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いざ戦場へ!

お昼も間際になった頃。


船の速度が落ちた。

それが気のせいではないという事は、慌しい甲板の様子から明らかだった。

どうやら、船の底が引っかかりやすい浅瀬が続いている難所が近づいているらしい。

船の挙動が怪しくなる。

座礁しない事はもちろんだが、船の底を擦るだけでも大損害だ。


この船の構造が一般的なのかどうかは知らないが、船の先端に操縦室がチョコンと付いており、そこに報告の人員が出入りする度に怒号が聞こえる。

船酔い勢は、その様子を不安そうに眺めていた。


そして・・・船が停止する。

どうやら、目的地付近に到着したようだ。

カーナビみたいな表現だが、周囲は大海原。

本当にここが目的地なのか、さっぱりわからない。


「遠回りをしてしまったが、例の海域まで到着した。ここは安全な場所だ。」


報告がされる。

ちなみに、船内の大きな部屋には音の間道具が設置されており、アナウンスされた後のようだ。

縄梯子が下ろされ、ボートも・・・落としたァ?!?

うまいこと落とすもんだ。よくひっくり返ったりしないな、と感心しながら眺める。

ロープで括られたボートは、縄梯子のそばに引き寄せられる。


「何やってんだオメェ!さっさと着替えろ!」


ドワーフのおっさんが船内から溢れ出てきた。

いや、出発する時、種族バランス結構良かったよな?なんでここだけ、こんなに偏ってるんだ?

わらわらとやって来たおっさん等に連行され、着付けをされる。

何これ。すげーむさ苦しいんだけど。いから。1人でできるから・・・。や、やめろぉぉおお・・!


いろいろとバージョンアップしたらしく、説明じまんしたかったようだが、もっと他にタイミングがあったと思うんだ。


小っさいオッサンの集団に装備(衣服を含む)を剥ぎ取られる屈辱は、もう二度と味わいたくない。


「これが、“スイバ完成型”、そして“クロキシ完成型”だ!」


着替えの終わった頃、マリッサも着替え部屋に入って来た。

おお、ヘルメット(仮)の中でも声がよく聞こえる。これ、音の魔道具を搭載したんだと。

しかも、水中でも普通に外の音が聞こえ、ある程度の距離なら通信もできるそうな。

バッテリー・・じゃねぇ、魔道具の燃料は複数搭載型になっている。

スロットに魔道具を入れておけば、自分のタイミングで入れ替えができるそう。

スロットってのは、俺がそう呼んでいるだけだけど。

人によってポケットとか簡単に出し入れできるヤツとか、呼び方が適当なので、俺も好きに呼んでいいんじゃないかと思うよ。

しかし、ゲームでも確かにスロットは使ってたが、この世界で使うには新たな道具アイテムが必要だとは知らなかったわ。


「結局、クロキシにしたのね。まあまあ、いい名前じゃないかしら。」


水を走る馬(スイバ)に、黒い騎士(クロキシ)というわけだ。

そのままのネーミングではあるが、シンプル イズ ベストとも言うしな。

少なくとも、俺が関わるより数段いい筈だ。

えー何々?候補は結構あったんだな。


“ウォーターライダー”に、“ナイト”に“クロウミネコ”?ふむ。

“水の妖精”に、“黒い悪魔”に、“水中でも動けるんだー”?何これ酷い。

誰だ、“クロゴッキー”とか書いた奴は!確かに黒光りしてるけども!!!


まぁ“クロキシ”で良かったんじゃないかと思うよ。


で、着替えが終わったと思ったらボートのある縄梯子にぐいぐいと連れて行かれる。

割と高くて怖い。しかし、びびってたら突き落とされる勢いで押されるので、降りない事にはどうしようもない。

悪気がある訳じゃないのは分かってるんだ。

このお披露目を今か今かと待っていたらしい、職人おっさん達の気持ちも分かる。

でも、縄梯子なんて使ったこと無いし、しかもイキナリくだりって難易度高くないですかね?


「水面まで縄梯子が足りてないんですけどぉぉおお?!」


「「んなもん飛び降りろぉ~!!」」


「無茶言うな!」


「何の為の装備なのかしら。さっさと行くのよ!」


ああ、そういえば水上を走れるんだった。

俺は、縄橋子から手を離し、数メートルの水面に向かって着水する。


ドッボーーーーーン!!!


あ、スイバを作動させるの忘れてた。


「・・・・・。」


確かに、底が浅い。というか、深い所もあるのだが、ビルのように切り立った岩が並んでいるのだ。

中には、塔とかタワーとか呼べるような岩もあり、先端は丸みを帯びているものの、船が通ったら衝突してもおかしくない。

とはいえ、溺れたら十分に死ねる深さの場所にそれがある。

船にとっては浅いかもしれないが、人間の身長でどうにかなるレベルじゃない。


サンゴ礁かと思ったが、切り立ったような岩盤がところどころに迫り出している。

サンゴもあるけどそこまで大きくないし、地形的な問題だな、こりゃ。


とりあえず、海底を観察するのは止めて、水上に顔を出し、ボートに捕まる。


「あっちの方向だ!2kmと離れていないはずだ。気を付けて行け!」


あっちってどっちだよ。あっちか?・・違う?

降りたほうの逆側かよ!まったく。向こうに下ろせよな!

ボートの下ろし口がこっちにしかない?

まぁ・・しょうかないか。


俺は、ボロボロのボートに乗り込み、魔道具を作動させて動かす。

このボートを動かすのはぶっつけ本番に近い。

止まりたいと思ってもすぐには止まれないので、危ないと思ったらすぐに飛び降りるようにと言われている。

あと、できたら魔道具を回収するように、と。


船に乗って、みんなが指差す方向に船を走らせる。

2km先でも船は見える筈だと言うし、しばらくしたら狼煙のろしを焚いてくれるというので安心だ。


ちなみにこのボート、実は、移動手段ではない。


ふと、海面が盛り上がっているのに気付く。

スイバを起動し、魔道具をアイテムボックスに放り込み、ボートの尻を蹴り出すようにして海に飛び込む。

飛び込むと言っても、その上を走るわけだが。


バギキィ・・・!!


木がきしみ、砕ける音をさせながら、ボートに食らい付く、巨大な顎。

そして鋭く並ぶ巨大な牙と、凶悪な面構え。

こいつが、虫を守るように周囲の船を襲うという・・・


「・・・シーサーペント!!」


おびき寄せる為だけのボロ船(処分品)だ。

船から乱暴に落とされた時には、バラバラにならないかと冷や冷やしたもんだが、無事に役目を終えたようだ。お疲れさん。


さて、ここからは、俺の出番だ!!


俺は、武器を構えて水面を滑った。

うん、プレーキはね・・色々コツがいるんだよね・・・・・。

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▽お知らせ▽

◆高頻度で最終ページ《(仮)タイトル》は書き込み中。
加筆・修正により、内容が倍以上増える事があります。
たまに前ページの内容を見て加筆する事もあります。

◆後追い修正の進行状況:現在152ページ。H.30 5/5

◆作者が混乱してきたので、時間がある時にタイトルに日数を入れます。
あとがきに解説も入れていくつもりです。いや、無理かもしれん。
がんばるー(棒読み)

▽ぼやき▽
3月には書き終えるつもりだったのに、5月になってもまだ序盤ってどういう事だ?
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