表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
274/430

商人達、参戦する

その“クッション”の正体を知ったドワーフ族に捕まり、リフレが一瞬、苦々しい表情を浮かべた。

何故か分からんが隠そうとしている?

賞金も懸かっている筈だし、ここで名を上げておけば、あらゆる場所で優遇されることは間違いない。

なのに、何故?


隠すように荷物に仕舞い込んだが、仲間である筈のドワーフの嬢ちゃんに捕まって取り出され、本当に迷惑そうにしていた。

嬢ちゃんは押し潰されていたし、芝居じゃなさそうだな。


ドワーフの男達に囲まれて質問攻めに遭い、最低限の情報を明かしていく。

やはり、この人喰(ひとぐ)らいは、彼の者に倒されたようだ。


・・・。うむ?


話が飛んだ気がしたので、近くにいた男に聞いてみる。

何か、ドワーフ族の中では納得する答えが出たみたいだが、どういう事だ?


「リフレは人狼じゃと聞く。おそらく、アズルビアのヒューマン族の厳しい偏見と弾圧から逃れ、流れて来たんじゃろう。」


アズルビアってのは、ヒューマン族の多い大陸で、今はヒューマン至上主義で商売し難いんだよな。

まぁ、このエルフォルレもエルフ至上主義なところはあるが、我関せずな雰囲気であちらよりマシかな。

何しろ、至上主義ってのも面倒臭いが、特定の種族を差別し、国家ぐるみで弾圧しているってんだから、性質たちが悪い。

俺達みたいな角のある種族もその対象なので、ウチでは取引をしていない。

人狼もか。・・・あの者、人狼だったのか。しかし、アズルビア?

いやいや、あの者は阿吽あうん出身だって。

梅干を見て「おにぎり」って言ったんだぞ?間違い無い。


「大丈夫じゃ、誰もお前さんの居場所をおびやかしたりせんよ。」


「・・・えっと・・・・・?」


ほら、キョトンとした顔をしているではないか。絶対に伝わっていないって!

なんか演説が始まる。


おっさーーん!

多分、流れの人狼(リフレ)に居場所を作ってやろうとか、そういう善意だと思うのだが、違うからな!

伝わっていないから!ほら、横を見ろ横を!

なんかすげー居た堪れないような顔しているから!!!


あーあ。


なんか、空気を読んで返事をしてたけど、「言わされた」って顔してんぞ。

ドワーフ族のおっさん。満足そうに頷いてるけど、それは余計なお節介というやつだ。

リフレの剣を見て「これならいける」と思うのも無理は無い。それに、自分達で手掛けた装備に自信もあるのだろう。

だが、討伐は生死を分けた勝負だ。約束させちゃいけねーよ。


まるで祭りのような盛り上がりを見せる海岸だが、肝心の主役が全く楽しそうでないのが気になる。


「おい。気にすんなよ。何度も討伐隊が出て失敗しまくってんだ、気楽にいけ。

無理に期待に応えようとかしなくていいんだぞ。肩の力を抜いて、適当に受け流せばいいんだ。」


「はい、ありがとうございます。」


人混みの中なんとか話し掛け、返事は返ってきたが、定型文と言うか「心ここに在らず」といった感じだったな。

何人も話し掛けていたし、奇跡的に受け答えとして成り立っただけで、下手すりゃ殆ど聞こえちゃいなかったのかもしれない。

しばらくすると仲間を連れて、人目を避けるように町へと戻って行った。心配である。




休暇を終え、仲間達に今日の出来事を話したら、商売については半数以上が乗り気であった。

だが、「好機」と見る者もいる反面、資金力が削がれつつあった現状から、慎重論を唱える者も少なくない。

順調でも船で数日かかるが、阿吽からの距離や商売のし易さから、ノルタークは悪くない。

移民も多く、差別も少なく、程良く都会で、道もそこそこ整備されている。

海路さえ確保できていればおいしい町だと言える。これまでも、それなりに儲けさせてもらってきた。

こんな事・・つまり、海路の閉鎖なんて無ければ、貿易が盛んで、もっと賑やかな町なのだ。

ここに拠点があってもいいだろう。希望者の個人的な資金を集めても、もしかしたら何とかなるんじゃなかろうか。


そして、ギルドで討伐隊の参加者の募集があったという話。

これは、まだ“海を走る大道芸人”を見ていない奴からの情報であった。


[一週間後の予行練習と、二週間後の本番、両方に参加できる者。

・非戦闘員…自分の身を守ることができ、雑用をきちんとできる者。

・戦闘員…船に不測の事態があった時に戦える者で、雑用もきちんとできる者。

特に特技のある者を優遇する。見物・戦闘のみの参加は募集していない。]


“海を走る大道芸人”を知らないという事は、あの装備を知らないと言う事である。

なので、殆どの者にとっては「攻略する気の無い募集」に思えたようだ。

あの装備で動く事を前提なら話は別だ。下手に戦闘員が来ても面倒な事になりそうだしな。


情報を共有する。

“海を走る大道芸人”が討伐の為に海上で走っていたと知って、爆笑している者がいる。

何がツボったのか。・・・まぁ、気持ちは分からないでもない。


そして、リフレについて情報を集めてみた。

分かったのは「町の噂では人狼の大道芸人って話だが、曖昧な点が多く、はっきりしない」という事だ。

我々は情報に関して、かなり厳しい目で精査している自負がある。

情報源に辿り着いても「大道芸の中で狼の獣人に変わった」というもので、「入れ替わったのか」「変化したのか」「変装したのか」をハッキリさせる事ができなかった。

ましてや出身地については「放浪中の人狼=アズルビア」という先入観から来るものであって、全く根拠が無かった。


さて、討伐戦の人員募集に話を戻そう。

戦うにしろ、戦わないにしろ、最低限の戦闘能力と雑用をこなす器用さ・心構えは必須か。

見物は当然だが、戦闘のみの参加も駄目か。

「やる気が無い」と思われても仕方が無いな。


この分だと、かなり絞られるだろうが・・あの様子ならドワーフ族が穴を埋めてくれるだろう。

だから、人員不足では中止や延期という事にはならなさそうだ。


さて、俺達はどうするか、だが・・・。


「あの者、人混みを抜ける時、手刀てがたなを切っていた。珍妙な格好をしちゃいるが、多分、同郷だ。」


「討伐隊・・支援してやる金も無いし、人員を出してお手伝いするとすっかね。」


「上手くいきゃ、海の幸だ。」


「海に出れば気が紛れるだろうし」「帰るのにも必要だしな。」


割と乗り気であった。

それにしても、俺以外にも「同郷だ」と感じている奴がいたのだな。


俺達は、仕事組と討伐組とを分け、参加者を募って計画と準備を始めるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
▽お知らせ▽

◆高頻度で最終ページ《(仮)タイトル》は書き込み中。
加筆・修正により、内容が倍以上増える事があります。
たまに前ページの内容を見て加筆する事もあります。

◆後追い修正の進行状況:現在152ページ。H.30 5/5

◆作者が混乱してきたので、時間がある時にタイトルに日数を入れます。
あとがきに解説も入れていくつもりです。いや、無理かもしれん。
がんばるー(棒読み)

▽ぼやき▽
3月には書き終えるつもりだったのに、5月になってもまだ序盤ってどういう事だ?
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ