もふもふと一緒
さて。俺は結局、街道からかなり外れたところで髭を剃っていた。
水筒の水を少しだけ使い、頬を塗らす。
石鹸はぬるっとするだけで泡立たず、無いよりマシなのかなぁ?程度。
何より、剃刀が悪過ぎた。
「イテッ。」
・・・・・。髭は剃れないのに頬は切れる不思議。
なんでこうなるんだ?何?俺の髭は防御力高いの?
かなり時間をかけて髭を剃る羽目になった。
で、HPポット(大)を少量手にとって顔に塗る。
「おおっ」
HPポットというと使い切りのイメージがあったが、これはいい!傷薬の感覚で使える。あ、元々傷薬か。
メインよりサブ鯖の方がポットを持っていたが、買える場所と金の算段が済まない限りは節約した方がいい。
歯を磨く。
・・・・・・。
これも、納得するだけの爽快感を得るまでにはものすごく時間がかかってしまった。
そして・・・もうお昼か。
髭剃りと歯磨きにこんなに時間をかける予定じゃなかったんだ。
今、歯を磨いたのに昼飯?
それもちょっとなぁ・・・。
よし、町に行って食べよう。
問題は、ディアレイに行くか、ノルタークへ行くか。
近いのはディアレイ。規模がでかいのがノルターク。
ノルタークに足を伸ばしてもいいけど、ここまで思ったより時間を食ったこと、規模がでかくて見て回るにも時間がかかりそうな事を考えても、ディアレイが無難だろう。
ペットの好感度上げが待っている事を考えても、時間が押している。
このフィールドには鳥系モンスターがいるはずで、だとしたら道沿いにはいないだろうから、ちょっと道を外れることになる。
ディアレイは、西にほぼ真っ直ぐ抜けていくとあるので、南西に向かい、鳥モンスター肉を確保次第北上すれば、万が一マップから外れても迷うことはないだろう。
道があるって素晴らしい。
そんなわけでディアレイに決定。
よし、モンスターを探すぞ!
・・・・・。
そうだよね。
普通は逃げるよね。
フォレビーはあれだ、巣を狙われたとか、針を飛ばされて敵対するエキス(?)みたいなものを付けられたから寄って来たんだ。
・・・・・・・。
いや、モンスターなんだから人を襲おうぜ?(酷)
「せいっ!」
HIT!
リーフレッドは投擲スキルを手に入れた!
いや、まさか武器を使わなくても狩れちゃうとは。
あ、ちなみに投擲スキルは冗談です。生えてません。
よし。
召喚:もふもふ
「わふっ!」
大型犬ほどのサイズのワンコ・・・もといホワイトファングである。
大剣はソロ特化なのだがPKが好むキャラでもあり、少しでもイメージにプラス補正を付けようと、ペットや装備はできるだけ明るめの色を選んでいる。
メイン鯖リーフレッドのペットドラゴンは卵から育ったので偶然だが、白のペットで揃っているのだ。
「・・・・・。」
あれ?攻撃してこない?
めっちゃ尻尾振ってる・・・。
「ほら、ご飯だぞ~。」
・・・・・。
食わないのか?
・・・これは、もしや、「待て」してるのか?
「よし!・・食べていいぞ。」
お、食い始めた。
「グルゥ・・」
いや、唸るなよ。怖いよ。
尻尾は振ってるんだけどな。
食後にペットのアイテムボックス(枠はレベル固定でレベル5から使用可能)からブラシを取り出した瞬間、フーンと情けない声を出して体当たりして来た。
いや、潰されるって!甘えているんだろうか?
ブラッシングしてやる。
その間、ずっとキュンキュン鳴いたり、時折、スピスピ鼻を鳴らして身を捩じらせていた。
その鳴き声疲れないか?嬉しいならいいんだけど。
もふもふが超もふもふになるまで丁寧にブラッシングした。
いつまでやっても喜んでそうなので、今回はこれでおしまいだ。
舞い散りそうな毛を確保する。どこかで捨てないとな。
そういえば鶏を持った時みたいに臭くはなってないな。うん、匂わない。
こいつはレベル7で、経験値は満たしているが、攻撃スキルを持っていない。
ちょっとだけ歩くか。
ディアレイの町が見えてくるまで、散歩を楽しんだ。
あれ?モンスターを狩って来たのか?
攻撃スキル取ってないんじゃないっけ。
まぁ横狩りしないならいいんだけど。
「食べたらいいんだぞ。」
・・・・・。
俺にくれるのか。
さっき上げた意味が無い気もするが、うん、もらっておくよ。
ディアレイがマップに見えてきたので送還した。
モンスターと間違えられても嫌だし、ペット入店禁止とかだったらややこしいからね。
・・・・・。
疲れたぁ。
いや、可愛いんだけどさ。
生き物を飼ってる感がハンパない。
罪悪感すごいし、もうちょっと面倒見よう。
さて、町に入るとするか。
ディアレイは、一見、緑の豊富な田舎だが、鍛冶屋の腕が良かったり、ショップが多かったりと、コランダと比べるとNPC人口密度が高く、賑やかな町だ。
南に行くと森、山、川、滝、湖といった自然豊かな景色が楽しめ、多彩なモンスターが生息している。
その多彩なモンスターの素材を求めるクエストで、ギルドはプレイヤーで大いに賑わっていた。
プレイヤー、いるかな。
期待と不安を胸に、門をくぐる。
装備から開放されると、近くの店から漂う料理の香りに引かれ、思わずそちらに足を向けるのであった。
節約した方がいい(キリッ)