表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
293/430

解体しようぜ!

「ライヴォーク材って何?」


俺の疑問を代弁するような声が聞こえて、意識がそちらに向かう。


「あんた、知らないのかい?ライヴォーク材ってのは、斬撃以外に強力な耐性を持った木材の事さ。

折れず、曲がらず、削れず。だから加工が難しいのさ。」


斬撃以外に耐性って・・・何そのファンタジー木材。思わず全力で聞き耳を立てる。


「それで、なんで加工が難しいの?」


「斬撃にだってそこそこ強いから、生半可な腕じゃ切る事もできない。

切れ味を上げた斧は使えても、のこぎりは使えないし、彫刻刀で削ることはできても、やすりで削ることができないのさ。

だから、伐採から面倒も面倒みたいよ。表面を綺麗に整えるのにも刃物を使わなきゃならない。

緩やかな曲線も、刃物で削らなきゃ出せない。何しろ曲がらないからね。

繊細な技術が無いと、家具どころか小さな皿すら作れない、難しい木材なのさ。

燃えにくいから、後処理も大変だって話だよ。」


なるほど。炎にまで耐性があるなんて、面白いな。

木材って、普通は火に弱いだろう?そりゃ最強とか言われる訳だ。

ところで、その木材に聞き覚えがあったりする訳だが・・。


「そう、普通は握り潰したりなんかできない木材なのよ。」


「模擬戦で折れるなんて事も、普通はねーな。」


背後から近づいて来ていたのは、マリッサとアーディであった。

なんだお前ら。デートか?デートなのか?


「違うわよ!たまたま現地で合流しただけなのよ。」


「一等地を陣取ってたんだけど、手伝わされてな・・。」


残念な吟遊詩人が歌いそびれた模様。ざまぁ。

それにしても、何を手伝わされたんだ?


「かなり序盤の方で、あの虫の解体に挑戦したのよ。

その時の地盤づくりに協力してもらったわ。」


虫じゃないから!海老だから!

そうしているうちに、杭がどんどん地面に突き刺さり、ちょっとした砦みたいになってるんだが・・。

そして、岩海老を持ち上げる大型機材で岩海老が固定され、岩海老の頭と胴体の隙間に大きな斧が当てられる。


「よっしゃ!来い!」


「いくぞ!せぇのっ!!」


ガン!!ゴン!!ゴン!!


頑張ってるなぁ。

しかし、声援を送ってる人もいるけど、みんな、やはりどこかまったりムードだ。


・・・・・・・・。


うん?杭が傾いてきてないか?


めろ!くそ、また駄目か・・。」


港の地面に大ダメージじゃねぇか!

さっきから、こんな事ばっかやってんのか?


あの海老、堅かったもんなぁ・・・。ところで鮮度は大丈夫なのか?

鬼族監修の元、ちゃんと冷やしながら解体してる?それならOKだ。


「ちっともOKじゃないのよ。これっぽっちも進んでないんだから。」


雑談をしていると、俺の腕を掴む者があった。なんぞ?


「捕まえたぞ!」


えっ、えっ?


「おっしゃぁ!!これでようやく進める事ができる!」


俺、というよりも俺の武器・・大剣を待っていたそうな。

まぁ・・250レベルの装備だから切れ味は違うわな。

海中じゃないだけマシだろうけど、かなり粘っても斬れなかったんだよなぁ。


はいはい、どうぞ、と大剣を差し出したのに、「せっかくだから」と参加させられた。

何がせっかくなのか・・・。


「ある時は大道芸人。そしてある時は冒険者。町から町へと流れる風来坊。

竜を落とし、大海原を駆ける黒騎士。そう、こいつが今回の立役者、リフレだ!!」


「コケーーッ!」


なぜか紹介が始まり、その場にいた全員の視線が集まる。スザクに。

だいたい、黒騎士は俺じゃなくて装備の名前だろ。

だいたい騎士ってのは何かに騎乗してる奴の事をを指す筈だろ?

俺が何に乗ったって言うんだよ。波に?誰うま(※誰が上手い事言えと言った、の略)だよ・・。

いや、やめてって。せっかくじゃないから。めっちゃ恥ずかしいから。

その、生暖かい拍手をやめて。


「そしてコイツが、2つと無いリフレの相棒。“人喰(ひとぐ)らい”もシーサーペントも切り裂いた、ドラゴンキラーだ!!」


「「「ワァーーーッ」」」


いや、それクェイラバスタードソードだから。どこから出てきたドラゴンキラー。そんな名前じゃないから。


「コココ。コケーコ。ココッ。コココ。」


「ハハハ、相棒はお前さんだったな。スマンスマン。」


スザクが文句を言い、酔っ払ったドワーフがそれに返事を返す。

いや、何お前ら会話してんだよ。楽しそうだからいいんだけどさ。


「そう、解体はここからが本番だ!!野郎共、準備はいいかァ!!!」


「「「オオオォォォオオ!!!」」」


ドワーフさん達、よく喋るなと思ってたら、ほぼ全員がすでに出来上がってました。

何、飲みながら仕事してんだよ!コップを掲げるな!これは乾杯じゃねぇ!

だからといって作業が進まないかといえば、そういう事も無く、どんどん場が整えられていく。

土台も、ちゃんと杭を支える為の杭から打たれ、さっきまでのとは気合が違う。


「え、最初からこうしてれば良かったんじゃね?」


思わず呟くと、マリッさは溜め息を吐きながら答えた。


「最初の2時間ぐらいは、ずっとちゃんとしてたのよ。後半は、どっかの風来坊(・・・・・・・)さん待ちだったわ。

今日中にリフレが現れなかったら、腐る前に穴に突っ込んで蒸し焼きにする、なんて話まであったのよ。」


蒸し焼きか・・それはそれで美味そうだな。

加熱したほうが剥きやすそうだしな。


ゴロゴロと大仰な音を立てて運ばれて来たのは、除夜の鐘を付くような、ごつい吊り下げ式の槌だ。

そう、前にドワーフさんが言ってた破城槌はじょうついというやつである。

岩海老を吊り上げている大型の木製機材と合わせて、ものすごい迫力である。

ちょっとシットリしてて気持ちがよろしくないのと、思ったより冷えてないけど大丈夫か?と・・ツッコミどころは満載だが、胸に秘めておく。

俺がここで剣を差し込む感じで構えていればいいんだな?こんな感じか?

OKが出たので、危険が無い程度に腕を伸ばしてつかを掴み、待ち構える。


「いくぞ!せぇのっ!!」


その瞬間、死んでいると思っていた岩海老が尾を跳ね上げた!


えっ


「「「「「あっ」」」」」


ドゴォ!!


俺は、ドワーフ十数人分の威力の破城槌はじょうついを上半身に喰らい、杭と槌に猛烈なプレスを喰らったのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
▽お知らせ▽

◆高頻度で最終ページ《(仮)タイトル》は書き込み中。
加筆・修正により、内容が倍以上増える事があります。
たまに前ページの内容を見て加筆する事もあります。

◆後追い修正の進行状況:現在152ページ。H.30 5/5

◆作者が混乱してきたので、時間がある時にタイトルに日数を入れます。
あとがきに解説も入れていくつもりです。いや、無理かもしれん。
がんばるー(棒読み)

▽ぼやき▽
3月には書き終えるつもりだったのに、5月になってもまだ序盤ってどういう事だ?
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ