待ち伏せ
俺がのんびりと飯を食ってる間に、ローグリアム・・影で俺の警護をしているエルフの兄ちゃんから接触があったようだ。
接触というのは、明日の予定についてだ。
明日、俺達は高原フィールドにて散策を行う事に決定していた。
朝食後、ギルドで落ち合うという約束だ。
ティティは友人、ブリジアは今日顔合わせしたばかりの知人、ローグリアムは初対面という設定で顔合わせをして見せるのだそうだ。
冒険者としての活動、そして組織と呪術師へのアピール。
どこに潜んでいるのか分からない輩を相手にするので、とりあえず情報を振り巻く訳だ。
情報を誘導する布石とか何とか。
戦闘面では頼りないローグリアムも、諜報員としては優秀なのだろう。
まぁ、本人が立てた計画ではなく、もっと上の方からの指示かもしれないが。
俺としては、全員そんなに親しさの程度は変わらないのでやりにくいが、その辺は、向こうで調整してくれるので心配ないとの事。
ティティが勝手に親しくし、ブリジアとローグリアムは、それなりの距離を持って接触して仲良くなっていく、そんな感じでいくそうだ。
そして、決まったルートで町の中と高原フィールドを散策し、呪術師や監視者を洗い出す。
尾行するとバレる可能性がある事から、待ち伏せ方式のようだ。
ちなみに、俺が前に行った安全地帯は高原フィールドの手前にあるのだが、そこにも一応、ギルドや警備兵の諜報員が潜んでいるのだという。
俺が思ってた以上には、一応、町のシステムは機能してたらしい。
なので、尾行がいれば、そこの諜報が仕事をしてくれるし、それ以外にもレベルが不足しない範囲で、各所に配備された人が見守ってくれるのだそうだ。
「でも、さすがに高原フィールドまでは尾行はして来ないと思うわ。
確かに、付いてくる人が限られ、搾り出すには打って付けではあるけど、敵が強すぎるもの。
あそこは、腕が立っても少人数で行くには厳しいもの。ローグリアムは、何故あんな所を選んだのか・・。」
多分、俺のせいだろうな。
地理的には潜り込ませている諜報員の関係上、自然に監視できるという意味で挙がったのだと思うし、戦力的な意味では問題ないと判断されたのだろう。
ちなみに、マリッサやアーディが合流するのは問題無いそうだ。
本人の希望に任せるが、この任務(?)の説明はしてはいけないとの事。
呪術の危険性については・・ ローグリアムが状態異常をチェックして、もし罹っていたら、ギルドか教会に連れ込んで、こっそり解呪するそうだ。
ローグリアムみたいに、呪術師がステータス見れる可能性についてだが、それも俺が全力で釣る事ができれば問題ない筈だという。
向こうは何故なのか調べたりと動くだろうが、その前に根本から解決してしまう事ができれば勝利というわけだ。
逆に、釣りに失敗した場合は難しい事になるのだが、メインの標的が俺なのは変わらない。
洗い出しが出来なかった場合、仲間達は潜伏。俺も船を使って逃亡することが決定していた。
勝手に決めんな。と言いたいが、この敵の炙り出し作戦は俺の我侭だしなぁ。
だいたいの話し合いが終わり、自室へと戻ろうとする。
この時間は、宿泊客が少なくて、かち合う事はあまりない。
だが、それは相手が自分と接触をしたがっている場合を除く。
「待っていたのよ。ねぇ、前に作った防具、ちゃんと作り直したから、見てもらえないかしら?」
俺の部屋でマリッサが待ち構えていた。
はぁ・・と溜息を吐く。
とりあえず、部屋に招き入れた。
そして、部屋を改める。ティティやブリジアがやってたように、トントン、トントンと壁を叩いてみた。
「なぁ、宿でこうやって盗聴の心配が無いか確かめるのって普通なのか?」
マリッサに質問する。
「まぁ、秘密があるなら一般的ではあるわね。
でも、『この宿を信用してない』という意思表示でもあるから、宿の人が見てる前ではやっちゃ駄目なのよ。
あと、ウチでやったらぶっ殺すわよ。・・急にどうしたのかしら?」
よく考えてみたら、当たり前ではあるが、何気に宿に対して失礼な行為だったようだ。
うーむ、組織・・特に呪術師を釣る件はマリッサにあまり漏らせないんだよな。
でも、コイツは口は悪いけど、軽くは無い。ある程度は・・もちろん情報は選ぶが、知らせておくべきだろう。
「前に、お前を誘拐した組織があるだろ?
あれ、もしかしたら相当ヤバい組織かもしれない。
そして、俺達は狙われてる可能性がある。」
それを聞いたマリッサは、部屋の調査を手伝ってくれた。
「床と壁には、構造上、不自然な所は何も無いわ。
床は、階段を登るときに調べたけど、十分な厚みはあるけど人が忍び込める程じゃないのよ。
壁の反響からして、こちらも不自然さはないわ。厚めの壁があって、広い隣部屋がある。
狭い通路のあるような音じゃないわ。
問題は天井と魔道具ね。
小物に何か仕掛けられてる様子は無いけど、さすがに大物を分解してみる訳にはいかないのよね。
まぁ、常識的に見ればシロよ。1人部屋だし、宿の雰囲気もそう。
ただ、リフレに魔道具を仕掛けさせる隙が無かったとは言えないわね。」
鍵を掛けてない事があるのを咎められました。
いや・・別に宿に貴重品とか置いてないし。
「そういう問題じゃないのよ。いい?ここに誰かが立ち入ったとして、確かにリフレの持ち物を奪うことはできないわ。
でも、その逆、置いて行く事はいくらでもできるのよ。・・・問題がわからないかしら?
仮に貴方の命が狙われているとして、触れそうな部分・・例えばドアノブや枕なんかに毒を仕掛ける事だってできるのよ?それに・・・」
説教されますた。
俺は、当分、マリッサ先生に敵いそうもないです。




