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大人のお店

落ち着いた雰囲気のそのお店は、お酒を飲むお店だった。

薄暗いが、決してうらぶれた感じはしない。むしろ品を感じる。

天井が高いし、内装は少し古めかしいが、しっかりと手入れをされていて清潔な光沢がある。

そこに、革張りのソファが並び、接待のお姉さんが待ち構えていた。

キャバクラと言い換えてもいい。ただ、露骨なアピールが激しいだけで。


「・・・触ってもいいのよ。」


「はい、あーん・・・。おいしい?」


最初にざっくり説明されている。

サービスを受けたらチップを弾むように、と。

つまり、そういう事だ。


端的に言うと、お触りOK。ただし別料金。と、言う事だ。


ちなみに、だいたいどれくらいが相場なのか?については聞けなかった。


「緊張してるの?肩を揉んであげる。」


「お酒の好みは?」


「こういうお店は初めて?」


客が少ないせいもあり、ものすごい人口密度と攻勢である。

羽目を外したら最後、ケツの毛まで毟られる最後しか見えない。

俺の一挙手一投足を巡って、火花が散りまくる。

何かしようとしたら、すでに幾種類も用意されてる。そんな状況だ。

ハーレム状態と言えるが、逆にどうしていいか分からん。


料理は運ばれて来ているが、落ち着いて食える気がしない!


だって、食べようとすると、いくつものフォークが料理に殺到し、目の前に運ばれてくるのだ。


「「「「「あーん。」」」」」


いや、怖いから。

料理は、それなりにおいしいと思われる。

濃い目の味付けで、かといって、味を濃くして素材を誤魔化しているという感じでもない。

だが、一口大に刻まれて、無残にフォークまみれになっている料理に、運ばれてきた時の面影は無い。


新たな料理が運ばれて来て、あ、美味そうだな、そう思った次の瞬間には細切れである。


「何かおしゃべりしましょう?お客さん、冒険者かしら。」


「無口な人。それも素敵。」


何かと言ってもなぁ。

飲んでする話と言うと、自慢か愚痴かになるだろう。

だいたい、そんな話を「うんうん」と聞いてくれる女の子がいれば、男は何十回でも同じ話を繰り返したりする。

それが酔っ払いともなれば、なおさらだ。それで更に気持ちよく酔うのだ。


だが、残念ながら異世界に来たばかりの俺に、そんな話の引き出しが無い。


あと、無口なのはお前らのせいでもあるからな。


個人的に、テーブルの隅の方で無塩のナッツをつついているスザクと、スザクの為にナッツを一生懸命に細かく砕いている、少女といった感じの女の子が俺の癒しだ。


「スザクさんは、飲み物は飲まないのかしらー?」


「ココッ。」


「お水はここよー。」


ごっこ遊びか!


その子の頭には、やや小ぶりな耳が生えている。獣人だ。

そんな少女を、みんなで微笑ましく見守っているような空気もいい。

こっちで参戦している人の中にも獣人はいるし、特に差別を受けている感じはしないんだが・・。

差別を受けてるのは狼系だけなんだっけ?


「あーん・・。」


俺は、口に食べ物を放り込まれるだけのマシーンと化している。

あ、今食ったやつ、なんだろう。美味かった。


俺が(でき)る会話といえば、


「今食ったやつ、何かな?」


ぐらいで、そのたびにワイキャイと答えてくれる女の子達。

やりにくいよな。すまん。でも、ネタが無いんだ・・・。


「持ち帰りってできる?」


「どの子でも♪」


違う、その持ち帰りじゃない。


なんとか食事を終えて、接客の子らにチップを渡す事にする。

別のテーブルにいってしまった子や、ちょっとしか顔を出さなかった子もいるが、どうしようか。

ある程度このテーブルでサービスしてくれた子、という括りでなら、7人くらいか。

頭や腕に胸を押し付けて来るのみならず、触らせようをあの手この手。

あまりの剣幕に若干引いたものの、サービスを受けたのは確かだ。


さすがにガキのお小遣いみたいな額というのは憚られるが、どれくらいが相場なのか。

だが、あまりたくさん渡して、肝心のお代が払えないというのはまずい。

こういうお店って、めちゃくちゃ高いと相場が決まっている。


しかし、困ったらミラバドの涙もあるんだよな。


キリの良い数字がいいだろう。

宿代が2,000Dだし、5泊と考えると10,000Dだと渡し過ぎか?

うーん、そんなもんだと言われそうな気もするけど、システムがよく分かってないし、少ないくらいでいいだろう。

5,000Dに決めた。


最初に、この店のシステムを説明してくれた人が来たので、別のテーブルに行ってしまった子の分のチップを渡す。

最後まで相手をしてくれた子らにも。もちろん、スザクの相手をしてた子にも。


そして清算。


12,600D。


・・・・・あれ?そんなもん?

俺、おねだりされるがままに、ボトルキープとかさせられたけど?

女の子達もかなり飲んでたし、桁を間違ってるんじゃない?

間違ってないと。お持ち帰りが無しなら、キッカリこの価格だと。


いや、料理の持ち帰りはしたけど?と言ったら、何言ってんだコイツ、というような目で見られた。


まぁ、客商売をしているので取り繕うのも早かったけど。


うーん、本気で信じられん。後でケチを付けに怖いお兄さんが来たりしないよな?


お触りありのお店でボッタクられた話を聞いたことがある俺としては、拍子抜けもいいところだ。


10万とか20万とか平気で取られるかと思った。

おっぱい天国だったし、内装も上質だったもんな。


良心的な価格だった事に安堵しつつ、料金を払い、店を後にしたのだった。


ちょっと時間を食ってしまったが、そんなに遅くもない筈だ。

ギルドに行って、明日の事を話し合っておかないとな。

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▽お知らせ▽

◆高頻度で最終ページ《(仮)タイトル》は書き込み中。
加筆・修正により、内容が倍以上増える事があります。
たまに前ページの内容を見て加筆する事もあります。

◆後追い修正の進行状況:現在152ページ。H.30 5/5

◆作者が混乱してきたので、時間がある時にタイトルに日数を入れます。
あとがきに解説も入れていくつもりです。いや、無理かもしれん。
がんばるー(棒読み)

▽ぼやき▽
3月には書き終えるつもりだったのに、5月になってもまだ序盤ってどういう事だ?
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