呪われてた・・・
俺は、やんわり誤解を解きつつ自己紹介をし、お互いに少し打ち解けてきたところで、俺が浄化を受けた理由を知った。
どうやら、俺には護衛という名の監視が付いているらしい。
「昨晩はお楽しみでしたね」? ・・やかましいわ、糞が。
で、その護衛の人から、俺が呪いに掛かっているという申告があったそうな。
それが、例の呪病だというのだから、恐ろしい話である。
これまで触れてこなかった詳細を教えてくれた。
この国には、国の情勢を戦争に持っていこうと企む、それなりの規模の組織が存在すると考えられている。
組織は細かく枝分かれし、何かあってもすぐに尻尾を切れるような末端しか表面に出て来ていない。
組織は、この国だけではなく、各国に存在し、その根は深いと思われる。
各国に存在するので、国ごとの派閥があり、目的の為に分裂こそしないものの、国益が絡むので仲が悪く、派閥争いに限っては表層化する事もあるという。
呪病もその組織の敵国側派閥の活動の1つと考えられ、この国・・公国フロウランの有力な魔術師などが次々と重病に侵されて倒れている。
ある程度の兵力が無いと戦争自体ができなくなってしまうので、呪病は魔法に秀でた者、そして目くらましのつもりか、徴兵されない女性や子供に振り撒かれているのだという。
呪いによる病気なので、狙って掛けないと呪病にはならない。
つまり、どこかに通り魔的に女・子供を狙って呪いを振り撒く元凶がいる筈なのだ。酷い話である。
それで、何故、俺が狙われたのか?という話だが、その前にこの組織の活動をもう一つ説明しておこう。
国の経済というやつは、戦争に大きく関わる。
土地と民を増やし、増えた民から税を、土地から資源を得ることができるからだ。
自国の富では民を養えない、もしくは、もっと良い思いをさせる・する為に、戦争が起きるのだ。
現在、公国フロウランの経済状況は、じわじわと悪化している。
このまま悪化が続けば、不景気により国が乱れ、呪病に罹らずとも飢えで死ぬ民が出てくるだろう。
その煽りをモロに受けているのが、ここ、ノルタークだったりする。
でだ。
このノルタークの状況、もし仕組まれたものだとしたら?
海路を復旧させようとする人間は邪魔な訳だ。
その邪魔な人間の筆頭は誰でしょうか?
うん、俺だね。そりゃ狙われるわ。
「お前さんが狙われているのは、単に討伐隊のリーダーだからというだけではない。
ギルドとしては、お前さんは、その組織と敵対する別の組織と何らかの関わりがあると見ているし、おそらく、その組織側も同じ考えだろう。
その上、お前さんは少なからぬ金を動かしている。ギルド内でのやり取りは外に漏れていない筈だが、それ以外でも景気良く買い込んでいるから、気付く者もいるだろう。
表に出ている事だけでも、充分に狙われておかしくないが、素材の売買、オークションの目玉商品。それだけでも出所を探られるだろうが、それに加えて例の薬だ。
あれの効果が世に知れれば、組織は出所を血眼になって探すだろうな。」
しかも、思ったよりだいぶヤバかった。
あの怪しい組織、その戦争を企む組織の末端だってさ。
噛み砕いて説明するとだな・・・
国同士に戦争をさせたい組織にとって
・海路閉鎖歓迎 → 討伐隊が出て回路を切り開く → リーダーは俺(=敵)
・怪しい女がいた → 関係者っぽい男(目印はスザク)を発見 → もちろん俺(=敵)
・経済の悪化促進 → オークションに珍品が出て活性化なう → 犯人は俺(=敵)
・厄介な呪いを振り撒く → 特効薬が出回る → いったい何処から? → 俺でした(=やっぱり敵)
さすがにバレてない部分の方が多いと思うが、わざとか?ってくらいにはその組織の邪魔をしてるよな。
俺がちょっと金を出したところで経済が回るとは思えないが、偶々(たまたま)仕留める羽目になった珍しいモンスターのおかげで、潤滑油的な役割を果たしてるんだろう。
問題は万能薬だな。しばらく使用は控えたほうがいいかもしれない。
それか、万能薬が問題にならないくらい・・それこそ何処の店でも変えるほど量産できればいいんだが。・・難しいか。
この呪病は呪いだというし、呪いだけでも解ければなぁ・・・・。・・ん?
「そういえば、聖水って呪いを解く効果がありますよね?教会で作れたりしないんですか?」
「ふふ、ええ。その情報をどこから手に入れたのかなんて聞きませんとも。
聖水は、清らかな水に祈りを込めることで作る事ができます。
しかし、呪術師のレベルが高いのか、生半可な聖水では効果が無いのです。
それこそ、呪術どころかすべての状態異常が直る程の魔力と手間隙を掛けた、超・聖水でないと。
それを作る事のできる人間は、そういないのです。」
超・聖??どっかで聞いたことがあるな?
調整豆乳みたいな感じ・・ 最近、そう教会に関係があった気がする。
超・聖・・・ 超・聖・・・・・
思い出した、超・聖蜂蜜だ。
祈りって、回復魔法の事かよ。
あー、俺、作れるかもしんない。
作れる人が少ないってのは、おそらくレベルやステータスの問題だろう。
最大レベルのヒールやキュアって、MP消費が激しいから、序盤は魔法のレベルを抑えて使うんだよな。
MEN(精神力)も低いだろうし、効果も低いと考えると・・もしかしなくても大変な作業だったりするのだろう。
仮にこれを作ったとして、結局、出所が俺なので、組織の因縁からは逃れられそうな気はしないが、減っていく一方の万能薬の代わりが作れるとなると悪い事ではないと思う。
呪いへの効果のみなので、万能薬よりよっぽど安かった・・記憶には無いが100~200Dくらいの筈だし、流通しても問題無いだろう。
これは、要検証だな。




