モフモフが仲間になった?
今日からティティを付けるのは、ギルドのお目付け役が付いたというアピールの為なのだという。
「護衛だと思って、気軽に接してやってくれ。」
とか言うが、ナイフで刺されても先の尖ってない鉛筆で刺された程度のダメージしか無かったので、特に必要性を感じないんだが。
なので、じゃぁスザクを守ってくれと頼んだのだが、ティティは「おいしそう」とのたまった。
護衛対象が恐怖で固まってしまってるんだが、どうしたもんかね?
また、俺とギルドとの関係が良好である事を周囲にアピールするつもりらしいが。
友好の為というのなら、気安い関係が良いだろう。付いて来るそうだし、一々気を使っていたら疲れるのだ。
「ティティは狼系なのか?」
「うん。」
濃い灰色の髪の毛に、所々メッシュが入ったような毛色、もこもこの尻尾、尖った耳。
動物に詳しくない俺は、狐か何かかも、とも思ったんだが、尻尾の雰囲気がニコフロノフに似てたんだよな。
ティティに卑下する様子も、怯える様子も無い。
狼系って差別されてるって話だったけど、そうでもないんじゃないか?
「じゃぁ鼻はいいよな?」
「うん。」
くりっとした目が輝く。得意そうな表情である。
鼻がいい、と言われて悪い気はしないのだろう。
尻尾がフリフリと揺れている。
「じゃぁ、この任務は、その鼻を生かして色々嗅ぎ分ける訳だな?」
「うん。」
「例えば?」
「貴方と周辺の仲間達の動向。」
確かに、隠し事は苦手みたいだな。あちゃー、と頭に手を当てたギルマスにジト目を送る。
これでギルドとの関係が良好?どう見ても監視員じゃねーか!
まぁ、隠し事ができない子を送って来たのだから、ある意味、友好の意図も無い訳では無いんだろうけど。
「そりゃ、打って付けだな!」
とりあえずティティを褒めておいた。
・・・ギルマスに視線をやりながら。
「もし、もしもだ。お前に敵対する者が周囲を嗅ぎ回ってたとしたら、その子が気付くぞ。」
あわててフォローをするギルマスのおっさん。
まぁ、確かに例の謎の組織みたいなのに付け狙われてるのだとしたら、その動向は知っておきたい。
だが、嗅ぎ回られているという事実は、この子がいる以上、変わらない訳で。
「付いて来る分には問題無いと思いますが、面倒は見れませんよ。」
釘は刺しておく。
敵のつもりは無いみたいだが、味方と決め付けると痛い目を見そうだ。
なので、あくまで仲間の扱うのではなく、ギルドの同行者として扱わないと、線引きに困る場面があるかもしれないのだ。
「・・・ああ。ティティ。頼んだぞ。」
話は済んだが、なんだか色々と余計な問題を背負い込んでしまった気がする。
ともかく、報告も終わった訳だし、さっさと宿で休むとしよう。
明日は、色々と大変だろうしな。
当たり前のように付いてくるティティと一緒に宿に戻ると、アーディが待ち構えており、
「新しい女か?!」
余計な事を言いやがったので、さっき置いて行った金の入った籠を、そこそこの勢いで頭に乗せる。
案の定痛がったが、自業自得だと思うよ。
部屋は空いてたらしく、スムーズに取る事ができたようだ。
近い部屋、もしくは同部屋でもいいという願いは聞き届けられななかった。
周囲の部屋は他の客がいたし、俺の部屋に入れるつもりが無かったからだ。
マリッサとも顔合わせが終わる。
ギルドからの同行者だと言うと、2人がティティを質問攻めにしていた。
ティティは夕食のステーキを齧りながら、2人の質問に答えていた。
言葉は少ないものの、口は軽くて扱い易い事に気付いた2人によって、ティティの好物だという肉・・カツレツとから揚げが賄賂として皿に盛り付けられた。
そのおかげか、もしかして機密では?と思うような事もサラサラと口から飛び出した。
特に、俺の周辺を嗅ぎまわるという任務は、2人の好奇心を刺激したようだ。
「で、リフレの周辺に仲間はどれくらいいるんだ?」
「わからない。沢山の女の匂いがした。」
誤解されそうなんで、やめてもらえませんかね?
俺は、外で飯(?)を食って来たので、そこまで腹は減ってない。
飯も食わずに相手をするのは不味いだろうし、店で飲まされた分は不可抗力で仕方なかったにせよ、明日の為にアルコールを体に残す訳にもいかない。
ワイワイと盛り上がる3人にお先にと告げて、部屋に戻る事にした。
ドアにアーディ対策を施してペットの面倒を見、スザクに寝桶を出してやる。
「明日は、海上での戦闘か・・・。」
スザクがワクワクと体を動かしているように見える。
本当に、人の言葉を理解していると思えてしまう行動をよくするので、最近は余計に話しかけるようになってしまった。
本当にワクワクされてたとして、スザクにはあまり関係の無い話なんだが。
「まぁ、留守は頼むな。」
何しろ、スザクは留守番である。
まかり間違って海にでも落ちたら目も当てられない。
しかし、スザクは俺の言葉に反発するように鶏冠を大きく広げた。
「コケ?!コケ??!?」
抗議しているように見えるのだから面白い。
「明日も早いし、早めに寝ないとな。おやすみ。」
スザクの抗議は、俺が寝るために部屋の明かりを調整するまで続いたのだった。




