休憩は計画的に
よく晴れて良い朝だ。
雨が心配だったが、晴れて本当に良かった。
「やっぱり青空の方がいいわね。」
マリッサもそう思うよな。
「雨だと稼げないからな。」
アーディ・・違うと思うぞ、と言おうと思ったが、マリッサも頷いてるあたり、ズレてるのは俺の方なのかもしれない。
稼げないのは困るよな。うん。
調査隊の変な奴に絡まれる事を危ぶんだが、杞憂に終わった。
どうも相当に疲れ切っいたらしい。今頃、泥のように眠っているのだろう。
まぁ、本気で疲れ切っているような顔をしてたからな。
そうでなければ部屋を譲ったりしないよ。
再び部屋の確保を女将さんにお願いし、挨拶して外に出る。
夜露の乾いたテントを仕舞い、出発である。
「女将さんの飯、美味かったなぁ。」
アーディがしみじみ呟く。
うん、水場のサービスはともかく、食事はお前らの常宿とは雲泥の差だからな。
料理が豊富で、日替わりもあって、しかも美味い。
ついでに酒も豊富で美味かったりするそうだが、翌日は休むと決めている日以外は、できるだけアルコールを飲まないようにしているので飲んだ事は無い。
マリッサが嬉しそうにニマニマ笑っている。
気持ちはわかるけど、すごいのは女将さんであって、マリッサじゃないからな。
そして・・
「くそ、早えーよ!のんびり行こうよ!」
置いて行かれ気味のアーディ。
そんなだと、昼のうちにノルタークに着く事はできないぞ。
しかし、アーディはギルディーと同じくらいのレベルだとして、レベル30にも満たないマリッサは何故こんなに速いんだ?
「装備レベルが足りなかったのよ!仕方ないじゃない!」
ふむ。どうやら、俺が「何故装備をしていないのか?」と思ったのだと勘違いしたらしい。
まぁ、気にならなかった訳ではないが。
それより、マリッサはエスパーでは無い事が発覚して、安心する。
「装備レベルが足りないと、装備できないのか?」
「全くできないわけじゃないけど、動きが阻害されるし、装備に何か効果が乗ってても、その力を引き出す事ができないのよ。体を痛める事さえあるわ。
ちなみに、そのレベルになってからも慣れるまでは時間がかかるのよ。」
・・・なるほど。
ゲームでは全く装備できなかったんだが、やはり少しリアル寄りになっているみたいだ。
ちなみに、マリッサの速度についてだが、身軽と疾風のスキルが上がっているのだそうだ。
聞きたかったことが聞けて助かった。
それにしても、身軽はわかるよ。疾風って、槌キャラでも使えたっけ???
「必要に駆られたら、覚えたわ。」
いやいやいや。
そんな大剣キャラが魔法を使うみたいな事・・・・・。
ふと、ロニーニャさんが言ってた事が頭に浮かぶ。
『例えば、魔法には詠唱が必要なのは、スキルの発動に魔力の練り上げとイメージが必要だからです。
実際、詠唱が長い人の方が、威力の強い魔法が使える傾向にあります。
まぁ、イメージ力の強い人は、詠唱が短くとも強い魔法が使えるようですが、例外ですね。』
逆に言うと、魔力の練り上げさえできれば、魔法は使えるって事じゃないのか?
・・・・・で、どうやって魔力を練るんだ?
「・・・・・・。」
後回しだが、要検証だな。
そうこうしている間に、岩石地帯に到着。
ここで酷い目に遭っただけに、2人は緊張で身が固い。
ドロップアイテムがまだ残っていたので回収する。
ここら辺が中間地点か。そろそろ休憩しようか?と切り出す。
「休憩はいいわ。ディアレイへ行って休みましょ。」
「でも、アーディがしんどそうだぞ。」
「俺も町でゆっくり休みたいな!」
そういう事ならと、休憩無しでディアレイに向かったが、2人のスタミナが途中で切れてしまった。
結局、岩石地帯を抜けたあたりで休憩している。だから言ったのに・・。
「あんな場所で休めるか!死ねって言ってるようなもんだろ。」
おい、ミステリーものの死亡フラグみたいな事を言うんじゃねーよ。
俺としては、ここも岩石地帯もそう変わらないんだが。
言ってる間に、ちょっと大き目のリスみたいな小動物が顔を出す。
「・・・!ミーアカンク・・・!」
「違うわ!これ、ガスカンクの方なのよ!」
さすがに、あの放屁を食らっただけあって、マリッサは間違えなかったな。
2人は動けそうにない。回復も何も、今しがた座り込んだところだからな。
実際、震え上がるばかりで逃げようとする気配はない。
範囲は狭いが、アクティブモンスターなので、このままだと犠牲になってしまうな。
こいつの対処法はだた1つ。
「ていっ。」
屁を放る前に倒す。それだけだ。
声を出す間も無く、首と胴体を分断されて絶命するガスカンク。
リアル寄りのこの世界で、内臓を傷つけても臭そうだと判断した為だ。
ほうっ、と空気が弛緩する。
「・・解体しないのか?」
できないんだよ。だいたい、こんなの持って行って売れるのか?
「放屁してないガスカンクは、ちゃんと解体すれば食えるって聞いた。
・・・食いたい奴がいるかどうかは・・・分からないが・・・・・。」
そこは分かっておこう?な?
「あと、匂い袋は魔物除けにもなるって聞いた。
・・・使いたい奴がいるかどうかは・・・分からないが・・・・・。」
それも分かっておこうぜ?
とりあえず、アイテムボックスに放り込んでおけばいいんだな。
「ひっ、ミーアカンクがいるのよ・・・。」
「休まらない。何より心が休まらない。」
そりゃ、そういうフィールドだからな。完全にトラウマと化しているな。
「さっさと回復して行くぞ。」
2人にスタミナポットとサンドイッチを取り出して与え、回復を急ぐのだった。




