁ両方だろうな。
太目の木を背にして、周囲の様子を伺っている。
「私、もう動けないです・・・っ」
逃げるのも戦うのも無理!宣言をしたのがブリジットだ。
体力の消耗が激しく逃げるのも厳しいようだ。
ちょっと休んでから逃げる、なんて事ができれば話は別だろうが、そんな猶予は無い。
おそらく、補助要員としては動けるのだろうが、今は剣士をやっている為、動くに動けないのだろう。
「おい、スタミナ回復薬はどうしたんだ?もう全部飲んじまったのか?」
「かなり使ったわ・・ 走って逃げ切るには厳しいくらいには。」
揉めるな。分けてやれよ。
俺も、(小)だけど持ってるぞ。
ちょっと待てよ、まだ装備が着けられてない。
「落ち着いて。とりあえず方針を決めるのよ。」
「退く。」「迎撃しよう。」「逃げるに決まってるだろ!」「あわわ・・・。」
バラバラじゃねーか。
もちろん、敵モンスターが俺達の都合に構ってくれる筈もない。
包囲網を狭めていたハイランドウルフが、そして、獲物を決めかねていたルフ鳥が、ついに襲い掛かって来たのだった。




